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そうだ冒険者になろう

 さてさて、四月に入りましたね。これを区切りにいったんこの作品の更新をやめて新しい作品を書こうと思います。……嘘です、エイプリールジョークです。まだ考えがまとまってすらいませんしどちらにしても無理ですが。

 第五十九部、第三章第五話『そうだ冒険者になろう』です。どうぞ!

「私、冒険者になってみたいです」

「ほう、その心は?」

「司様の言う通り、自分が周りの人たちよりも力を持っている自負はあります。そしてその力を簡単に活かせるのが冒険者だと、そう思ったからです」

「なるほどな」


 正式にカレラが仲間になった。

 一応契約書らしきものを書き、俺は肩書上カレラの雇用主ということになった。

 俺の肩書多いな。エルフの奴隷、黒虎人とフェンリルの主、カレラの雇用主。ルナとは友人とでもいうのだろうか。というか俺の周りの方々が豪華すぎる。


 で、だ。先ほどまで涙を浮かべていたカレラだがリルの言葉に感銘を受けたからか今では前向きにこれからのことを考えているようで、冒険者になりたいと言い出した。言っていることは最もだし、リルも視野に入れていた選択肢だ。

 それにカレラだって武闘会参加者だという話だ。そうなると鍛錬も必要になるが、最も効率のいい経験を積む方法は実戦を繰り返すことだ。そうなると冒険者という職業は資金を得られ、経験を詰めるという意味で最適なのだ。

 カレラのように自身の力を人のために使いたいと思っているような人にはピッタリだよな。


 と、言うわけで俺たちは今冒険者ギルドに向かって歩いていた。カレラは一応ドレスから着替えているが、これまたお嬢様が着るような豪華なドレスだ。所々に鎧の一端のようなものが見えるが、ドレスアーマーと言っただろうか。


「まあ、いいのではないだろうか。我らも決まった職に就いているわけではないしな。その意見を採用しよう」

「ほ、本当ですか? ありがとうございます! 私、街の外にほとんど出たことがなくて……外の世界を見てみたかったんです!」

「妾と同じ理由かの~」

「え?」


 突然後ろを歩いていたルナが会話に割り込んできた。と言っても俺は気配察知で確認していたから驚くこともないのだが。


「その、ルナ様も私と同じ理由? というのは?」

「敬称は不要かの。妾の方が小さいのだし、当然かの」


 中身は数千歳だがな。


「い、いえ……ともに行動することを許されているという立場で、それは……」

「大国の王家の血を引くようなものがそんなへへりくだっていたら祖先に顔向けない、と妾は思うかの」

「っ! ……そ、そう、ですね。では、ルナさん、ということでよろしいですか?」

「まあ……それでいいかの」

「それで、同じ理由というのは?」

「簡単な話かの」


 ルナはそこでいったん言葉を区切ると、リルの方を見ながら言った。


「ずっと孤独だった妾を、外の世界を見たいと願ってもかなわなかった妾を、外に連れ出してくれた人こそ、司殿かの」

「へぇ……そうなんですか?」

「まあ、な。間違ってはいない」


 カレラに問われたリルは曖昧に頷きながら答える。


 外の世界を見たいと願っても叶わなかった、というのは引っかかるが、まあ嘘は言っていないな。

 ルナが数千年以上世界樹を出ていないということは聞いていた。どうしてか、という問いに対しては答えてくれなかったが。もしくは答えられないのか。どちらにしても俺が知る必要はないことだろうからいいのだが。

 

 そしてカレラの提案でオリィでは保留した冒険者への登録を決めた俺たちは、さっそく冒険者ギルドを訪れていた。王都のそれはオリィのそれよりもさらに大きく、元の世界で言うところの体育館のような広さがあった。

 この世界の文明レベルでこの大きさはかなりやばいぞ? まあ、それよりもはるかに大きいお城とかはあるがな。ここからでも見える王城とか。収容面積で言ったらそこらのタワマンくらいありそうだ。


「ここが、冒険者ギルド……」

「なんだ、初めてか? 王都支部ならば一度くらい見たことがあってもおかしくはないと思うのだが……」

「その、恥ずかしながら貴族街から出ることはほとんどなくて……。それに、今まで外出と言ったら学校に通う時程度ですし。あとは社交界のために屋敷に行ったり王城に行ったりするくらいで……。こういう場所には足を運んだことがないんですよ」

