王都への旅路
先日合計PVが9000を突破しました! 今月の目標よりもかなり大きな数字となって、正直驚きが隠せません。結構ギリギリの目標を立てたつもりだったんですけどね。そんなことを言ったら総合PTのほうも目標よりもかなり上なんですけどね。
第五十五部、第三章第一話『王都への旅路』です。どうぞ!
俺は今、ゆったりとした馬車にゆられて景色を楽しんでいた。
のどかな平原、優しいそよ風、馬の足音。こんなのんびりとした時間を過ごすのはいつぶりか。ここしばらく慌ただしい日々が続いていたのでよいリフレッシュになっている気がする。
流れゆく景色を楽しみつつ、同じ馬車に乗る仲間たちのことを見る。
馬車の対面で俺とは反対側の窓を覗いている銀髪少女のルナと、俺の肩に頭を預けて眠っている猫耳フード娘のかな。今は見えないが闇空間の中にはリルもいる。
仲間たちとのどかな旅。前の世界にいたころでは考えられなかったようなことだ。
悪魔を倒し、その魔力を処理した後、俺たちは領主のもとに戻った。
戦線を潜り抜けていた数体の悪魔によって壊滅状態ではあったが、領主含め十数人の人間が生き残っていた。街の一部も破壊されていたが残党を狩り終え、街を探索してみると街に残っていた住民たちは皆生き残っていた。領主や残った兵士たちもみな喜び、励まし合った。
最初にあれだけいた兵士は今は十数人ほどになっていたが、残った兵士たちは名誉の死を、そして命をささげた覚悟を称え墓の代わりに剣を地面に刺していた。
領主も死んだすべての兵士の名簿を抱え、王都への避難を始めた。そして残った兵士たちとともに、俺達も王都へ向かうことになったのだ。
領主曰く、王城への報告とともに俺達への褒美をくれるらしい。この国一の商業都市の大貴族というだけあって王都にも大きな屋敷があり、そこに残っている私財の限りを尽くしてくれるとのことだ。
街を守ったとはいえあれだけの被害を出して何もおとがめなしとはいかないらしく、きっと降格処分を受けるだろうからその前に渡してしまいたいのだとか。決死の覚悟で悪魔に挑んで生き残っても降格処分とか可哀想だな。
まあ、国の決まりらしいので俺は口出ししないがな。
そしてかれこれ三日ほどの馬車の旅は、すでに終わりを迎えようとしていた。
ここまでの道のりはつつがなく進み、予定通りの進行具合だった。五つほどの馬車が連なって進んでいるが、山賊や魔獣などに襲われることもなかった。それに関しては、リルが何かしていた節があるがな。
だが、そう簡単な旅路があるわけないのだ。あと数時間で王都につく、というときそれは起きた。
「―――――――――」
「―――――――!? ――!」
「――! ――――!?」
俺たちが乗っている馬車は最後尾にいるのだが、前の方がやけに騒がしい。それに、乗っている馬車の動きが止まった。きっと、前方で何かがあったのだろう。
咄嗟にルナの方を向くと、ルナは念話を使ってきた。
(魔獣の群れが現れたようかの。それも、ブラックファングの群れのようかの)
ブラックファングというと俺が初めて倒した魔獣の名前だ。黒い虎のような三本の尻尾を持つ強力な魔獣で、世界樹や人里離れた荒地などに良く出没するようだが、こんな街の近く、それも街道に群れで現れるなんてことをするような魔獣ではない。そもそも、ブラックファング自体群れをなさねばならないほどに弱小な種族ではない。群れることのないブラックファングが現れるはずのない街道に群れで現れる。
これは、かなりきな臭い。
(かな、加勢するぞ。ブラックファングが相手では個々の兵士たちは分が悪い。というか間違いなく負ける。かなも手加減をしながら適当に戦ってくれ。俺も適当にやる。できれば死人を出さないようにしたいから、頼んだぞ)
(わかった)
俺とかなは馬車を降り、声が聞こえるほうに急ぐ。気配察知であたりを探ると、確かにそこにはブラックファングの群れがあった。数は六、解析鑑定の鑑定結果では皆レベルは40前後。俺とかなならば問題無い程度の相手だ。
ただ、少しおかしな点があった。魔力感知を使った時に感じた魔力の量が、そのレベルに対して明らかに多かったのだ。もちろん、持っている魔力を全力で放出すればあれくらいの魔力はるだろう。だが、先日戦った悪魔たちならともかく普通の魔獣がここまで魔力を放出させるものか?
