ネルとの対談
どうもシファニーです。今のところ毎日更新中の私ですが、内容の質が保てているのか不安です。まあ、元よりあんまり高くないので、心配する点が違う気もしますがまあいいでしょう。少なからず現状維持して成長していくことが大切なのです。だから何ってわけでもありませんが。
第二百四十部、第七章第三十一話『ネルとの対談』です。どうぞ!
「あら、お話は終わったのですか?」
「ああ、ネルか。終わったぞ。……そう言えば、成果の報告をしなくちゃな」
ソルとの話を終え、心が軽くなった俺は一先ず食堂に向かおうとしていた。矢先、通路の反対側から歩いてくるネルが見えた。
黒髪を長く伸ばし、セーラー服に身を包んだ大和撫子のような佇まい。ルナやソルと違って和装じゃないが、一番和風な人格を持っているような気がする。
「ええ、お願いします。私の執務室へどうぞ」
「分かった」
ネルの後に続いてネルの執務室へと向かう。そこはほんの数日前に訪れた場所のはずなのに、なんだかとても久しぶりのような気がしてならなかった。それもこれも、あの濃密なサキュラでの時間のせいなわけだが。
「早速ですが、サキュラでどんな情報を得られたのか、教えてもらえますか?」
「ああ。とりあえず、サキュラの軍事機密に関する資料を奪取してきた。と言っても、相手側も奪われたことには気付いているだろう。参考程度になると思うけどな」
「なるほど、見せていただけますか?」
「もちろんだ」
最近覚えたての次元収納から、サキュラから持ってきた資料を取り出して見せる。魔術・空間は本当に便利だ。数百ページ規模の紙束を、ネルの前に提示して見せた。
「おお……これは凄いですね。これだけの資料を、良く持って帰って来てくれました。本当に助かりました」
「まあ、俺の主の上司に頼まれたら、頑張らないわけにはいかないよ」
「ふふっ、そうですか。それならば、ありがたく拝見させて頂きますね」
手渡された資料にネルは目を通した。だが、そこで不思議なことが起こる。
ネルの持つ資料が、ネルの手の動きなんて見えないままにどんどんと捲られていくのだ。高速で、パラパラと。まともに見えているとも思えないが、ページが捲られるのと一緒にネルが頷いているのを見るに、きっと読めているんだろう。
あの、目に見えないスピードで紙をめくっているのが、ネルの固有能力:《器用者》なのだろうか。
「す、凄いな……それ」
「え? ああ、これのことですか?」
手元を見て、そう言った。
「便利ですよ、これ。固有能力にしては、少し地味ですけどね。この肉体じゃ本来できないような動きも、問題なく出来るんです」
「この肉体じゃ、って……原初の七魔獣の肉体以上の優れた肉体なんて、そうそうないだろ?」
「まあ、その通りではあるんですけど。肉体って時点で限界がありますしね。ステータス面で見るのなら、人間に生まれる勇者や、獣人に生まれる獣王、亜人のクイーンエルフやアークドワーフなど、私たちに勝る存在はそこそこいます。私たちの体は最強でも万能でもないんですよ、意外と」
そう言って上品な笑顔を見せたネルは、でも、と続ける。
「能力面だけで言うのなら、最強格なのは間違いありませんね。私たち原初の七魔獣はそれぞれが特殊な属性を持って生まれます。ネル、要するに私は冥府の使い手。ソルは陽光、ルナは月光。青竜は空間で、黒竜は暗黒、白竜は氷です。始祖竜は原初。四つの基本属性の礎になった属性です。私たちは、それぞれの属性に焦点を当てるのなら、確かに最強の存在なんです」
「今更だよ、そんなこと。ルナとソル、始祖竜の強さはこの目でちゃんと見てきた。白竜も、その一端は見た。原初の七魔獣の強さなんて、周知の事実でしかない」
「その通りですね……」
ネルは視線を落として、再び資料を捲りだす。静かにしていたほうが良いかと思い、しばらくその姿を見つめていると、ネルは視線を上げずに言ってくる。
「司さんに宿っているのは、且つてリルさんが持っていたフェンリルの力だと聞きました」
「え? あ、ああ。そうだな。俺がフェンリルだった頃のリルを倒して、貰った力だ」
「ええ。昨日、リルさんからたくさんのことを聞きました。あなたはとても興味深い存在だ、と」
一体リルはネルにどんなことを話したのだろうか。もし恥ずかしい話だったりしたら後で痛い目見せてやろうと心に誓う。
「当時人間でしかなかったあなたが、フェンリルとしての全盛期を終え、力が衰えているさなかだったとはいえど、一時期はこの世界樹でも名を連ならせていたリルさんを倒した、なんて話。最初は耳を疑いました。それに、フェンリルの力をものにしたこと、そこから先、本当にたくさんの苦難を歩み、その上でこうして生き抜いてきたこと。称賛に値すると思います」
「リルにちゃんと話を聞いてたなら、俺が死んだことは知ってるか? 決して生き抜いてきたわけじゃないぞ?」
「そんなことを言ったら、リルさんだって一度死んでますしね。この世界、と言うより私たちの領域まで来ると、肉体の死にはそこまで大きな意味はありません。リルさんが魔道具を使って復活したように、あなたがかなさんと精霊の力を借りて復活したように。始祖竜が、怨念によって復活したように、この世界は強くなればなるほど、死とは遠くなっていくんです」
そんな話をし終える頃には、ネルの手元の資料は終わりまで読み切られ、閉じられていた。ゆっくりと顔を上げ、真剣な顔を付きを向けてきたネル。先程のソルに続いて、かなり重要そうな話をされている気がしたので背筋を伸ばして、ネルの話を聞くことにした。
「でも、それはあくまで、最低限の強さを得た後での話。あなたが一度死ぬ前の時点では、こちら側の領域には達していなかったはずなんです。今は、あなたが倒した当時のリルさんを超えるほどには強いでしょう。それなら、納得は出来ました」
なんとなく言いたいことが分かって、ただ、ネルが今から発するであろう問いにはすぐに答えられそうにもなくて。
「司さん、あなたの持つ力は、普通のものではありません。良かったら、詳しく聞かせてはくれませんか? 私は今、あなたにとても興味を持っています」
成長云々って話を前書きでしたんですけど、私は今スランプに陥っていると思います。正確に言うと、新しいことにうまくチャレンジが出来ていない状態です。新しい作品を考えよう、と頭の中で構想してみてもうまく文字を書けていないのが現状です。より良いものを書こうとするばかり、そもそも書き出せないこんな私がどうすればいいか分かる先人は良き知恵を恵んでくださると嬉しく思います。他意はありません。
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