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この世界で

 どうもシファニーです。そう、今回から新章突入です。と言っても、大まかな流れが変わるだけで区切りがよかったわけではありません。ただ、少しずつでも話の方向を変えないとこのまま私ですら構想してなかった物語が展開されて行きそうで……自主規制をかけた所存です。


 第二百四十八部、第八章第一話『この世界で』です。どうぞ!

 ルナが予想外の服装に着替えた後、俺たちは適当に城の中を散歩してみた。ただじっとしていたら、こいつは新しい服装だろうが何だろうがお菓子を食べているだけに違いない。そう考えたからである。


「にしても広い城だな。ネルが建てたのか?」

「妾の知るところではないかの。けれど、ネルのための城であることには間違いなさそうではあるかの」

「なんでそう思うんだ?」

「当然、亜人でもなんでもないネルを祭っているからかの。この国の国民たちは、皆ネルについて明るい意見しか持っていない様子であったかの。また、一見すれば獣人、目の利く者なら魔獣に見える妾を見ても誰も声を上げることがなかった。余程ネルが気に入られている証拠かの」


 確かに。

 ネルは恐らく住み場所を失った亜人たちを統率し、始祖竜が封印されてからの千年近く、ここら一体の亜人たちの面倒を見てきたんだろう。城を建て、国を確立させ、今や大国に数えられるようになった。亜人のほとんどが集まり、戦力的にも経済力的にも他に勝るとも劣らない力を得たわけだ。

 さらに言えば、ネル本人が戦場に立ったのなら人間の国で最も軍事力を備えている、と言われているオレアスですら成すすべなく敗戦するだろう。例え、アリシアが前線に立ったとしても。


「でも、そんな国がどうして他の国とうまくやれてるんだ? いや、サキュラとあんな関係な時点で怪しいと言えば怪しいが、他の国に危険視されたり遠巻きにされたりしそうだろ? もしくはどこかの国を攻め落としに行っててもいいはずだ。けど、この千年そんなことはなかったんだろ?」


 俺としてもリルに聞くなりして大陸の大国についての知識はある程度仕入れてきた。その知識を鵜吞みにするのなら亜人国が大きな動きを見せたことは、今までなかったと言う。平和主義、と言われればそれまでだが、争いの絶えなさそうなこの世界でそんなことがあり得るのだろうか。


「ネルもまた、調停者。ソルと同じく、無益な死を好まぬ者かの。もちろん、此度のように宣戦布告され、民が危険に晒されればその対策を講じるだろう。しかし、それこそあちら側が国民を皆殺しにしようととち狂うまではネルが戦場に立つことも、攻め入ることもあり得ないかの。そんなネルだからこそ、争いを嫌う強者であるからこそこの千年近く安泰を保ち、人々はネルを信頼したということかの」

「なるほどな。まあ、ネルらしいな。いかにもお人好し、って感じだし」

「そうは言っても強者であり暴君であることは変わらないかの。むやみな挑発や無益な挑戦は避けることをお勧めするかの」

「勝てるわけもない相手に挑むほど、俺は馬鹿じゃない」


 と言い切りたかったが、今までの経験からしてそんなことはないかもしれない。特に、アリシアを相手にしたときとか、一度負けて力量差を知らしめられた後で自分から決闘を挑んだからな、俺。


 そんな俺の内心を知ってか知らずか、ルナは普段は見せない微笑みを向けてくる。新衣装が今までの和服とは違ってどちらかと言えば可愛い系なだけあって改めてルナのルックスの良さを見せつけられた気がした。


「そうある事を願うかの。ただ、司殿の境遇を考えるに、必ずしもそうであり続けられるとは限らない、とは言っておくかの」

「まあ、な。いつまで経っても、形的に見れば俺はリリアの奴隷だ。それが解除されるまでは、リリアがやる気になるとも思えないが、俺を操って、果てには操った俺にリルやかなを操らせて戦わせる、なんてことも出来ちゃうからな」

「まあ、あり得ない話かの。それに、もしそんなことになったら妾が止めてやるかの。司殿が意識を失うくらいには手加減をしてやるので、覚悟しておくかの」

「なんで俺なんだよ……」


 標的を間違えている気がする。


「愛の鞭? と言うやつかの?」

「疑問形じゃねえか、自信がないなら言うな」

 

 所々適当なのは、いつものことか。


「そう言えば司殿、サキュラの内情の調査に行ったと聞いたかの。妾にも調査結果を教えて欲しいかの」

「ん? それは構わないが……」


 ルナがそう言うことに興味を持つのは珍しいな、なんて思いつつネルに話したのと同じ話をしてやった。まあ、ルナの思っていた内情の調査とは少し違っていたかもしれないが、知ってることは全部話したので勘弁してほしい。


「ふむ、そのようなことに。いよいよ、この大陸も乱れだす、と言うことかの」

「この大陸、も? どういうことだ?」

「まあ、司殿なら話しても良かろう」


 城内の散策を続けながら、辺りを気にすることもなくそう言ったルナは窓から覗く光を鬱陶し気にその手で遮った。


「この世界を作ったのは神。その神は妾達を生み、その他の多くの命を育んできた。基本的に無干渉を貫き、恐らく、この世界の独自の成長を娯楽にしているのであろう。そんな世界で、すべてのものが手を取り合って安泰に過ごしていたら、神にとっては刺激がなく、詰まらなくなってしまうかの」


 だから――

 ルナはそう続けた。


「この世界では、定期的に大災害が起こるかの。それは、この七千年と言う妾のせいの中で体験したこともあれば、妾の知らぬところで起こったこともある。この大陸で代表的なものと言えば、七つの大罪を呼ばれるものであろう。あれと似たようなことが、例えば別大陸や、天空に住まう種族のテリトリー、はたまた深海など様々なところで発生しているかの」


 例えそれが、一個人によって起こされたものであろうとも。


「妾達は、そのような出来事を生み出すように設定されて生まれてきた、としか思えない。だから、なかなか人類は一つになれないのだと、妾はそう思うかの」


 それは、なんとなくこの世界の確信に迫っているように思えて。

 俺は、思わず口を噤んだ。

 第八章へと突入しましたが、第七章までの約二百五十話、楽しんでいただけたでしょうか。ほんの少しでも日々を元気に過ごす気力になったり、些細な笑いになってくれていたのならそんなにも嬉しいことはありません。

 私のスタイルは、どちらかと言えば自分が書きたいものだけを書く、と言うもの。読者様の読みたい作品、流行のジャンル、作風などをほとんど取り入れていないと思います。そんな中でも読んでくださった方には、やはり感謝してもしきれません。今後も、この作品を応援してくださるよう願います。


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