いや、そんなはずはない。魔力を放出するということは自分の力を知られてしまう原因になるし、存在を気付かれやすくなってしまう。ブラックファングのような肉食魔獣は特に魔力の放出を抑えるはずだ。
ますます怪しい。まあ、戦ってみれば何かわかるかもしれないしどうせ倒さなくてはならないのでさっさと倒すだけなのだが。
その場に着くと同時、俺は剣を抜く。馬車を降りてブラックファングと対峙する兵士の前に出て、一歩踏み出す。
正面にいる二体のブラックファングのうちの片方に狙いをつけ、剣を一閃させる。
しかしさすがは俊敏性に長けた魔獣。紙一重で躱されてしまう。わずかに頬を剣先がかすめたようだが、言葉通りのかすり傷だ。
そして俺から距離をとったのとは別のブラックファングが俺の背に食らいつこうとしてくる。完全に俺の死角だが気配察知と魔力感知がある俺からしてみれば何の問題もない。振り向くこともなく剣を逆手に持ち、後ろに突き刺す。確かな手ごたえを感じた後、勢いよく引き抜く。
確認するまでもなく、ブラックファングは食らいつこうを開かれた口から脳髄まで貫かれているだろう。
もちろん、属性剣術・氷は発動している。そうでなきゃこんな鈍ら程度で口内とはいえブラックファングの皮膚を貫くのは難しいはずだ。
属性剣術・氷は摩擦を極限まで減らすという特性を持っている。そのうえ剣術で習得できる技術を使えるためかなり強力と言える。摩擦を減らすということはすなわち貫通力を上げること。だからこそブラックファングを貫けたのだ。
そして引き抜く勢いのまま正面のブラックファングが魔爪を発動した爪で切り裂こうと伸ばしてきた腕を切断する、つもりだったがやはりそこは鈍ら。腕の太さの半分くらいまでは切り込みを入れられたがそこで止まった。
一瞬膠着状態となるが、俺は魔法が使える。
「―――――――――」
ブラックファングの周りに五つの氷の矢が出現し、ブラックファングの体に突き刺さる。貫通するには至らず、ブラックファングはまだ生きているらしい。
腕に刺さった剣を引き抜こうともがいているが、俺がそれを防いでいるのでそうもいかない。やがて魔法の突き刺さった部分から血が出ていたことで出血多量にでもなったのか生命力が0になった。ぐったりと倒れ伏しその場に横たわる。
これで二体倒したわけだが、俺が二体倒す間にかなが四体倒してしまったらしい。すでに辺りにブラックファングの気配はなかった。なんという速さだ。
当の本人であるかなを探してみると、俺の後ろから近づいてきていた。
俺は振り向いてかなに念話を使う。
(お疲れ、かな)
(うん。でも、なんか様子がおかしかった)
(ああ、そうだよな)
なんというか、ブラックファングにしては不思議な点が多すぎた。それに――
(こいつら、あの悪魔と同じように死んでも魔力が溢れてるな)
倒れ伏すブラックファングの死体からはどす黒い魔力が漏れ出していた。この前の悪魔ほどではないが放置しとくと何が起こるか分からない。
(うん。あっちはもう浄化しておいた。こっちのも浄化する)
(ああ、頼んだ)
精霊は魔力の扱いに長けている。その精霊の力を使った魔法ならばエレメンタルフォース・アトミックノヴァでなくても、これくらいの魔力しか漏れていないのなら他の魔法でも浄化しきれるようだ。
「――――――――――――――――――――」
死体に向けられたかなの手のひらから光があふれる。その光がどす黒い魔力を包んだ時、中和されるかのようにして二つの魔力が消え始めた。
お互い量を減らし合い、そして最終的にやばそうなどす黒い魔力もかなの魔法の魔力も消え去った。
自身の魔力を使いその他の魔力を中和する魔法、エレメンタルフォース・ピリフィケーション。使い方によっては攻撃魔法すら防げる魔法だが、弾速の速い魔法では浄化しきる前に光を突き抜けてくるのでそこまで意味はないだろう。
そんなことをするくらいだったら防御魔法と使ったほうが絶対に良い。
さて、ブラックファングの様子がおかしかったことは気がかりだが、この場の危機は去った。きっと直に王都へ向けてもう一度進み始めるだろう。俺たちは王都につくまでしばらく休ませてもらおう。
さて今回より三章に入りましたこのお話。予定では八章で完結するのですが、今までのを四倍、と考えるとかなり長いですね。これからも頑張りたいと思います。
ちなみに、この作品を書き終えていないのに次の作品について考えてしまっているのですが、どのタイミングで公開すべきでしょうか。あと、考えているものの一つにこの作品の裏話的なものがあるのですが、それは別タイトルで出したほうがいいのでしょうか? 教えていただけると幸いです。
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