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王都の屋敷

 今回からできるだけ以前、一章の時くらいの文字数で一話一話を書けるように頑張ってみます。特に理由はありませんが書く側としてちょうどいい気がしたんです。

 あと、総合PV9500突破ありがとうございます! 今月までに10000PV行けるんじゃないかって期待していたりいなかったり。

 第五十六部、第三章第二話『王都の屋敷』です。どうぞ!

 そびえたつ城壁。そしてそれに囲まれる広大な土地と巨大な建造物。そして中央に構えるのは王城と呼ばれるこの国最大の城。この国の王家やその重鎮たちが住まうこの国で最も重要な場所だ。


 そして、俺たちは今それらで構成された王都へと足を踏み入れたところだ。王都の門の前には長い列ができていたが領主が名乗り出ると優先的に通してくれた。国の大貴族だというのは本当らしい。別に疑っていたわけではないが再認識したというだけだ。

 領民に優しく判断力に優れている彼が突然の災害のせいで降格処分になるかもしれないというのは可愛そうだ。まあ、俺には関係ないことなのだが。恩があるわけでもないので、褒美をもらうだけもらってお別れになるだろう。

 さて、王都に入った俺たちの乗る馬車はそのまま道を進み、王城近くの貴族街へと入っていった。一度兵士のような人に止められたが、領主が顔を出すことですぐに通してもらえた。その時に領主が兵士に何かを話すと兵士が慌てた様子で走っていったが、きっとデモンパレードについての報告を任されたのだろう。

 日本で言えば地震と噴火と台風がいっぺんに来たかのような自然災害の対応は国家において最優先とされているらしい。そんなものの報告をさせられるとは、あの兵士も災難だな。


 そして俺たちの乗る馬車はさらに進み、貴族街のほぼ中心地についた。そこには大きな噴水があって、かなり広い広場となっている。馬車はその噴水のすぐ隣に止まった。

 しばらくすると御者の人が声をかけてきた。何を言っているのかわからなかったのでルナの方を向くと――


(ここで降りてくれ、だそうかの)


 とのことだったのでずっと寝ていたかなを起こして馬車を降りる。


「ん、んん~」


 馬車から降りると同時に大きく伸びをするかなを見ながら、俺はあたりを見渡す。やがて見つけた領主の姿は既に一つの屋敷のもとに向かっていた。

 噴水を囲むように立ち並ぶ数軒の屋敷の中で最も大きい屋敷だった。


 貴族街の中心にある建物の中でも最も大きい屋敷の主とか、本当にあの領主はすごいんだな。もしかしたら俺が想像しているよりも大物かもしれない。

 まあ、この国最大の商業都市オリィの領主を任せられるくらいだ。やはり王家の血筋だとか重鎮だとかそんなところなのだろう。アニメなんかで貴族や王族というと腹黒なイメージがあったが改める必要があるかもしれない。まあ、この領主がたまたまいい人だっていう可能性はあるがな。


 そんなことを考えていると、領主が向かった屋敷の中から出てきた様子の、タキシードを着こなした執事然とした男性が近づいてきた。


「―――――――」


 かなとルナと固まって三人でいた俺たちにその執事らしき男は何かを話しかけてきた。


(ご案内します、と言っているかの)


 だそうなので男に従って屋敷に向かった。連れていかれたのはもちろん領主が入っていった屋敷で、中に入るとすぐ広間があった。天井にはシャンデリア、正面には大きな扉、両脇に二階に続く階段。左右にも廊下が続いているし、一瞬で迷いそうだった。

 この屋敷はオリィにあった領主の屋敷も大きいようで、使用人の数もかなり多い。ちなみに前の屋敷にいた使用人たちもこちらについてきていた。今も馬車に積んでいた様々な資料などを屋敷に運び込んでいる。領主に従う使用人たちも結構彼を慕っているよな。

 こういうところでも領主の人となりがわかってくるな。


 そしてさらに屋敷の中を進んで行く執事の後について行くと、やがて一つの部屋の前についた。執事が扉を開けて入れと促してきたので中に入っていくと、オリィにあった屋敷のものに似た客室だった。

 ルナが執事から聞いた話では今日は旅路の疲れを癒してもらって、明日もろもろの手続きなどを済ませることにするようだ。王家への報告やら書類の処分やら悪魔との戦闘で亡くなった兵士たちに関わることなどで今日は忙しくなるそうだ。

