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国主の立場

 どうもシファニーです。実はネルさんはそこまで深くストーリーに関わらせるつもりのなかったキャラクターです。なので、キャラの造り込みに思ったよりも時間がかかり……更新が遅れてしまってすいませんと謝罪の言葉を。


 第二百四十二部、第七章第三十三話『国主の立場』です。どうぞ!

「まあ、報告はこんなところかな」

「……邪神教の動きが活発化、ですか。由々しき事態ですね」


 資料も私、一通りの報告も終えた。サキュラでの出来事も、大まかにだが伝えておいた。そうして返って来たのが、今のネルの反応だった。


「知ってるのか?」

「知っている、と言うよりは知らされた、と言う方が正しいでしょうか。我が国の隣国に、獣王国キリア、と言う国があるのはご存じでしょうか?」

「ああ、名前だけはな。まあ、名前からして獣人の国、何だろ?」

「はい。その国の王は獣王と呼ばれ、猫型魔獣の最高位、千獣王と言う種族の男です」


 獣王国についての話は今まであまり聞いてこなかったな。強いて知っていることを上げるなら、七つの大罪の一つ、獣王による邪神復活くらいだろうか。……邪神復活?


「獣王国は今まで公にされてきませんでしたが、その国教として邪神教を掲げているということが最近判明しました。どうやら獣王が千年前のユグドラシル崩壊に立ち会った人物であるらしく、それを邪神を捉えて発足した宗教団体らしいのですが。他に何かわかりませんか?」

「……俺の知ってる限りだと、邪神はすでに人間が復活させている。それに、邪神教の構成員は、今まで見てきた中だと人間しかいなかった。獣人のそれと人間のそれが同一かは分からないけどそれと関係あると考えるなら、活発化しだした時期は同じなんじゃないか?」

「なるほど、確かに受けた報告から考えるのなら、その通りですね。関連性が確かでないのは不安要素ですが、同じであると仮定し、対策を立てるべきでしょうか」


 俺としてもネルの言うことが本当ならかなり警戒しなくてはならないと思う。だって、獣王と言うからにはかなり強いのだろうし、それが一度邪神を復活させているらしいのだ。もし人間のそれと手を取り合っていたりするのなら、より一層危険度が増すだろう。

 いや、あの人間の邪神教が復活させたと思われる邪神が、獣王国の邪神だったとしたら、どうだろう。そう仮定するのならこの世界では決して立場が高いとは言えない人間が邪神を復活させられたことにも納得がいく、のだろうか。


 ただ忘れてはならないのは、七つの大罪はどれも数百年以上前の話と言うことだ。そんな昔に復活した邪神が今更人間の手によって扱われていることはないと思う。


「まあ、対策を立てると言っても具体的なものがあるわけではありません。私としても邪神、などと言う曖昧な存在のことは認知しておらず、私の持つスキルの一つ、森羅万象にすら明確な物事は記されてません。何か、知恵を貸していただけますか?」


 そう言って聞いてくるネルに、俺は開きかけた口を閉ざして考える。今のネルの物言いを考えるにネルは俺が森羅万象や解析鑑定を持っていることを知らないのだろうか。ルナもソルも知っているはずだが、あえて言っていないのか?

 こんなところで悩むような俺じゃなかったが、何かが引っかかって自分のスキルを他人にあまり言いふらすべきではない、と思ってしまった。よくよく考えなくても俺が持っているスキルはかなり希少なものなのだ。


 特に、ネルは国主だ。変なことに利用されないためにも、黙っておいたほうが良いかもしれない。


「考えられる対策の一つは、ソルとかルナを戦力に数えることだろうな。俺たちが遭遇してきた邪神は確かに強かった。だが圧倒的に強い、と言うわけでもなかった。ソルは余裕そうだったし、ルナも余裕だろう。ネルだって簡単に相手取れるはずだ。手が足りないなら俺たちも加わろうとは思うけど、邪神に関してはそれで充分対処できると思う」

「邪神の力がこれ以上増幅しないと考えるのなら、それでいいかも知れませんね。これ以上の情報もすぐには得られないでしょうし、一旦保留と言うことになるでしょうか」

「獣王国への対応は、きっと国を持っての対策をしておいたほうが良いだろうし、そっちは任せるよ。邪神に関しては、ネルの言う通りだな。俺たちだって邪神の相手に手慣れているとか、そんな自信はない。国には国のやり方があるだろうし、素人は口出ししないでおくよ」


 今でこそこうやってほとんど対等に話をしているが、ネルは一国の国主だ。国としての対策の仕方も政治の仕方もあるだろう。俺たちみたいに行き当たりばったりのやり方しか知らない素人が、アドバイスをくれと言われたからと言ってもあんまり口出しするべきではないだろう。


「いえ、参考になりました。私たちも未知なる現状に動揺している最中です。少しでも知恵や情報をこちらに伝えてくれたことに、感謝しなくてはなりません。それに、あなたたちはあくまでリリアが個人的に雇っているに過ぎませんからね。本来なら私が直接命令できるような立場でもありません。それに、報酬も無しにお願いするのもおかしな話だったのです」

「まあ、報酬を望まないのは俺の勝手だけどな」

「そう言われると思って、こちらも報酬の提示はしませんでした。けれど、今からでも何か言っていただければ融通は利かせますよ?」


 そう言って笑いかけてくるネルは、やはり一国を背負う者として相応しいだけの何かを持っているのだろう。この人になら、色々と任せられそうだと思ったのが、その根拠だ。

 ネルの言葉を聞いた後で、俺は席を立って背を向ける。


「いらないよ、国主様。また今度一緒に話でもしよう。それだけで十分だ」


 俺は、ちょっとだけ格好つけてみて、ネルの執務室を後にしたのだった。

 そう言えばこの章はかなり長いこと続いていますね。感覚的にはカレラとリルの物語である間章を書き終えてからあまり経っていない気がしていたのですが、七章にも区切りをつけるべきかもしれません。ただ、何が問題って本来七章で書くつもりだった部分が終わっておらず、そもそも全八章構成を想定した作品だったということです。作品作りって、結構うまくいかない者ですよね。

 まあ、恐らくこの作品は八章では終わらず、九章、十章とどんどん話数が増えて行きますが、どうかお付き合い願います。


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