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半人半魔

 4100PV越えありがとうございます! 毎日少しずつ増えていくPVが励みです!

 第四十部、第二章第九話『半人半魔』です。どうぞ!

 いよいよもってヤバイ。何がって? 俺の命が危ない。思考加速と即効性のある剣術を連発してる。だがそれでも、ルナの攻防を防ぎきることはできない。

 おかしくないか? 思考加速のレベルが能力使いのおかげでⅩになっていなかったら目で追うことすらできないなんて。


 俺は今、ルナの猛攻の真っただ中にいた。渦を巻くように、不規則に、高速で、鋭く、迷いのない攻撃を、数百連撃と仕掛けてくるルナ。

 精霊完全支配を発動したかなでさえ、見切ることはできず、不用意に近づけない。リルは見切っているかもしれないが、あの弱体化した体では対処のしようがないのだろう。その場から動かない。俺がかろうじて生き残っているのはかなの回復魔法、防御魔法、そしてリルの司水者のおかげだろう。それらがなかったら、とっくに死んでいる。というか、それでも死にそうだ。


 傷を負う回数が増えてきた。かなの回復魔法のおかげで生命力の減少は何とか防げいるが、いつそれが逆転するか分かったものじゃない。思考加速の感覚にも慣れてきて対応力が上がっているはずなのだが、俺の思考が読まれているのか、見てから対応するのでは全て後手に回る。予測を通そうとしても、それすらも躱される。切り裂かれるたびに痛む体が、思考加速の負担で痛む頭が、爪と打ち合うたびに痛む腕が、そろそろ限界を迎えそうだった。


 殺戮者と戦闘狂の効果で戦意喪失とはならないし、気圧されることもない。調子としては絶好調のはずだが、もちろん俺が全力を出せたからと言って勝てる相手ではない。恐怖はなくても、自信はなくなる。

 正直、もう半身以上がズタボロだ。まともに動かすことすら危ういのではないだろうか。戦闘狂は戦闘スキルを磨くスキルでもあるのか、俺もまたルナの動きに対応し始めた。思考加速Ⅹのおかげで読み合いでも不利をとることはなくなった。だが、純粋なステータスで負けている。

 なんで二人に補助されながら戦っているのにここまで押されるんだよ。


 俺は半ば自暴自棄になっていた。ああもう、どうとでもなれ。死んでも一矢報いてやる。


《報告:冷徹者が発動します》


 おいおい、発動条件のハードル低くないか? そんなのでいいのかよ。


 そうは言っても、俺はやけくそになっていた。ずん、と体が重くなった後、ルナの動きが遅くなる。遅くなると言っても、百メートル走を十秒くらいで走り切ってしまいそうな速度は出ているがな。意味が分からない。あのリルでさえ、スローモーションのように見えたというのに。


 改めてルナのステータスを見た時、その原因に気が付いた。状態が、激昂、となっていた。ああ、確か固有権能の月光で、生命力が半分を下回った時に発動すると言っていたな。リルの分身体が攻め立てた時に半分を下回ったのかもしれない。

 確かに、ルナの動きが変わったのはあれ以降だ。納得がいった。


 まあ、だから何だというのだろうか。今の俺にとっては些事でしかない。


 正面から殴り掛かるほど馬鹿ではない。大きく左に飛んで、木を使ってルナの側面から仕掛ける。きっと、俺の瞳は無機物のように見えているのだろうな。今の俺は、一撃与えてやること以外に考えていない。ここで一発殴らせてくれれば、それでいいぜ。


 ホワイトクリスタル・ロングソード。ひび割れて耐久力が一桁となったその武器の、最後の一振りをお見舞いする。この剣には、摩擦が無くなるという特殊効果に加えて、俺が特殊効果を付与していた。

 ラストバースト。剣が破壊される際、込めた魔力が爆ぜるというものだ。この剣そのものが持つ魔力はものすごく少ないが、俺の全力の魔力も上乗せすれば、かなりの威力となる。

