圧勝
どうもシファニーです。今日はいい天気でしたか? 私は外を見ていないのでわかりません。何をしていたのかって? もちろんゼルダです。
第二百二十四部、第七章第十五話『圧勝』です。どうぞ!
「行くよ?」
かなは司を庇うように前に出て、その爪を光らせる。
「一人で私たちに勝てるとでも? 私たちの名前、忘れたわけじゃないよね?」
「ん? 知らない」
「ええ!? さっき自己紹介したじゃん!?」
惚けている風でもないかなの反応に真面目に驚くヘイルと、スーラが諫める。
「おい、乗せられるな。あいつ、何かをしているようだ。早く止めないと」
「おっ、本当だ。君が獣人、ってことはあの人もなんかの獣人かな? 悪いことはさせないよ!」
「ん、どうぞご自由に。でも、かな倒してからね」
そう言って、かなはその両手に魔力を籠め、体の前に構えた。
「《魔爪》……容赦しない」
そう呟かれたかなの言葉のその直後、瞬く光の様に姿が掻き消えた。《神速》
「ちょっ!? き、消えた!?」
「いや、高速移動の類だ! 構えろ!」
「遅い」
低く、単調な声だった。その声が聞こえたと同時、スーラが動く。
こちらもまた目にも止まらぬ速度で振り返り、魔力の籠ったかなの爪をその剣で受け止める……はずだった。
しかしその剣を通り抜けるようにかなの攻撃はスーラを捉え、胸元を大きく切り裂いた。《水月華》
「ガッ!?」
「スーラ! よくも! はああぁぁぁ!!」
スーラに傷を負わされ、激怒したヘイルは杖に炎の剣を生み出した。
「邪魔」
「っうぅ!?」
その振りかざされた剣はしかし、かなの頭上に触れると同時に折れ曲がり、ヘイルの右肩を焼いた。《銀月》
「く、クソッ! スーラ、一旦引くよ!」
「あ……ああ」
右肩を焼かれたヘイルはすぐに距離を取り、スーラの肩を抱えて転移の魔法を発動し、姿を消した。
「ん、司終わったよ」
「……ああ、俺ももうすぐ終わる、ありがとな」
僅かなソースを割いて、一応かなの戦闘を見ていた。魔法を使えないという劣勢に立たされているにもかかわらず、スキルをうまく使って勇者二人を圧倒していた。初見殺しだから通用した、と言う可能性がないわけではない。だが、確かに通用していた。
たった一人で二人を翻弄するその力は、やはりかなの才能だ。とんでもないな、うちの子は。
そして、かなが時間を稼いでくれたおかげでそろそろ王都全体の把握が終わりそうだ。
と言うか、たった今終わった。
「ふぅ、かな、お疲れ。俺も終わったぞ」
「ん、楽勝だった」
自信満々に胸を張り、どや顔を浮かべて言うかなの頭を思わず撫でてやった俺は甘いのだろうか。いや、かなは勇者二人を追い払うという偉業を成し遂げたのだ。このくらいは妥当だろう。それどころかもっと褒めてやるべきかもしれない。そうだろう。
「ふふん」
「ああ、偉いぞかな。……それじゃあ、一旦ユグドラシルに戻ろう。情報を整理しなきゃだしな」
「ん、分かった」
と言うわけでかなに頼み、ユグドラシルへと戻って来た。ほんの数分だけ王都にいたわけだが、本当に良い収穫があった。
日差しの気持ちいい原っぱの上、俺とかなは疲れを感じるままに寝転んだ。いや、かなに関しては疲れているかどうか微妙だが、俺の脳は大いに消耗していた。
俺が寝転がったその隣に、かなは寄り添い丸くなる。そして俺に軽くくっつくと、気持ちよさそうに目を閉じた。そのあとすぐに寝息を立て始めるのだから、猫と言うのは侮れない。俺はどうやら、しばらく動けなさそうだ。
どちらにしても疲れて起き上がれないので、俺もかなと一緒になって眠ることにする。脳の疲労の回復には睡眠が一番なのだ。
心地いい陽気の下、眠りに着く俺の頭の中に、王都を包む混沌が曖昧に映っていく。
王都全体を覆う結界は、どす黒い魔力を放つ。そしてその中央、大広間の地下空間に、力の根源は在った。そして、予想通りと言うかなんというか。そこに待ち構えているのは邪神だった。それも、ついこの間目にした邪神と瓜二つだったのだ。
それだけじゃない。地下に溢れんばかりに居たのは、邪人。そして、魔人。リルの話によれば七つの大罪に数えられる事件で生み出された生き物。しんさんに教えてもらわなければ普通の人間と見分けがつかないところだったが、確かに存在していた。
あの王都の地下は、既に邪神教によって支配されていた。
この事をこの国の国王が知るのかは分からない。知っていたとして、それが果たして承諾を得てのものなのかもわからない。協力しているのか、協力させられているのか。これに関しても非常に複雑な問題だ。
転移の魔法が使えないのなら、地下に入り込むには地面を叩き割るか地下へと続く道を見つけるしかない。でも、地面を割るのはリスクが多い。双子みたいのが何十も来たら流石に厳しいからな。
で、地下へと続く道についてだが、正面突破は難しそうだった。地下へと続く道は隠し通路なのだろうか。王都中に広がっていた。しかし、その出口は見つからなかった。何らかの方法で隠されているのだろう。まあ、言っても壁一枚で防がれている程度なので破壊できる。
ただ、問題はその通路があまりに長すぎることだ。挟まれたら逃げ場はないし、向かう先にいるのは多数の戦闘員と邪神。それも、以前よりも強くなっていると考えられる邪神だ。
「まったく……楽はさせてくれないな」
俺は不満げに呟いた後、本格的に微睡みの中に沈んでいった。
ゼル伝の新作、出ましたね。私はブレワイと無双をそれなりにやり込んでいたんですけど、早速一時間と少し触っただけで面白い! と確信できました。続きをプレイするのが楽しみですね。みなさんも、ぜひともプレイしてみてください。まあ、難点を挙げるとしたらあのソフト他と比べて少し高いんですよね……
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