邪神と呼ばれたのは
どうもシファニーです。今月も三分の一が終わり、地域によっては本格的な梅雨に入りだしているころでしょう。近頃は雨で外はジメジメしていて出る気になれません。いえ、元よりあんまり外にはいきませんが。
第二百四十六部、第七章第三十七話『邪神と呼ばれたのは』です。どうぞ!
「それで? 結局、言いたいことはそれだけか?」
「無論、妾の願いだけを言うつもりはないかの。いいことを聞かせてやるかの」
いつもの調子を取り戻したルナは、どこからかまた山盛り積まれたケーキスタンドを取り出して抱えた。いや、だからそれ抱えるものじゃないって。
「そなたの悩みである邪神教。あれは確かにソルを原型としたものではあるが、実際に祭っているものは少し違う。真にあ奴らが祭っているのは零酷停王。この世の真理であるかの」
「真理?」
「神が生み出したこの世界には、もちろん法則が存在する。その一つが権利であり、スキルであるかの。称号や、種族や固有能力。そのような様々な法則を統一する存在の、その頂点にあるのが零酷停王。《零酷停王》と呼ばれる、全知全能の王かの」
「全知全能……」
かなの語りだした内容があまりに壮絶すぎて、俺は言葉を復唱することしか出来ずにいた。
「い、いや待てよ。そもそも零酷停王ってスキルは冷徹者の進化したものだ。俺でも手に出来たようなものが進化しただけで、そんな大それたものになるのか?」
「冷徹者、と言うスキルについての詳細は、恐らくネルやソルの方が詳しいかの。ただ、一度手にしたことがあるのなら、知っているはずかの。そのスキルを、どうやって手に入れたのか。もう一度考えてみるかの」
「どうやって? それは、精神強化が進化して……」
そこで思い出す。そう言えば、精神強化と言う文字を最近見ていないということを。
「精神強化、と言う類のスキルは進化をすると基本的に精神攻撃耐性、と言うスキルになり、魔術・精神などの攻撃に対する防衛スキルになる。けれど、時々精神強化Ⅹとなり、精神攻撃耐性以外のものへと変貌することがある」
「それが、冷徹者だって言うのか?」
「その通りかの。実際、妾はその様な能力を一度も手にしたことがない」
そんなことを言うルナ相手に、俺は色々と考えてみる。
「いや、でも待って欲しい。俺は冷徹者を持っていたけど、その時には精神攻撃耐性も持っていたぞ?」
「それは自身の精神強化が進化したのではなく、継承したものであろう?」
「じゃ、じゃあこれはどうだ? かなが宿してる精霊のデストロイヤーは精神強化Ⅹをまだ持っている。その上で精神攻撃耐性だってあるんだ。あいつは何者かから継承したわけじゃないはずだおかしくないか?」
「そのことについては前例があるかの。精霊種は基本的に物質の肉体を持たない。故に精神を強化する必要があり、両立する個体がいる。精神強化は精神攻撃耐性とは違う面での防衛が可能である、と言うのは四大精霊が一人、サラマンダーの言葉であるかの」
「……」
ルナはそう言って、ミルクレープを口に放った。
「ウォーリアーは持ってなかった」
「個体によるかの。そもそも、精霊は妾達人類とは分類が違う。法則性が違っていることを、神も証明してくれるはずかの。そもそも、純粋な精霊は冷徹者を宿す可能性はないかの」
「なんでそう言い切れるんだ?」
問うと、ルナは真剣な眼差しを向けて言ってきた。
「冷徹者とは、己の判断を実行に移すだけの忍耐力が身についていない者の精神を、外部から干渉することで全力を発揮させ、本人の望む結果を最高効率で確立するためのスキル。妾の聞いた言葉ではあるが、司殿はどう思う?」
「……まあ、大筋は合ってるはずだ。でも、それが何か関係あるのか?」
「精霊の判断力は人類よりもはるかに優れている。そもそも、考えるという仮定を省いて結論を出すのは精霊の専売特許。要するに、精霊は存在そのものが冷徹者と同じような特性の持ち主である、と言うことかの。よって、適性がない」
「なんのだ?」
「冷徹者、及び冷酷帝王の、かの」
言い切られて、言葉を詰まらせた。と言うか、もう返す言葉も見つからなかった。なんとなく、言いたいことが分かってしまったから。
「邪神教と言う連中の言う邪神とは、ソルが宿した冷酷帝王だったかの。そして、その正体はソルを外界より支配しようとした世界の真理、ルールであり法則。それに魅了され、力を得ようとした邪神教教徒たちは誤った方向に先走ったようであるが、真の邪神の再来は彼らとは見当はずれの場所で起こっていたかの」
なんとなく予感はしていた。俺に宿った冷酷帝王、ってスキルがどれくらいやばいのかは。ソルの話を信じるのなら、世界最強と言われた竜ですら滅ぼす力を引き出させる存在。周りの命など気にも留めない、暴虐の王。
「神に世界の真の調停者候補として見込まれたものにのみ、冷徹者は訪れる。そして、ある時点からそれは王となり、世界の管理者の一員となる。それが、冷酷帝王。邪神教の連中が、邪神と崇め祭る存在」
「……」
「この世界に自然の摂理として生み出された存在では、そんなことは叶わないかの。例え精神強化と言うスキルのレベルがⅩになり、適性があったとしても開花することはあり得ない。なぜなら、そのほとんどには資格がないからかの。神に追従する資格が」
結構、壮大な話になっていた。想像していたよりも、ずっと。
「司殿、重く捉える必要はないかの。あのソルですら、それを拒んだかの。だから、せめて一つの事実として、知識と知っておくべきかの」
滅多に見せない、ルナの案じたような表情が紡いだのは、あまりに衝撃的な言葉。
「司殿は、邪神となる資格を持った存在、かもしれないかの」
私が読む小説のほとんどは挿絵や表紙があるものでキャラクターの外見がなんとなくわかるものなんですが、結局は文字だけの上に情景描写? と言うか人物紹介が苦手な私にキャラクターがうまく表現出来ているのかがたまに心配になってきます。うちのキャラクターが少なからず魅力的に映っていると良いんですけどね。
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