「そうなのか? ならば、ここまでの道のりも新鮮だったのだろう?」

「そうですね。色々と気になってしまったものもありました」


 そう言って笑うカレラの顔には、少しの陰りも見れなかった。純粋に今の状況を楽しんでいるようだ。俺としては、これがいつまで持つのか、それが心配だがな。

 自分から孤独を選んだ俺だからわからないが、望まずして家族と引き裂かれた彼女の精神はどれくらい傷ついているのだろうか。

 今では冷徹者の影響もあってか血縁なんてどうでもいいと言い切れるくらいには精神が強い俺は、言おうと思えば家族など忘れてしまえということはできると思うが……。さすがにそれは酷だろう。これからまだ帰れる可能性がないわけではないし、希望を持たせるくらいはいいだろう。


 それに、俺には黒江がいる。冷酷者があろうがなかろうが、大切な人と遠く離れる辛さは理解できる。


「では、早速中に入ってみるとしよう」


 リルはそういいながら冒険者ギルドの扉を静かに開けた。ためらいなく中に入っていき、ルナ、かな、カレラの順で続いていく。

 傍から見たら子供の集団、もちろん人目を集めることとなった。

 だが、この場にいる誰もそんなことを気にしない。リルやルナは当然だし、かなは周りに興味がない。カレラも貴族として鍛えられた礼儀や尊厳がある。多少好奇の視線を浴びたくらいでは怯んだりしないのだ。


 そのまままっすぐギルドの受付に向かったリルは、早速要件を話した。


「四人、冒険者登録をしたい。できるか?」

「その、お子様もいるようですが?」

「お子様? 誰のことを……ああ、彼女のことか。問題ない」


 リルが言った彼女だが、それはカレラのことだった。

 絶対にそうだろう。指をさして確認してたし。

 まあ、確かのこの中だと一番実力が下だけども。一応外見年齢的には一番年上だからな?

俺が十六でカレラが十七、かなが十二歳くらいでルナに至っては八歳くらいにしか見えないんだが?


「い、いえ……そちらの、銀髪の……」


 案の定ルナのことだった。


「ルナ女史か? っふ、問題あるまい。彼女を子どもと言ってしまえば、この世の誰が大人に値するのか」

「は、はぁ……?」


 急に設定を無視しだしたリルであった。と言うよりはどこか笑みを浮かべているので、受付をからかっているのだろうか。


 おいおい、何を言い出すんだ? と思ったが、手慣れているらしい受付の人は冗談だと受け取ったのか特に気にすることもなく手続きを進めた。


「では、試験を行いたいと思います」

「ほう、何をするのだ?」

「冒険者ギルドのほとんどはこんなことはしないのですが……王都では希望者が多く、ギルドが管理しきれないので、実力を測ってこの王都で活動するに値する、と判断された人だけ冒険者としての活動を許可しているのです。ですから、これからあなたたちには実技試験を受けてもらいます」


 うーん、なんだろう。試験を担当する教官がいじめられる未来しか見えないのは俺だけか?

 そうならないように俺がコントロールするしかなかったりするのだろうか。リルは論理的思考を得意とはしているが容赦や手加減は得意ではない筋がある。あえてしていない可能性もあるが……。

 かなもそんな感じがするし、カレラも全力を尽くして試験に挑む、とか考えていそうだ。ルナは……まあ、一番安心できそうな気がする。いい感じにいなしてくれるだろう。


「わかった、受けよう。いつ受けられる?」

「今すぐにでも可能です。教官をお呼びしてまいりますので、冒険者ギルドの裏側にある演習場でお待ちください」

「ああ、わかった」


 こうして、リルたちの試験が始まるのだった。



――

――――

――――――


「計画は順調か?」

「はい。オリィを狙った悪魔の襲撃は失敗に終わりましたが、魂の目標数には達しています」

「しかし、最上位悪魔の襲撃を凌ぐ強者が偶然居合わせるとは、なんと間の悪いことか」

「そのものにつきましては、王都への移動中に例の実験体を向かわせました。実力を測ろうと思ったのですが、どうやら相手にすらされなかったようで力の本質を見極めるには至りませんでした。魔法を使わせることすらできず……」

「あの精霊使いの少女。そして悪魔を相手にして一歩も引かない少年。巧みに武術を操る幼女。奇怪な集団だな」

「はい。ですが、それ相応の力を持ち合わせています」

「ああ、これからも要注意人物、及び始末対象として慎重に扱うとする」

「「御意」」

「あんな異端者ごときに、私たちの計画が邪魔されるわけにはいかないのだ。全ては邪神様のために」

「邪神様のために」

 四月にもなって本格的に新年度って感じがしてきました。今一番不安なのは課題が終わるかどうかですかね()

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