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世界最強の魔法使い

 どうもシファニーです。近頃は新作を書き始める書き始めないかの葛藤に脳を支配され、現存の作品が全く進行しないという悩みを抱えております。

 しかし、やはり原点回帰してみればまず一つの作品を完結させること、これが重要なんだと思いました。なので、これからもこの作品をよりよく終わらせられるよう、全力で頑張ってまいります。


 第二百八十三部、第八章第三十六話『世界最強の魔法使い』です。どうぞ!

 眼前の広大な戦場で、百鬼夜行の如く魑魅魍魎を形にしたような魔人や邪人が菱めいていた。

 難しい言い方をしなければ、大量の敵、それも雑魚が視界を覆いつくしていた。


「さて、スーラ、行くわよ」

「言われなくとも分かっている」


 最初は、ただ見知った顔を見つけただけだと思ってた。

 サキュラではそこそこお世話になった相手だったし、目的は良く分からなかってけど、なんだかんだで良いやつだと思って声をかけただけだった。

 でも、どういうわけか今、こうして邪神と相対し、最高のステージに立っている。誰よりも輝ける存在に、世界最強の勇者になる日が、遂に訪れたんだ。


「本気も本気、全力の広範囲魔法、行っくよぉーっ! 《マグヒート・エクソシズム》ーッ!」


 掲げた右手に、青色の光が集う。幾百もの魔法を重ねた最大級の火球を抱えた右手のひらに、更に魔法陣が重なって行く。巨大な、それでもたった一つの火の玉を覆うようにして現れた無数の魔法陣。その輝きを吸収し、さらに肥大していく火の球がやがて魔法陣をくぐり、私の背丈を何十倍にもした獄炎が生まれる。

 ありとあらゆる魔を払う、絶炎の火球。亡者さえも薙ぎ払う聖炎の名を、《マグヒート・エクソシズム》。私の勇者人生の中で、たった唯一、まだ使ったことのなかった最強の魔法。


 スーラの魔力も全部吸い取る勢いで増幅していく魔法の威力を成す最大の根源は、やっぱり固有能力《双子》。決して私一人の力では成し遂げられない火力を片手で支えることが、不安じゃないわけがない。でもそれ以上に、自分の出せる全力が、この片手に宿っていることに興奮する。


「これが、魔術・自然と聖気の合わせ技! 魔術・空間で完全に制御した最大級の破壊力、受けてみろおおおおぉーーーッ!」


 全力を籠めて右手を振り切る。小さく弧を描いて宙を飛ぶ極大の炎の塊は、やがて魔人や邪人の軍勢の中心部に落下し、爆ぜる。


 球状に広がって行く爆発が、やがて空まで覆った時。私たちの目の前に広がっていたのは、見紛うことない巨大な穴。湖一つできてしまいそうな穴をつま先のもう一歩先に見据えた私は、全身を駆け巡る興奮を抑えきれず、飛び上がる。


「やったぁぁーーっ! 成功、成功したよ、スーラ!」

「……ふっ、ああ、そうだな。それにしてもとんでもない破壊力だ。やっぱり、お前には勇者よりも破壊神の方がお似合いだよ」

「何をぉっ、ふんだ。スーラは魔法職じゃないからこれの凄さが分からないんだよ! 見てよこの穴の綺麗な形を!」


 穴はその一番深いところまでまったく歪みの無い球状をしている。これは、私の魔法がほんの少しの誤りもなく、私の制御の通りに球状に爆散したことの証明。あれだけの威力の魔法を、ここまで完璧に操って見せた魔法使いなど、今までにたった一筆分も記録がない。

 空前絶後、私以外にたった一人も扱えるものが存在しないと豪語できるほど、特別な魔法なのだ。


「良かったわねスーラ、私たちは今後数百年先まで魔法誌の表紙を飾るくらいの偉業を成し遂げたのよ! 御伽噺の、太陽の狐みたいな、最強の魔法使いになったのよ!」


 ずっと昔、って言うには最近過ぎる昔、私が子どもの頃。いつもお母さんが読み聞かせてくれた御伽噺に、一人の狐はいつも一人佇んでいた。太陽の狐、って言う名前の、尻尾が燃えてる狐。大昔、世界を壊そうと暴れた悪い吹雪をたった一匹で追い払ったその狐は、何時まで経っても私の中でたった一つの憧れとして、輝き続けている。


 いつか私も、太陽の狐のような凄い魔法を使って、皆を守りたい。世界を救う、凄い存在になりたい。そして、いつか私がそうであったように、御伽噺にでもなって読んだ人々を勇気づけてあげたい。そのために、私は誰よりも凄くて強くて、格好良くて可愛くて、最強で最高に輝かしい勇者になるって決めた。

 小さなころからずっと一緒にいたスーラと一緒に、世界を救う英雄になりたかった。


 その夢が、ほんの好きだけ叶った気がした。


「はしゃぐのもいいが、まだまだ仕事は終わってないぞ。……考えたくはなかったが、相手はやはり、何らかの手段で軍勢を再生できるらしい。見てみろ、お前の魔法で消し飛んだ分の、もう三分の一程は復活している」

「ええっ!? 嘘でしょ!?」


 スーラに言われて前の方を見てみると、先程まで大分数が減ったと思えていた軍勢が、確かに数を取り戻していた。よくよく見てみれば、邪人の足元からどんどんと湧き出ているようにも見えた。


「やっぱりあの邪人を、大ボスを倒さないといけないってことね。ええ、やってやりましょう! なんたって、私は最強の勇者なんだから!」

「最後まで付き合ってやる、せいぜい大暴れしろ」

「言われなくても!」


 倒しても倒しても消えない相手なんて、それこそ吹雪のようでテンションが上がる。数が多ければ多いほど、私の広範囲高火力の魔法が真価を発揮するってもの。戦いがいがある。


「さあ、どんどん行くわ――」


 行くわよ、と意気込もうとしたその直後。

 先程の私の爆炎を優に超える大きさの炎が視界を覆い、魔人や邪人を一掃した。そして立ち上る煙の中に、キツネの尻尾と耳を付けた、少女のようなシルエットが浮かんで見えた。

 今回はただひたすらに最強に憧れた魔法使いの少女、勇者双子の片割れ、ヘイル視点の物語でした。ヘイル視点、入れるかどうかそこそこ悩みましたが話ごとに短く分けられるのがWEB小説の利点。最大限活用すべく、しっかりと投入しました。

 ヘイルは後半も終盤、最終決戦を迎える直前に登場したキャラクターと言うことでまだまだキャラ像が掴めていない読者様も多いかと思い、やはりキャラクター一人一人の魅力を伝えたいという想いもあり設けた今回のお話、いかがだったでしょうか。


 そして、ヘイル回があるということは? お気づきですね、スーラ回ももちろんあります。ついでに言えば、テト回、リウス回も書く予定です。今後に乞うご期待!


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