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カレラ

 はい、その、超えました。何がって? 総合pv10000をです。あれ? おかしいな、こんなはずじゃ……。もちろんいい意味でですよ? こうなると来月の目標をどうするか、が問題になってきますね。

 思い切って20000pvにするか、少し保険をかけて18000pvにするか……。

 まあ、目標を達成できても出来なくても損することは何もないんですけどね?()

 第五十八部、第三章第四話『カレラ』です。どうぞ!

「では、これから案内いたします」


 領主に武闘会参加の話を持ち掛けられた翌日。俺たちは確かに推薦状を受け取った。まあ、三枚貰ったことは驚いたがな。てっきり俺の分だけだと思っていたが、ルナの分とかなの分も貰ってしまったのだ。……こいつらが参加して大丈夫なのだろうか。俺は不安である。

 そもそもルナは魔法使いということで通っていたはずなのだが武闘会に出られると思ったのだろうか。まあ、実際は近接戦の方が得意そうだが。


 そして、先日言われた領主の娘の件だが、受けることにした。一応ルナとかなはどちらでもいい、俺は興味あり、リルが賛成ということで多数決の結果決まったことだ。

 リルが賛成した理由だが、この国のことについて色々聞けるかもしれない、ということともう一つ、かなり重要なものがあった。

 なんと、その娘さんも武闘会に出るらしいのだが、その娘さんが超人らしいのだ。誉め言葉とかそういうやつではなく、俺と同じ超人なのだそうだ。人間の上位種に当たるものだ。

 それを聞いたとき、ものすごい驚いた。超人っていえば俺みたいに高レベルの魔獣にいじめられて成長しなければなれないと思っていたからだ。俺が超人に成れたのは世界樹やダンジョンという魔境で高レベルの魔獣たちと散々戦ったからで、領主の娘さんにそんなことができるとは思わなかったのだ。

 だが、聞いたところ超人とは遺伝でも成れるらしい。この国を作った剣聖の血を強く引くものほど強力な力を持って生まれることがあるらしい。領主さん自体は普通の人間だったが、娘さんは超人として生まれたらしい。


 ちなみに領主さんが第八王子だと聞いたときは別に驚かなかった。なんとなく王家の人なんだろうな、とは思っていたからな。しいて驚いたことを言うのなら第八王子のくせに現女王の実の息子であることに驚いたな。側室の子どもか何かだと思ったが、言ってしまえば隠し子のようなものらしく、今の王家に何かあった時のために高位の貴族、という身分にしてるらしい。そして万が一の時には国政を預かるという手続きも終えているのだとか。

 そんな相手の娘を手元においておけるのは色々と都合がいいだろう、ということだったのが、大いにその通りだ。もしもの時は人質にでもしてしまえばいい、ということだろう。これだとまるで俺たちが悪いやつみたいだが、その通りだ。実際俺たちは亜人側のスパイだからな。悪事を働くために手段を選んではいられない。


 と、言うわけで快く引き受けた俺たちは執事さんに娘さんがいるという屋敷に案内してもらっている。

 その屋敷というのは貴族街の端の方にあって、歩いてもすぐの距離らしい。オリィの大通りにも負けないくらいの綺麗さと大きさの通りを進んでいき、三十分もすれば目的の場所についた。

 この世界の人たちは歩く移動が基本だからか歩いてすぐ、っていう言葉を勘違いしているらしい。いいか? 三十分は決してすぐではない。疲れたりはしないが歩き続けていると飽きてくるのだ。精神的に、という意味では疲れているかもしれない。


「ここでございます。どうぞお入り下さい」

「ああ、わかった」


 おっと、リルが喋って気づいたが歩いているのは俺ではなかった。いや、それでも精神的に疲れるのだ、多分。


 リルは執事に案内されるまま屋敷の中に入っていく。

 その屋敷は屋敷と言っても領主のオリィやこの貴族街にあるそれよりはかなり小さい。三分の一程度だろうか。大きいファミレスくらいの大きさしかない。いや、これが家だって考えればかなり大きいが。

領主の妻と娘とその使用人が数人で暮らすのだと考えれば十分だ。そして、そんな屋敷の中の作りはいたって普通の家だった。

 この世界の文明ならばどこだってそうだろうが土足で入る形の家で、屋敷の中央に少し広めの玄関があり、その先に廊下が続いている。その廊下から左右に部屋と二回に続く階段があるだけだ。部屋の数は元の世界の俺の家とは比べ物にならないが。

 で、そんな家の主はというと、執事に案内されたリビングらしき部屋で待っていた。


「あ……来たん、ですね」


 どこか悲しそうに俯いていた少女が、救いを求めるような眼で執事を見あげた。だが、執事は目を逸らすことしかできないようだ。まあ、親に捨てられたとも取れる今回の件で悲しい感情が浮かばないほうがおかしいだろう。何だったら泣いていてもおかしくはない。そこでこらえているのは、貴族としてのプライドからだろうか。


