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緩やかな流れの中で

 どうもシファニーです! 夏休み、時間があり余っていてどんどん書けちゃいますね。またまた更新です。どんどん書ける分終わりが近づいているんですけど。ねえ、終わりが近づいているんですけど! と言うわけで、間もなく幕引きです。


 第三百四十六部、第十章第二十五話『穏やかな流れの中で』です。どうぞ!

「それでは報告させていただきます。サキュラ、リセリアル共に国王が変わったことによる混乱は徐々に収まりつつあります。また、両国ともに我が国オレアスとの国交を再開しました。これで、人間の国の間での問題は大方片付いたと言ってもいいでしょう」


 俺は今、オレアスの王城の一室でアリシアから報告を受けていた。


「半年前の戦いの影響が、こうもすぐに薄れていくのは司たちのおかげですね。感謝していますよ」

「止めてくれよ、別に俺たちは大したことはしてないだろ?」

「でも、勇者の皆様方に協力を要請してくれたり、亜人国、獣人国に停戦協定を結ばせたり。それを一人でやってのけるだけの人望を持っている人間は、恐らく他にいないでしょうから」

「それは、確かにそうかもな」


 邪神との戦闘から、既に半年が過ぎていた。

 あれから本当に色々なことがあった。ネルが再び亜人国の国王として即位した。と言うか、別に国王を辞めたわけではなかったのだが、責任を感じたネルが辞めたいというと国民たちにそれを反対された。ネルは心底驚いた顔をしていたし、もちろん俺たちも驚いた。あれだけのことをしたんだから、まとめて拒絶されることも考えていたのだ。

 一つわかったのは、ネルが国民たちに愛されていたということ。

 

 他にもサキュラ、リセリアルの両国の君主は邪神教に加担したということで懲罰を受け、君主が変わった。ここで驚きなのが、なんとサキュラの国王にはヘイルが即位したのだ。何の脈略も無さ過ぎて、黒江が報告しに来た時には飲んでいたお茶を噴き出した。

 曰く、私くらい優秀な勇者なら一つの国を管理することくらいなんでも無いわ、だそうで。


 もしかすると、サキュラの地下で起こっていたことを未然に防げなかったことに責任でも感じていたのかもしれないな。今では立派に行政を熟して、国の混乱を治めるくらいの優秀ぶりを発揮していた。もちろん隣ではスーラがサポートしているので、あまり心配はいらないだろうな。


「話しは変わりますが、リセリアルの新たな国王には驚きでしたね。もちろん、サキュラの国王にも驚きましたが」

「そうだな。まさかテトが国王とは」

「はい。私とあまり年も離れていないのに、才能と優しさ、正義感と責任感を合わせ持つ尊敬に値する方です」


 リセリアルの国王にはテトが立候補した。勇者として名前が広まっていたこともあり、案外簡単に即位できたらしい。

 この世界では一般的に空いた国王の枠は力で奪い取るものらしい。例えば革命が起こった時はその革命の指導者、とか。ただ今回はオレアスが仲裁して国王が懲罰を受けたため、国民たちはオレアスに支配されるのではないかと怯えていたらしい。そんなときにテトが手を挙げた。


「他の勇者の方もお手伝いしているみたいですし、不安はありませんね」

「だな。あの、キルアって勇者だったか。テトと結婚するって聞いた時は驚いた。テトもやるなぁ、って」

「どうやら戦場で出会ったらしいですよ。ロマンス小説のようです」


 勇者が国王を務める事例は過去にも何度かあったらしい。勇者が国王、その妃もまた勇者と言うのは流石に珍しかったらしいが、国民からは広く受け入れられていた。それもそうか。邪神教の存在が露になり、亜人国と獣人国の領土で行われた戦いの内容が広まり、それを沈めた勇者たちと聞かされれば期待が高まるのも当然のことと言える。


「ですが、そういう司も凄いじゃないですか。亜人国で貴族の位を頂くなんて」

「頂いても困るんだけどなぁ、これが。最近は領土も押し付けられたし。でもまあ、領土の管理はリリアとリリがやってくれるらしくて、俺は楽してるけどな」

「いいじゃないですか。それだけ皆から信頼されているということですよ」


 ネルにお願いされて、俺は亜人国ミレイヤで貴族をやることになった。それもかなり高位の貴族らしい。困ると言って断ろうと思ったのだが、リリアとリリが手伝うからと言って押し負け、結局は引き受けることになった。

 リリアとリリは正式には亜人国の住人ではなくなってしまった。リリアは元々いた位を返上したし、リリもネルからもう一度私に仕えてくれないかと頼まれたのを断ってしまった。その場所には、二代目改めリアが相応しいとそう言って。


 代わりに、二人は俺の補佐として領土を治める手伝いをしてくれるようになった。そのついでに、ネルの手助けもしている。要は直接仕えるのは止めるけど、こっそり手伝ってあげますよ、と言うことらしい。リリアに関しては未だ俺の主なのだが、補佐と言う立ち位置でいいのだろうか。


「リアさん、でしたか。二代目クイーンエルフと呼ばれた彼女は改めて亜人国の重鎮として認められたんでしたよね。この前も対談の為にオレアスを訪れましたよ」

「忙しくしているみたいだな」


 俺は半年前以降まだ話していないが、二代目はネルの下で仕えることにしたらしい。今までは姿を隠して活動していたので、新しい名前を貰って。


「リリアって名前が、改めてリリアに継承されたことでリリアもクイーンエルフになった。亜人国には今三人のクイーンエルフがいるって……なかなかに過剰戦力だよな」

「ですね。元々そんなつもりはありませんが、オレアスの軍事力では敵わないでしょう」


 リアは元々ハイエルフで、リリアの名を継いでクイーンエルフになっていた。ならばリリアの名を移譲すればハイエルフに戻るはずだったのだが、どうやら戦いの中で力を得すぎてクイーンエルフのまま戻らなくなったらしい。


「世界が少しずつ変わっています。それも間違いなく、いい方向に。本当に感謝していますよ、司」

「その言い方は止めろよ、俺は勇者でもなんでもない。たまたまそこにいただけの普通の人間だよ」

「あなたを今更普通の人間と認める人もいないでしょうけど……私にとっては、英雄ですよ」


 優しい微笑みで言うアリシアに、思わずドキッとしてしまう。戦姫としての凛々しい姿ばかり印象に残っていたからか、普通の少女のような笑顔に驚いた。ギャップ萌えってやつだろうか。可愛いことするじゃないかこの野郎。

 最初は人権すら否定された青年が、今では貴族ですか……感慨深いですね。ほんとか? ほんとです。

 奴隷から始まり、力を得て旅に出て、この世界の神髄に触れ、いずれは神に出会い……やがて一国の貴族を務めるような英雄になる話し。王道ではありますが、見事な成り上がりです。きっとこれからしばらくは平和な時間が続くんでしょうね。


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