司への興味
どうもシファニーです。そう言えば中間試験の結果が帰って来たんですけど、最近小説に没頭しすぎたせいか成績が落ち込み始めてるんですよね。ただ、現代国語の点だけは上がっていてひとまず安心しました。
第二百四十一部、第七章第三十二話『司への興味』です。どうぞ!
「興味がある、って言われてもな……具体的にどんな疑問があるんだ?」
「そうですね。例えば、どうしてフェンリルのスキルに適応できたのか、とかですかね」
ネルに問われた俺は、どこか審問を受けている罪人のような心境を抱かされていた。いや、実際に受けたことはないけど。
責めるような視線、とは少し違うかもしれないが何か怪しんでいる、もしくは疑っているような眼差しを受けていた。しかし、やましいことなどないのだからすべてを正直に話せばいいのだ。
「それは俺の固有能力:《能力使い》の影響だな。全部のスキルの適性が得られて、その進化速度も早まるってものだ」
「《能力使い》、ですか? ……なるほど、そのようですね。始祖竜の持っていた称号《生命の起源》と似ていますね」
「ああ、そんなのもあったな。あれは見ただけで使えるようになる、ってやつだったから、俺のはその劣化版みたいなところかな。いや、あっちは種族特有のもの限定だったし、どっちもどっちかもな」
「そうですね。どちらも一長一短ではあります。ただ、この世界の、相手を倒して力を奪う、と言う本質により適しているのは司さんの《能力使い》でしょうね」
「確かに?」
言われて見れば、この世界では倒した相手の持っていたスキルを、適性を持っていたら受け継ぐことが出来る、と言う性質があった。俺の場合はすべてのスキルに適性があるため、倒した相手の能力はすべて受け継ぐことが出来る。
実は、今持っている能力の劣化になったり、俺自身が使いたくないと思う能力に関してはしんさんに省いてもらっているだけで、それなりの種類のスキルを俺は持っていたりする。例えば、最近手にいれた無崩の幕は皮膚剛化の完全上位互換だ。だから、皮膚剛化は今俺がステータスを確認してもそこに映ってこない。
それに、無崩の幕や万全の期を手に入れた時、俺は他にも複数のスキルを手に入れていた。
《飛裂の羽:一時的な移動能力の向上を行う》
《千羅の腕:任意の相手の動きを一定時間封じ込めることが出来る》
《賢斬の的:任意の相手の弱点を割り出すことが出来る》
《永貌の瞳:籠める魔力量に応じて相手の未来を見通すことが出来る》
どれも強烈なうえに使いどころが限定されるものばかりだ。永貌の瞳に関していえば、今の俺では何をどう頑張ったって相手が次にいつ瞬きするか程度のことしかわからなかった。ただ、これらはそれぞれの系統では最も優れたスキルらしい。
《飛裂の羽》ならば身体能力上昇系スキルの最高峰。
《千羅の腕》ならば拘束系スキルの最高峰。
《賢斬の的》ならば武術系スキルの最高峰。
《永貌の瞳》ならば予知系スキルの最高峰。
系統が同じでも、突き詰めれば性能が違う能力は確かにあるだろう。例えば賢斬の的と属性剣術は同じ武術系で、賢斬の的の方が格は上だが内容は全く違う。ただ、突き詰めれば違うと言うものもある、と言うだけである。
そうでない、下位互換にしかなり得ないスキルは無数にあり、そう言ったスキルは今の俺のステータスからは、少なくとも俺が見た時は映らなくなっている。これは、始祖竜との戦いのときにスキルを把握しきれなくて面倒だったことから得た教訓で行っていたことだったが、サキュラでの悪魔を一網打尽にした時にはそうしておいてよかった。出なかったら、俺のスキル欄は大変なことになっていたかもしれない。
「まあ、俺は倒した相手のスキルを奪ったとしても、ほとんどは使いこなせずにいる。いや、自分なりに使いこなせて入るんだろうが、本領は発揮できていない、って感じだな」
「始祖竜ほどの強力なステータスがあるならまだしも、司さんはあくまで人の身ですからね。仕方ないでしょう。ですが、それにしても凄いことです。そのような固有能力の持ち主は、今まで見たことがありませんでしたし」
当然と言えば当然なのだろうか。この固有能力は恐らく創造神ソトから与えられたものだ。かなや黒江の固有能力も、そうとしか考えられないような強力なものだった。所謂、チート級。
そう考えれば、生きようとする権利の本質も知ってしまったことだし、俺もまたチート級の存在なのかもしれない。実際、原初の七魔獣にも、こうして警戒と言うか興味を示されているわけだし。
「ですが、そうですか。大体のことは分かりました。私としても、爆弾のような人材をいつまでも大切な部下に抱えさせておきたくはありませんでしたが、大丈夫そうですね」
「……馬鹿にしてるよな?」
「率直に申し上げるなら、そうですね。でも、誤解しないで欲しいのは、不確定要素を多く抱えたあなたの存在は、国にとっても変数なんです。一国の主として、そうそう見過ごすわけにもいきません。あと、立場は私の方が上なので、何言っても問題ないんです」
「権力の横暴すぎるだろ」
お茶目と言うかなんというか。そんな可愛らしいものじゃない気もするし、ただの冗談と受け取ってもいいようにも思える。どこかルナやソルとは違う雰囲気を感じていたが、ネルも大概だったのかもしれない。
原初の七魔獣の一人である、暗黒虎のネルさんは司君に興味津々です。彼女はこの世界でも珍しい森羅万象の持ち主で、解析鑑定を持つソルと合わせて世界トップレベルの知者と言えるでしょう。え? リリアや司はどっちも持ってる? 二人はまだまだ若いですからね。(リリア:推定百数十歳)
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