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楽しい食事

 どうもシファニーです!


 この作品のSS的な物、本当はもっと書きたいんですよね。悩みどころなのはこの作品自体はこの外伝を除けばほとんど余計なものなく完結してる……つもり、なので。二次創作的な扱いで書くとして、別作品で出すべきかどうか……。あれですねSAOとGGOみたいな関係。後日談だけじゃなくて昔の話とか日常回とかいろいろ。

 機会があればチャレンジします!


 第四百五十部、外伝第二話『楽しい食事』です。どうぞ!

「わあ、黒江ちゃん、いらっしゃい」

「勇者クロ、こんばんは」

「リリアさん、リリさん、トリックオアトリート!」


 というわけでご対面。

 リリアとリリは、俺の妹ということもあって黒江とはそれなりに仲がいい。リリアに至っては俺やかなと同様の扱いをしているので、相当大好きだと考えて間違いないだろう。


「と、とりっく……?」

「お菓子か悪戯か、ですか? それでしたらお菓子、ですかね」

「あー、二人ともごめんな。こいつは俺の地元の遊びをしててな、年に一回やるだ。お菓子を貰えないと悪戯しちゃう幽霊? おばけ? になり切ってたくさんの家を回るんだよ。だからお菓子分けてやってくれ」

「そんな事細かに説明されるとやる気削がれるんですけど……」


 小悪魔姿の黒江がジト目で見てくる。

 手前みそながら相変わらずの美少女っぷりである。どんな姿でも可愛い。


(司、かなもお菓子欲しい)

(おう、ご飯の後で貰おうな)

(ん)


 きっと同じくらい可愛いのであろうかなの姿を想像しながら、食卓に並べられたご飯の前に立つ。


「お、美味しそうだな。みんな、先にご飯にしようぜ」

「うん、そうだね! 黒江ちゃんも食べてってね」

「いただきまーす!」

「賑やかになりましたね」


 リリアの手料理は美味しい。

 向こうで言うところの洋風――ともちょっと違うのだが――な料理だけれど、根っからの日本人っ子な俺にとっても口にあう料理だ。慣れてきたってこともあるのかもしれないけれど、本当に大好きになってしまった。

 で、俺と同じご飯ばかり食べてきた、というより以前まで俺のご飯作り担当だった黒江も当然のようにリリアの料理が好きになっていた。


「美味しい! リリアさん、今度料理、ちゃんと教えて! 有給取ってくるから! 一日も無駄にしないためにお兄ちゃん送り迎えヨロ!」

「話が早え……」

「もちろんいいよ。いつでも来てね」

「うん! その時はリリさんにもお世話になるけど、よろしく!」

「はい、こちらこそ。勇者クロには、色々とお世話になりましたから」

「えへへっ」


 勇者と言われたことが嬉しいのか、それとも単に楽しみなのかは分からないが、黒江は大きな笑顔を浮かべた。


 それからも談笑交じりの食事を続け、お腹いっぱいになるまで食べてからご馳走様を一緒に言った。


「ご馳走様!」

「お粗末様。司君、どうだった?」

「もちろん美味しかった。いつもありがとな」

「ううん、大変じゃないからね」

「私も料理を勉強してみましょうか。リリアにばかり任せてしまうのも、あれですから」

「それなら私と一緒に勉強しよ! 来月……いや、来週には休み取るから!」

「国の重鎮がそんなにしょっちゅう休んでいいのかよ……いや、俺が言えたことでもないけどさ」

「そーだよ。お兄ちゃんなんて毎日がホリデーじゃん! エブリデーが休日じゃん!」

「わざわざ言い直さんでよろしい」


 会話の流れを縫って食器を片付け、リリアが代わりにお菓子を持ってくる。


「それじゃあ、デザートの時間だよ」

「待ってました!」「待ってた!」

「おお、声が重なった。というかかなの声今ちゃんと聞こえなかっ……いる」


 黒江がハイテンションで言うのに合わせて聞こえたかなの声は、いつも聞こえる頭の中で響く感じのものじゃなかった。違和感を感じて少し首を振ると、実体を持ったかながいた。


「ん、精霊に作ってもらった。どう?」

「いやまあおかしなところはないどころか絶世の美少女なんですけれども」

「お兄ちゃんかなちゃんにデレッデレだよね……」


 あんなかたくなにまで離れないって言ってたのに食後のデザートで離れるのかよ。

 そんなことを心の中で呟けば、かなが首を横に振る。


「司の中に感覚は残ってる。二人で一緒に食べれば、美味しさも二倍」

「……食べれる量は半分だぞ?」

「え……」

「……」

「……」

「……」

「……リリア、もっと作って」

「考えていなかったらしい」


 賢くなったと思ったが、好きなものに率直なのは変わらないらしい。まあ、リリアが、はーいと嬉しそうに返事して厨房に向かったので、問題はないのかもしれないが。


「これは……凄いですね。精霊の肉体に魔力を纏わせているのでしょうか。ちゃんと生命体の肉体と似通っています」

「しかも核はお兄ちゃんの中なんでしょ? 流石精霊に愛された猫ちゃんだね」

「ん。みんな、優しい」

「ちょっと無駄遣いな気もするけどな」


 猫耳に、尻尾。

 ファンタジーな要素が詰りに詰まったその体は、約一年前に行われた邪神との戦闘の中で失われた。その原因のほとんどは俺にあると、まだ責任を感じてしまうことがある。

 けれどかなはずっと俺の中で元気にしているし、何より、やろうと思えばこうやって元の姿に戻ることもできる。

 最近でこそ戦闘になることはあまりないけれど、それでも危険が絶えない日々だ。魔獣との遭遇は否応なく訪れるし、貴族なり立ての頃は力自慢からちょっかいもかけられた。その度守ってくれて、ずっと一緒にいてくれる存在。


 なんか急に、色々なものが込み上げてきた。それもこれもきっと、かなと黒江と、それにもっと多くの大切な人が増えて、こうやって楽しい時間を過ごせているからなのだろうと思う。

 俺は、幸せ者だ。


「そういえばお兄ちゃん、リルさんがね、この前リセリアルに寄ってったよ」

「え、マジか。元気そうだったか?」

「うん、カレラさんも変わりないみたいだった」


 突然飛んできた報告に、少しばかりテンションが上がる。リルも間違いなく大切な相棒だ。この世界に来てから、どれだけ共に苦難を乗り越えてきたか。


「そろそろ帰ろうと思ってるって言ってたから、もしかしたら近いうちに――」


 黒江がそう言いかけた途端、部屋の中に魔力が奔った。

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