 燃えるような長い赤髪と赤目、フレアドレス。赤一色の格好をしたその少女は、見た目的に俺と同い年か一つ上くらいだろう。十六、七歳くらいということになるだろう。

 接客用なのか低い机を挟んで対面するように並べられたソファに少女は座っており、その反対側にリルは腰かけた。ルナとかなは席に着くことなく、そのソファの後ろ側に回った。一応設定上はリル、もとい俺がリーダーでこの二人が仲間ということになっているためか、二人は従者のように振舞っているのだ。

 別に俺やリルから何かを言ったわけではないんだがな。


 で、だ。リルと対面する少女は何かを覚悟したような顔でリルの目を見つめていた。

 そんな覚悟のこもった顔をする少女に対して、リルはいつもの無表情だ。これから一人の少女の運命を変えるというのになんという態度だ。


「では、これからの君について少し話をしようと思う」

「……はい」

「事情は聞いているか?」

「父が治めていたオリィに悪魔の大群が押し寄せて来て、街が大混乱になった、と聞きました。その影響で父に何かしらの罰が与えられるだろうから、その前に私の身柄をあなたに預ける、とも」

「その通りだ」


 涙をこらえるような、苦しむような小さな声で答える少女に、リルは淡白に答える。


「我らとしては領主殿の言葉通り、君を引き取る所存でいる」

「はい。心得ています……」


 リルの言葉が決め手となったのか、少女が突然俯いて、膝の上に載せた拳の上に小さく雫を垂らす。


「きっとそのほうが君のためになる。領主殿もそのほうが喜ぶ。我らにも不都合はない」

「はい……」

「君はすごく優秀だと聞いている。我らはこれからこの国で色々と活動をするつもりだが、その力があれば我らは大いに助かる」

「はい……」

「もちろん不当な扱いをするつもりはない。最大限の気遣いを行い、危険が及ばないように心がけよう」

「はい……」


 リルの淡々とした口調で話された内容を、少女は上ずった声で短く答える。

 段々を突き付けられる現実を前に、堪えるのが辛くなってきたのだろう。拳に垂れる雫の大きさが、どんどんと大きくなっていく。

 そんな様子を見ていると、流石に良心というかなんというか、心が痛んできた。俺にも良心が残っていたようで安心したよ。……じゃなくて、そんな少女を前にしてもリルは表情一つ変えない。部屋の隅で控えている執事ですら少し困り顔を浮かべていた。恐らくだが、かなとルナも無表情だろう。

 そんな三人の顔を見たら少女はもっとつらいだろうな。俯ていて正解だと思う。

 このまま重苦しい空気のまま決断させるのかなぁ、と思っていたら、リルが予想外のことを言った。


「はぁ……どうやら君は我らと来ることを良くは思っていないようだ」

「えっ……い、いえ! ご、ご一緒させてくださ――」

「我らとしては無理に引き取る理由もない。どうしても残れないというのなら冒険者でもするといいだろう。あなたは相当腕がたつとの話だ。うまくやっていけるだろう」

「そ、そんな! 私は一人でなんて――」


 涙を隠すこともなく顔を上げ、少女は必死に訴えかけてきた。そんな少女にたいして、リルはなんと小さく笑みを浮かべた。そして、こう告げたのだ。


「じゃあ、一緒に行くとしよう」

「えっ? あ、はい……その、よろしくお願いします?」

「ああ、よろしく頼む」


 涙を流してはいるが、何が起こったのかわからないような不思議顔の少女。それはそうだろう。連れて行くと言ってみたり、行かないと言ってみたり。そしてまた一緒に行こうと言ってみたり、こいつは何を言っているんだ? そう思っているのだろう。

 が、俺はリルの意図が読めた気がした。


 リルは笑みを崩さずに言葉を続ける。


「ただ少し、現実を受け止められなかっただけなのだろう? それを、今やっと覚悟で来た。そんな君だからこそ、我は君と連れて行こうと思う」

「は、はい……?」

「っふ、分からずともそれでいい。ただ、君はこれから我らの仲間となる者だ。その自覚を持ってくれて嬉しいと、我はそう言っているのだ」

「っ!? ……そう、ですか。わかりました。これからよろしくお願いします」


 いくらか明るくなった表情で、少女は深く頭を下げた。少しは空気が軽くなったな。


「では、まずは自己紹介から始めようか? 我はまだ君の名前を知らないのだ。我の名は司。君は?」

「あ、す、すみませんでした。その、あまりの驚きに、失念しておりました……」


 今度は恥ずかしさゆえに俯く少女。やがて顔を上げ、口を開いた。


「私の名前はカレラ・ルーグ・オレアス。オレアスの重鎮の長女です。と言っても、これからすぐに元、が付くんですけどね」


 自虐気味にそう告げたカレラは、それでも小さく笑みを浮かべていた。

 さて、今月も無事に目標を達成できました。何日かさぼってしまうこともありましたが、ほとんど毎日更新も達成しています。この更新頻度のおかげで、たくさんの方に読んでいただけているのかもしれません。

 そのことについて、一応報告です。四月に入って、まあ一週間くらいはともかくそれからは高校生活序盤ということもあって何かと忙しくなると思います。

 だからと言っては何ですが、更新頻度が落ちるかもしれないことをご了承ください。それでも今後も読んでくれると嬉しいです。

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