 剣術、ハードストライクも発動して、今俺が出せる最強の一撃を放つ。


 その一振りがルナに触れると同時、剣が爆ぜる。前方方向に魔力の渦が出来上がり、それに流されてルナの体が吹き飛ぶ。木々を薙ぎ払い、森の中を進んでいく。地面に背中から落ちても勢いが止むことはなく、そのまま地面で数回バウンドした末に砂埃を上げながら数十メートル地面を引きずられ、止まる。

ありゃあ痛そうだ。


 ルナの生命力を見てみると、残り5000ちょっととなっていた。攻撃前の生命力が12000くらいだったので俺が一撃で7000近く削ったことになる。俺も成長したな。なんて考えながら。

 ふらつく体とぐらつく視界に耐えかねて、俺の意識は絶え絶えだ。やっぱりさ、冷徹者の反動大きすぎるんだって。頭痛の痛さが、尋常ではない。


「あ゛ぁ、あだまいでぇ……」


 俺は、最後に呂律も回らぬ口でその言葉を紡ぎだし、その場に倒れ伏した。


(―――――)


 あ?


(―――――)


 ん?


(―――――)


 な、なんだって?


(つか―――)


 つか?


(司殿―――)


 リルか?


(少々まずいことになった。体を貸してくれ)


 んん? 体を、貸せ? どういうことだ?


 そんな俺の疑問に対する返答はなく、その代わり、暗かった視界に光がもたらされる。俺の意思とは関係なく、勝手に目が開かれていた。体が、動いていた。


 えっと、どういうことだ?


(現状を説明している暇はない。体の操作は我がするので、魔法の発動を頼んだ)

(お、おう……)


 本当に、どういうことだ?


 目の前には、体中傷だらけになったルナが立っていた。どうやらリルの司水者のせいで回復魔法を使えなくなってしまったらしい。しかし重症といえるほどの傷はなく、息も絶え絶えではあるがまだまだ戦えそうだ。

 体は俺の意思とは関係なく動いてしまい、ルナから視線を外すことができないため気配察知で周りの状況を確認する。そして俺のすぐ後ろで横たわるかなを見つけた。


(かな!?)

(安心しろ。気を失っているだけだ。大した傷は負っていない)

(そ、そうか……お前のほうはどうなんだ?)

(右前足、左後ろ足を大きくえぐられた。あの体ではあれ以上の戦闘は不可能だと判断し、闇空間に潜ませている。現在我は、あの体からの憑依を解いている)

(そうか……悪かった。戦闘に集中してくれ)

(気遣い感謝する)


 説明をするつもりはなかったはずのリルの手を煩わせてしまったが、おかげで現状をある程度理解できた。俺が倒れた後、かなとリルで奮闘したが敵わずかなは気絶。リルも重傷を負ったため憑依を解いた。そしてどうやったのかはわからないが俺の体に憑依し、操作しているということだ。

 そして未だ戦闘は継続中。目の前のルナとにらみ合う状況に陥っている。魔法を使えと言われたが、防御魔法や補助魔法優先でいいのだろうか。どうせ攻撃魔法は銀月で跳ね返さされるだろうし、特に何も言われなかったのでそれでいいのだろう。

 しかし、今の俺は本当にどういう状況なのだろうか。しんさんにわかるものなのか?