 俺たちは急いでいないので数日待ってもいいとルナに伝えてもらったが、領主は明日のほうがありがたいと言っていたそうだ。なんでも、早ければ明後日までには降格処分をもらうだろう、ということだかららしい。

 国で一番の商業都市をデモンパレードの影響とはいえ大混乱に陥れた責任は重要らしい。長い間放っておくと国民や他の貴族が煩いらしく、早急に処分するのが最善らしい。降格処分で留まると予想されるだけまし、とも言っていたが。


 これがもしこの領主でなかったら貴族から庶民への権威剥奪。酷ければ死刑もあり得るらしい。何とも酷い話だとは思うが、そうでなくては国民や他の貴族たちに示しがつかないのだと。それを当たり前のように受け入れている領主もすごいと思うがな。

 俺なら逆ギレだと何だと言われようが叫び倒してやる。


(また、同じ部屋?)

(ん? ああ、そうっぽいな。どうしてそう言うところに気が周らないのだろうか……)


 前の領主の屋敷でもそうだったがどうして同じ部屋なのだろうか。客室などたくさんあるだろうに。

 俺と同じ疑問を抱いたのか念話で語りかけてきたかなにそう返すと、かなが慌てた様子で言葉を続ける。


(か、かなは気にしてないよ? 司と一緒に寝たい)

(まあ、それならいいんだが……)


 いや、何もよくない。特に俺の精神衛生上よろしくない。だがな、かなのような可愛い女の子、と言っても元猫だが、に一緒に寝たいと言われて俺も、と頷かない男がいるのなら見てみたい。これは、悲しい男の性なのだ。

 まあ、それに同じ部屋のほうが執事やメイドの対応がしやすいからな。ルナと一緒にいないとこの屋敷の中ではまともに活動できない。半人半魔を使ってもいいが、頻繁に使いすぎるといつ気付かれるか分かったものじゃない。それに、リルはリルでこの貴族街で情報を集めてみたいとか言っていたし、現実的にはルナと共に行動するのが一番ということだ。


(そう言えば、ウォーリアーはもう大丈夫か? かなり魔力を消費していたみたいだが)

(うん、もう大丈夫。問題ない)


 悪魔との戦闘時、ウォーリアーは大規模な魔力障壁を使っていた。かなり魔力を消費した様子で、その後にかなが使ったアトミックノヴァが止めとなったのかしばらく召喚出来なくなっていた。魔力枯渇状態のようなものだろう。

 一応確認しておきたかっただけなので特に意図はなかったが、無事だと聞いて思い至ったことがあった。


(なあ、精霊は核がある限り死なないんだよな?)

(うん、そうだよ?)

(で、その核はかなが預かっているわけだ)

(そんな感じ)

(じゃあ、リルも精霊みたいな感じってことなのかな?)

(どうだろう。わからない)


 核がある限り死なない、という精霊の特性と似た現象を俺は知っていた。リルのことだな。

 あいつは魂を別の体に移すことで存在を保っているが、その魂は俺の体に乗り移ることも可能となっている。俺の体に適性があった、みたいなことを以前言っていた気がするが、そうだとしても魂を預けているということになる。

 しかし、この場合リルは肉体を失っても適性がある体に乗り移り続ければ死なないということになるのではないだろうか。あの狼の体が傷つき、使い物にならなくなっても俺の体を使うことで生きながらえられる、みたいな感じで。

 

 ちょっと気になっただけではあったがかなりすごい発見なのではないだろうか。この技術というか方法をリルから聞いておけば俺やかなも似たような方法で死んでも復活、みたいなことが出来そうだ。

 かなの場合は精霊を召喚できるのだし、魂がない状態の精霊の体を生み出してそこに魂、つまりは自身の核を埋め込めば意志や記憶をそのままに存命できたりするのではないだろうか。

 これは今後研究する甲斐があるかもしれない。


 そこんとこどうなんですかね、しんさん。


《理論上可能です。それ相応の代償は必要になりますが実行は問題なくできます》


 おおー、しんさんのお墨付きをもらえたか。となればこれからは精霊やリルについてもっと知っていくことが必要だな。困ったときは期待しているよ、しんさん。


《了》


 そんな簡潔だが頼もしい言葉を脳内で受けながら、俺はやりたいことが決まって少しテンションが上がるのだった。

 さて、今回はこの作品のメインキャラ『かな』のキーとなる精霊について少し考えるお話でしたね。振り返ったことに特に理由はありません。

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