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ハロウィン……ハロウィン?

 どうもシファニーです!

 初めましての人は……あんまりいないと思いますが、初めまして! お久し振りの人はお久し振り! いつも元気なシファニクスです(聞き覚えがあるフレーズだな)。

 というわけで日本人にとっては実はあまり関係ないイベント、ハロウィンがやって来ました。無論、私はお菓子を交換する友達を持ちえないのに基本的にはただの平日なのですが、小説の世界の中だけでも楽しもうということで、今回は今作『ある日神によって異世界に送られた俺は基本的人権すら失い大した力も与えられなかったのでエルフの奴隷にされてしまったけど甘やかされて緩い人生送ってます?』のメンバーと共にハロウィンと楽しみたいと思い、短いですが書いてみました!

 四話立てとなっていますが全話同時に投稿しますので、流れで全部読めると思います。

 てな感じで前置きはこれくらいに。


 第三百四十九部、外伝第一話『ハロウィン……ハロウィン?』です。どうぞ!

 オレアスでの仕事が一段落し、亜人国へと戻って来た俺はリリアとリリの待つ家に向かっていた。


(司、お腹空いた)

(ああ、リリアに用意してもらおうな)

(ん)


 かなは相変わらず俺の中だ。精霊に頼んで新しい体を作ってもらうこともできるらしいのだが、ずっと俺と一緒にいたいとのこと。

 色々な面倒ごとに付き合わせてしまうと言っても、司と一緒ならいいと全肯定。嬉しいことこの上ないのは確かだが、感覚を半ば共有していることもあるし、俺のプライべートの時間が一切なくなるということでいつかどうにか説得しなければいけない気がする。


 そんなことを考えながら、夜道を歩いて家に帰る。テレポートで帰ってもいいけど、ちゃんと玄関をくぐってみたいという子ども心だ。


「リリア、リリ、帰ったぞー」


 亜人国ミレイヤの領土の一つ、その地にある丘の上に建てられた豪邸。未だ慣れないその豪華な扉を開きながら、俺は帰宅を告げた。


「あ、司君、お帰りなさい!」

「ああ、リリアただい――」

「ぎゅー!」


 効果音を口にしないでください。

 目の前から抱き着かれた俺は、呼吸が要らなくなって窒息しなくなったというのに息苦しさという名の幸せを口いっぱいに味わっていた。

 ほら、こういうことがあるから、かなには俺と離れて欲しいんだ。


(リリア、あったかい)

(うん、そうだな)

(ふわふわ)

(だ、だな)

(柔らかい。あと、お胸おっきい)

(かなさん⁉)


 どうしよう。最近かなの語録というか知識というかに無くてもいい、というかむしろ無い方がいいものが増えていっている気がする。


「司君、疲れてない? お腹空いてない? ご飯食べる? お風呂入る? それとも――」


 ま、まさかあの言葉が来るのか?


「マッサージする?」

「全部お願いします。まずはご飯で」

「うん、すぐに準備するね!」


 あの言葉は来なかったがほとんど同等の意味なので口元のニヤケが止まりません。

 やっと解放――大いに残念ではある――してくれたリリアは、笑顔で手を振って厨房へと向かって行った。厨房と言っても一階にあるやつだ。二階と三階にもそれぞれあると知った時には馬鹿じゃねえのと突っ込みを入れた。ここ、三人暮らしなんですけど。

 と、三人目の住民が姿を現した。


「司さん、お帰りなさい。お疲れではないですか?」

「おおリリ、ただいま。久し振りだな。そっちこそ大変じゃなかったか? いろいろ押し付けちゃって」

「いえ、これくらいは元々熟していましたから。むしろ、ほとんど書類関係の整理だけでいいので楽です」

「それなら良かった。リリアが夜ご飯作ってくれるって言うから、食堂に行って待ってないか?」

「そうでしたか。はい、お供しますよ」


 リリは、リリアと瓜二つの顔ながらも、纏う雰囲気の大人っぽさが違う。

 リリアはお姉さんって感じだけど、リリはお母さんなんだよな。

 家に帰ると飛んでも美人の姉と母が待っている家。なんだろう、新感覚かもしれない。いつからか待つ人のいる家を忘れていた身としては、この暖かさは身に染みるものがある。待つ家がでかすぎるのだけちょっと身に余る感じがするけど……これはこれで楽しいのでよしとする。

 と、リリと一緒に歩き出したところでノック音が聞こえてきた。


「あ、俺が出る。リリは先に行っててくれ」

「はい、分かりました」


 リリを見送り、玄関に戻る。

 しかしこんな夜に誰だろうか。仕事の件だったら適当に追い返すか。

 と、ここで、普段は頭を使いたくないからと気配察知や魔力探知を切っていたことをほんの少しだけ後悔した。


「はい、どちらさ――」


 扉に手をかけ、少し開いたその瞬間、扉が勢い良く開け放たれ、獰猛な牙が目の前に迫ってきた。


「トリックオアトリート! お菓子をくれないと悪戯するぞ!」

「……急にどうした?」


 俺の前に現れたのは、小さな角のカチューシャ……待てこれカチューシャじゃない。魔法かなんかで定着してる。その上腰のあたりからは先端が三角形の尻尾が生えているし、小さな羽も……なるほど、異世界のハロウィンは本格的だな、って。


 まあ、小悪魔の格好をしら黒江がやって来た。っておい、勇者としてそれはいいのか。


「お前、リセリアルからわざわざこっちまで来たのか? ミレイヤとじゃ結構距離あるだろ」

「む~、わざわざこんな格好までして来たのにその反応は何? ほら、悪戯されたいの? お菓子をくれないの?」

「そのさりげなくYESかはいかを問う質問やめろ」

「っち」

「舌打ちだと⁉」


 悪戯する気満々だった黒江は不貞腐れた様に頬を膨らませ、俺を屋敷の中へと押しやる。


「とにかく! 今日はハロウィンだよ、お菓子頂戴!」

「お菓子をやるのは別にいいんだが……ハロウィン? 今日ってこの世界のハロウィンの日なのか?」

「どっちかって言うとリセリアルの収穫祭の日だよ! つまり向こうだとハロウィン!」

「つまり、色々こじつけてイベントを楽しみたいだけ、と」

「そういうこと!」

「なんて無駄な行動力だ……」


 黒江はちょくちょく遊びに来ていた。

 といっても、馬車でここまで来るのには獣人国経由で一週間はかかる。黒江自身の足を使って世界樹を突っ切れば二日かかるかどうかくらいだろうけど、それでもそこそこだ。


「それにお前、仮にもリセリアルの重鎮だろうが」

「それ以前に兄妹だもんね! どんな国の立場も家族の絆は引き裂けないよ!」

「いやまあ、そう言うことにしておくか……で、まあ、よく来たな。久しぶり。お菓子だったか。いつも通りだったらリリアがクッキーかなんかを焼いてくれてると思うぞ」

「ほんと? やったー!」

「の前に晩飯な。一人か?」

「うん。流石にこんな事に他の人巻き込めないでしょ?」

「自覚あるんかい……まあクロらしいな。さ、行くぞ」

「はーい!」


 そんなわけで、今日の夜ご飯の食卓に黒江が加わった。

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