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仮装

 どうもシファニーです!


 一応数日前から準備はしていた感じなんですけど、書いてる間ずっと楽しかったです。受験で執筆できない日々が続いていたので、モチベーションも高い高い。この勢いでたくさん書きたいですね。


 第三百五十一部、外伝第三話『仮想』です。どうぞ!

「とっ、とりっく、おあ! とりーと!」

「トリックオアトリート」


 大きな声で恥ずかしそうに叫ぶ、狼男……女? のコスプレをしたカレラと、心底憂鬱そうな表情で淡々と呟くリルが、転移魔法で現れた。


 カレラは犬の耳と犬の尻尾を付け、大きな牙と狼の手を装着した状態で、頬を真っ赤にし、強く目を瞑っていた。それがなぜかと問われれば、恐らく布面積の少ない衣装が恥ずかしいからなのだろうが……はて、どうしてこんな格好をしているのだろう。

 胸元は開いているし、腕も足も出している。隠すべき部分さえ隠せばいい主義とも言えてしまうような恰好であり、何というか、これぞファンタジーアニメの服、って感じがして異世界に来たのに見ていなかった服装に少し感動していた。


 対するリルは詰まらなそうにこそしているが、何とも面白い格好をしている。凛々しい顔の両隣に、明らかに手製の、恐らくは紙で作られた狼の顔が一つずつ増えていた。真ん中の顔と比べて色は鮮やかだし表情に可愛げがあって、クスっと来るタイプである。


 そんな二人の登場に、その場は沈黙に包まれた。


「あ、あれ?」


 やがて静寂を破ったのは、なかなか返ってこない返答に疑問を感じて目を開いたカレラの声。

 そして、それから辺りを見渡し、俺とリリア、リリとかなを確認したところで更に顔を赤くする。

 そして動揺した様子で口をあわあわと開けたり閉じたり、目を白黒させたりする。


「ど、どどどどういうことですか⁉ 今日はみんなで仮装をするって! 仮装をするって!」

「ああ、そういう……」


 明らかに取り乱した様子のカレラを見て、俺は事情を察した。

 要するに、だ。カレラたちと事前に会っていた黒江が、今日はそういう日だと告げており、カレラはそれを忠実に守った。衣装は事前に黒江が渡していたものだろう。実際よく似合っているし、リルとセットで仲睦まじい感じでセンスはいいと思う。

 ただ問題なのは……黒江は俺たちに今日は仮想をする、なんて話はしていないということ。

 リルも何となく察したのだろう。小さくため息を吐いた。


 流石に可哀そうだということで、とりあえず元凶の黒江の位置を指で示す。っておい何先にお菓子を食べてるんだ。

 カレラも俺の指先を負って黒江を見つけたらしい。すごい勢いで駆けよった。


「黒江さんどういうことですか⁉」

「ふぁふぅふぁふぇ」

「食べながら話さないでください!」


 おお、カレラがここまで動揺するとは珍しい。きっと、衣装も受け取った時点で断ったが、黒江の話術に負けて嫌々着たんだろうな。その上で話が違うとなれば怒ってしまうのも無理はない。今回ばかりは黒江が悪い。


「んっ……ごめんカレラさん。本当はそれとなく仮装するよう言うつもりだったんだけど」

「だけど?」

「美味しいご飯食べてたら忘れちゃった」

「ぐーろ゛ーえ゛ーざーんー! 酷いじゃないですかああああーー!」

「す、すげー……カレラがここまで乱れるなんて、相当恥ずかしいんだな」

「この衣装に着替えるのに丸一日躊躇し続けていた故。にしても、我とてここまで感情的なカレラを見たことは無かった。どうやら黒江嬢には並々ならぬ才能があるようだな」

「お二人ともそんなこと言ってないで黒江さんを叱ってください!」

「「あ、はい」」


 カレラが鬼の形相を浮かべ、上擦った声で言ってきた。顔を真っ赤にして、涙目で。その迫力に俺もリルも思わずそんな返事をする。というかリル、お前はそんな返事をするやつだったんだな。この一年近くで何か変化があったのかもしれない。


「黒江、流石にカレラが可哀そうだろ?」

「で、でも、私はコスプレしてるよ? それにほら、かなちゃんは猫の仮想だし、リリアさんとリリさんはエルフの仮装を」

「それは元々です!」

「ですよねあはは……」

「笑い事じゃないですよ! こんな、こんな恥ずかしい格好……」


 カレラは高貴な出身だ。今までこんな派手な格好はしてこなかったのだろう。実際、ドレス姿や鎧姿、私服にしたって落ち着いた印象の服装しか見たことが無い。せめてもの救いはあっちのハロウィンの時期と違って、こっちは比較的暖かいことくらいだろうか。

 そんなことはどうでもいいかもしれない。


「ま、まあカレラさん、すっごく似合ってますよ? ね、ねえ、お兄ちゃん! リルさん!」

「え、俺らに振るのか?」


 突然のことに驚き、思わず振り返ったカレラと目が合った。

 その、泣きそうな表情を見ていたたまれなくなりながらも妹の不出来は兄の不出来も一緒、とカバーに回ることにする。


「もちろん似合ってるぞ! 可愛いし、リルとお揃いって感じがして、いいよな!」

「でしょでしょ! ね、ほらカレラさん美人だし、スタイルもいいから!」

「ほ、本当、ですか?」


 カレラの頬は再び赤くなるが、それはただの羞恥とは少し違うのだろう。最後に、期待するようにリルの方を見て……


「露出が激しいと思うがな」

「うわわあああああああああああああああーーーーー!!!!」

「リルさん最低!」

「お前空気読めよ!」

「事実を言ったまでなのだが?」

「「もっと褒めるべき事実があるだろ(でしょ)⁉」」

「やっぱり露出多いんですねえええええーーーーー!!!」


 カレラを泣き止ませるのにはしばらくかかった。

 というか、あれだけ落ち着いた印象のあったカレラがここまで騒ぐとは。羞恥心って言うのは侮れないものらしい。

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