《世界の書より引用します》

 司水者とは魔力を水に変換し、それを操る能力。その上、その変換された水が触れた液体も操作できるようになる。生物の大半は、その体の半分以上が水分でできている。血の流れによって体内を循環する魔力を司水者で水に変換し、血を操り、その他体液を操ることにより、実質的な完全支配を成す。


 と、とんでもないな……と思ったのだが、その後に続いた言葉に落胆する。


 しかし、強者相手では精神攻撃耐性や状態異常耐性で防がれ、自身よりも弱い相手には普通に攻撃したほうが効率が良い。


 お、おう……何とも残念な能力だな。だが、それがどうしたと……ああ、そういうことか。抵抗されない味方の体なら、乗っ取ることに対するリターンがそれなりにあるということだ。

 あの狼の体よりずっと弱いが、それでも大怪我を負ったあの体よりはマシだ、多分。

 それに、リルの体には俺の魔力が若干籠められていた。もしかしたら適性とかがあるのかもしれない。相性が良いおかげで相対的に力が増える、なんてことはないかと、俺は解析鑑定を自分自身にかける。


種族:人類・超人

名前:誠司

レベル:49

生命力:1029/3593(+3109) 攻撃力:10129(+9398) 防御力:5603(+4901) 魔力:8029/11077(+10098)

状態:制約・奴隷、半人半魔

スキル:属性剣術Ⅲ、気配察知、魔力感知Ⅴ、森羅万象、解析鑑定、皮膚剛化Ⅶ、物理攻撃耐性Ⅴ、魔法耐性Ⅴ、精神攻撃耐性Ⅴ、魔力自動回復Ⅲ、魔術・氷Ⅹ、冷徹者、思考加速Ⅲ(魔術・空間Ⅷ、魔術・精神Ⅶ、魔牙Ⅹ、魔爪Ⅹ、眷属支配、眷属召喚、自然治癒Ⅳ、陽炎、影分身、影武者、闇世界門、影潜伏、影縛)

権利:生きようとする権利(基本的生物権、魔術使用の権利、自己防衛の権利、自己回復の権利)

称号:起死回生、殺戮者、冷徹者、超人(狼王、深海の王)


《半人半魔:人間に魔獣の力が宿った個体のことを、世界の書はこう記した。二つの意思を一つの体に宿し、ステータス、スキル、権利、称号を共有する》


 ものすごく、強かった。もちろん、ルナに及ぶほどのステータスではない。だが、弱体化前のリルと遜色ない、と言っても過言ではなかった。スキル、称号の面では圧倒的に上回っているし、魔力量も全盛期を上回る。身体能力ではさすがに劣るだろうが、それこそスキルや魔法でカバーできるだろう。

 俺の生命力と魔力はだいぶ減っているが、魔力自動回復も自然治癒もある今、そこまで痛手とは言えない。剣を失ってはいるが、リルの魔力を使ってもう一度作り直せばむしろより強力な剣を作り出せる。


「《クリスタル・クリエイト》」


 俺の魔の前に、氷の剣が現れる。先ほど俺が作り出したものと違い、水色を基調とした剣だ。というか、むしろ、水を原材料にしている。

 剣の芯を水で作り、表面を氷で覆うという形で作り出したこの剣。リルの膨大な魔力を使えるため、ホワイトクリスタル・ロングソードにも付与した特殊効果に加えて、とある刻印を施している。

 形状記憶氷剣。司水者によって生み出された水を利用することで、何度砕かれようと元に戻る剣を作り上げたのだ。


名前:アイサファイア・ロングソード

耐久力:5900/5900 攻撃力:+2000 魔力:4000/4000


 流石、魔力お化けリルの魔力を使って作り出した剣だ。星銀の剣の性能を大きく上回る出来栄えとなっている。これならば、ルナの猛攻にも耐えられる。


 俺の体は、宙に漂う剣を握る。静かに構え、ルナを見据える。戦闘はリルに任せる。俺はサポートに回るとしよう。今の俺は、負ける気がしなかった。

 なんだか知らいけど、今日学校でそつぎょうしき? というものがありました。何でも明日から休みでいいんだとか。これでたくさん書けます!

 それと、先日発売した小説『この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ』を購入しました! このすばの大ファンである私的にはゲームをやっていないというのもあって新鮮でとても面白かったです! ぜひ購入してみてください。

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 次回の更新は明日の予定です。よろしくお願いします!

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