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邪神の目覚め

 どうもシファニーです! 五月も末ですね。梅雨入りも近づき、日々の気温もだんだんと高まってきた今日この頃。エアコンも扇風機もない自室が暑いです。


 第三百二十二部、第十章第一話『邪神の目覚め』です。どうぞ!

「《セイクリッド・エクスプロード》」


 ――静かな呟きと共に放たれた一閃は、辺り一帯を薙ぎ払った。


 そうやって訪れた静寂の中に、確かに揺らぐ空間を見たのは、俺だけではなかったようだ。


「司、あそこ」

「ああ、見えてるよ」


 かなが指差すその先には、リリアと一緒に見た《魔術・冥府:アナザーカーテン》。冥界と現世とを繋ぐ門にして、限られ者にのみ与えられた特権。その権利を持っている人物にある心当たりは二つ。

 二代目クイーンエルフ、リリア。そして、ネルだ。


 二代目は倒したばかり。戦線復帰、とは思いたくないが。


 そんな俺に答えたのか、黒い渦をくぐって現れたのはリリアではなかった。ただ、もしかしたら俺の願いは間違っていたのかもしれない。二代目であれば、幾らか楽だったのだろうから。


「ネル……ッ!」


 ソルが鋭く睨んで声を張る。

 

 ネルは漆黒のドレスに身を包んでいた。見たことのない装束だ。それに、その背中に大きな虎を背負っていた。いつしかソルの話していた陽狐のような、巨大な虎だった。


種族:亜人・暗黒虎

名前:ネル:固有能力《冥酊:事象の交差を操作する》

生命力:30192/30192 攻撃力:49129 防御力:20192 魔力:12902/12921

状態:邪神

レベル:87

スキル:森羅万象、魔術・空間Ⅹ、魔術・冥府、魔術・自然Ⅳ、魔術・精神Ⅶ、魔術・闇Ⅸ、自然治癒Ⅷ、魔力即時回復Ⅵ、分割思考、物理攻撃耐Ⅹ、精神攻撃耐性Ⅹ、状態異常無効、魔法耐Ⅹ、即死無効、剣王

権利:基本的生物権、自己防衛の権利、魔術使用の権利、自己回復の権利、世界の書閲覧の権利

称号:冥府の王《冥府の権能を付与できる》、亜人の王


 正直言って、化け物だった。こういっては何だが、ソルやルナと比べても一回り以上強い。天界でソトが召喚した天使よりも強いかもしれない。流石にエルダードラゴンには及ばないが、それにしたって強すぎる。


 五万に近い攻撃力、生命力も三万もある上に自然治癒を持っている。ありとあらゆる攻撃に対する耐性に固有能力《冥酊:事象の交差を操作する》って、どういうことだ。


《冥酊:スキル保持者への接触を改ざんし、意志のままに操ることが出来る》


 要するに?


《攻撃を加えた場合、それが数百倍にもなって反射される可能性があります》


 お、おう、しんさん解説ありがとう……。


 久しぶりにしんさんを頼ったが、聞きたかったような聞きたくなかったようなものを聞いてしまった。とんでもない能力じゃないか。

 ソルの陽光、ルナの月光も無論強いのだが、それと比べたって規格外と言える。


 並び立てる固有能力としては、リウスの絶対空握、テトの万能体質、アリシアの高貴の姫があるだろうか。あと強いて言うなら黒江の完璧超人もあるだろうか。あれはあれでこの世界の常識を覆す逸品だ。

 リウスの絶対空握は周囲一帯を完全に網羅する絶対の情報網、テトの万能体質は物理法則を完全に無視した物理攻撃無効、アリシアの高貴の姫は他者を委縮させる絶対の覇気。


 固有能力とは違うが、かなの政令使役権も同等の力はあるだろう。


 こうしてみれば、案外いるもんだ、最強に名を連ねる能力者たちが。しかしまあ、逆にはっきりした。俺の知る強者の中に、あれに立ち向かえる力を持つ者なんて、一人もいない。


 ただ、忘れてはいけないのだがネルが敵とはまだ限らないのだ。邪神として覚醒しただけで、敵だと確定したわけではない。


「ネル、今までどこで――」


 聞こうとして、俺の言葉は遮られる。ネルが俺に視線を向けた瞬間、黒い一閃が視界を覆った。


「《エレメンタルフォース・アークプリズム》」


 かなの左手がすぐ横で広げられ、半透明の壁が俺の目の前に展開される。一閃が無数の枝分かれを繰り返し、散り散りになる。


「……敵ってことで、間違いないのか?」

「一応言っておくけど、邪神として覚醒してしまったら自意識はほとんど残らないわよ。そうなった私だからこそ分かるし、司だって分かるはずよ」

「じゃあ、止めるんだな」

「そういうことよ」

「……妾の力も貸すかの。必ずどこかで役に立つかの」

「ん、かなも頑張る」

「ああ。ネルを、止めるぞ」


 邪神化はいわば暴走状態、ということだ。誰かが無理やりにでも止めないと本能のままに破壊を続けることになる、のかもしれない。俺の零酷帝王はまだ不完全だ。だからこそある程度自由意思は効く。その一方で道徳心や良心はすべてが消える。

 それがすべて消えるのならば、確かに自意識は残らないことだろう。それが強靭な原初の七魔獣の精神だからこそ、取り戻すのは楽じゃない。


 そこで、リルが影から顔を覗かせる。


「司殿、我はカレラを連れて勇者どもの様子を見て来る。何やら、不穏な気配がする故な」

「……俺も見てるぞ。邪神の木って言うらしい。再生能力が高いな……双子(ペアレンツ)がやばい、助けてやってくれ」

「了解した」


 リルが影から飛び出して、少し離れたところにいたカレラを連れて離れていく。


「司、私に出来ることはありますか?」

「もちろんだ。ネルを止めるぞ。アリシアの聖気の力、必ず役に立つ」

「なら、私も全力を出させていただきます」


 アリシアは剣を抜いた。纏う聖気が迸る。

 そういえば毎度おなじみ章終わりのロング後書きを忘れていたので、ちょっとだけ。


 第九章、すで述べたことがあるかもしれませんが、この作品を書き始めた頃には想定していなかったストーリー部分だったりします。正確に言えば、もう少しコンパクトにまとめる予定だったのですが、伸びに伸びて十章に突入する形となりました。

 章や話の数にあまり意味はないかと思いますが、一つわかったのは想定通りに書くことが難しい、ということでした。当初一章ごとに十万文字、全九章で終わらせようとしていたこの作品は現在第十章に突入し、文字数は八十三万文字。九章が終わる時点で後七万文字多く書いている予定だったわけで。


 もしかしたら書き始めた頃に書きたいと思っていたことが書けていなかったり、書くつもりの無かったものを書いていたり。そんなこんなで紡いできた八十余万文字、三百話を超える物語。現実ではありえない、想像も出来なかったような物語が書きたくて始めたこの異世界物と同様に、というとあまりに大げさではあるのですが、物語を書くと言うことも予想外の連続です。

 不意に湧いたイマジネーションが形となって、キャラクターたちが一喜一憂して。もしかしたら物語は自分の時々の感情のままに書いてもいいのではないかと思うくらい、結構自由に書いてきました。この作品が他のどの作品よりも優れているとは思いませんが、他のどの作品にもない良さがあるとは思えます。

 第九章。本当はあったかもしれないこの作品の終わりを想いながら、(きっと)最終章、第十章、スタートです。


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