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現状確認

 どうもシファニーです。久々の連続投稿をしている、シファニーです。最近計算したんですが、この作品を投稿し始めてから十五か月、大体四百五十日なんですが、話数で割ってみるとニより大きくなるんです。つまり、この作品の平均更新ペースは二日か三日に一回、と言うことになるらしく。これが頑張っているほうなのかは分かりませんが、自分的には良く継続できているなと思う今日この頃。

 第二百二十三部、第七章第十四話『現状確認』です。どうぞ!

 見えない壁に阻まれ、逃亡が出来ないと分かった俺たちはひとまず身を隠す場所を探していた。


「ただ、あのヘイルとか言う女の言葉は気がかりだよな。転移はしばらくできないとか、位置は常に把握してるとか言ってたよな」

「ん、言ってた」


 彼女の言った言葉が本当かどうかは分からない。だが、少なくとも今は少なからず転移できないしすべてが嘘と言うわけではないだろう。果たしてその言葉のどこまでが本当かは分からないが位置を把握されているのだとしたらどれだけ逃げ回っても追いつかれてしまうだろう。

 どこか身を隠せるとしたら……


「まあ、ここだよな」

「ん、ここなら安全」


 と言うわけで俺たちは今ユグドラシルの中にいた。あの、天に聳える精霊樹が生えたあの大草原である。以前リリアとかなが戦って焼け野原になったあの場所だ。俺の生き返った、あの場所で、アリシアと戦ったあの場所だ。


「流石にここまでは追ってこないよな」

「ん、無理。絶対に」


 ここは選ばれし精霊にしか侵入を許されていない聖域。下級精霊はおろか中級精霊ですら己の意思で立ち入ることは出来ないとされる絶対の秘境。それこそ、かなくらい精霊に愛され、上級精霊を従える存在でなければ上級精霊以外は立ち入れない場所だ。


「いざとなればここに逃げればいいとして、それでも王都から逃げ出せたことにはならないよな」

「そうっぽい。この中をどれだけ走っても、王都からは出られない、っぽい」

「だろうな。幾らかなでも、幾ら上位精霊でも神の結界から抜け出すのは難しいだろうからな」

「でも、邪神倒せば何とかなる。頑張れば行ける」

「ま、どっちにしても頑張らないといけないしな。とりあえず、どこに力の主がいるのか探さないとな」

「ん」


 さて、落ち着いて今後の事を話し合えているので改めて現状を確認するが、俺たちは王都に閉じ込められてしまったわけだ。

 その眼に見えない壁の持つ性質は条件と再生。並みの力では破壊できず、破壊できたとしても再生する。そして、その壁に拒まれる者と拒まれない者がいる。この条件の真相は分からないが、俺とかなはそろって通れない条件に沿っているらしい。

 それでいて、俺たちはその壁を抜ける方法を持たず、その壁を作り出しているのが誰かも分からない。その上ヘイル曰く俺たちの位置は常に把握されているらしい。このユグドラシルにいる限りは安全だと思うが、王都に出た瞬間襲われる、なんてこともあり得る。


 そして、勇者双子(ペアレンツ)のヘイルとスーラ。以前出会った勇者たちの中でも、確かに強い存在だ。この前の戦争でリルが出会った勇者、リリアを襲った勇者、亜人国でネルを襲った勇者。そのすべてよりも、力がある。

 黒江に勝るとも思えないが、二人合わせてそれと同等の力があってもおかしくはない。少なくとも、黒江と一緒にいた勇者、リルスとテトよりは強いだろう。そうなるとソルやネル、ルナと同等まで成長した今の俺とかなで叩けば敵わない相手ではない。


「でも、邪神は分からない」

「ああ。この前の邪神は、俺たちでも普通に勝てそうだった。だけど、あの目に見えなくて壊せない壁は前のより広く展開されてたし、条件なんてものも付けられていた。この前のより強くてもおかしくない」

「だから、頑張るしかない」

「かならしいな。でも、その通りだ。ここから抜け出すために、今まで以上に頑張るぞ、かな」

「ん、もちろん」


 そう意気込んで、俺たちは笑い合った。


「それじゃあ、早速行くか?」

「ん、準備は万端」


 かなはそう言うと、転移を発動させてユグドラシルを抜け出した。

 そして訪れたのは外壁の上。壁の張られたギリギリのところだ。


「まあ、街中に出るよりは囲まれにくいよな」

「ん、早速探そ……やっぱり魔法使えないみたい」

「そうか。まだ使えないのか」

 

 かなは魔力感知とか気配察知は使えないので、探索は俺だけの仕事になりそうだ。だがまあ、問題はない。もとよりこの王都くらいだった俺の探索の範囲内だ。


「さっきは集中して探せなかったけど、邪魔が入らないなら問題ない。《分割思考》」


 基本、俺は魔力感知や気配察知を分割思考によって常に発動している。ソルやルナのように使い慣れてくると意識せずとも発動し続けられるらしいが、それとは別に集中すればするほど精度が上がるとも言っていた。

 当然、俺もそれに当てはまる。分割思考は今や二重三重、それどころか十や二十個同時に、それでいて意識的に扱うことも出来る。一応単純な数だけで言えばすでに百単位で使えるが、それをした場合一つ一つの思考で出来ることが少なすぎる。せいぜいが魔法の詠唱を素早く終わらせるくらいしか使い道がない。

 魔力を籠めれば籠めるほどより多く、より高い精度で扱える。集中すればするほど、もっと多くの事が可能になる。


 分割思考には意識の拡張として使う以外にも、一つの事を突き詰める力もある。簡単に言えば、意識の拡張がパソコン上でマルチタスクに作業をすることなら、一つの事を突き詰めるのはパソコンの処理速度を上げるためにCPUを並列使用するみたいな感じだ。

 だから、俺は全神経、全魔力を集中させて分割思考を発動する。


 街の形だけじゃない。室内の様子、数センチいや、数ミリ単位の凹凸。それどころか、すべてを壁に覆われた密室さえも、そのすべてを網羅する。魔力の流れも、何もかもが俺の手の中だ。


「あっ! 見つけた! スーラ、行くよ!」

「ああ、分かっている」


 そこで、思わぬ邪魔が入って来た。いや、まあ予想の範囲内ではあったけど。また転移か何かわからない力でヘイルが現れ、外壁の上に着地する。その数瞬後にはスーラもヘイルに合流した。


 幾ら分割思考と言えど、分割している元の頭が俺だ。二十に別れたところでこの街のすべてを把握するには時間がかかる。一度始めるのには物凄い集中力が必要だし、一度始めたら最後まで終わらせたいと思っていた。

 よって、このくらいの障害への対策はすでに考えてあった。


「じゃ、かなが相手」


 瞳を閉じ、意識を集中させる俺の眼の前にかなが躍り出る。そのフードを、脱ぎ捨てて。


「あれ、獣人!?」

「やっぱり、ただの人間じゃないと思ってたが……敵国のスパイか何かか!」

「知りたかったら、倒してみて」


 かなへのお願いはたった一つ。何をしてでも、俺を守ってくれ、だ。

 以前もお話しした『死亡遊戯で飯を食う』第一巻を無事読了し、良作品を読んだ後の幸せな余韻に浸りながら書いたこの話はどこかこの本の影響を受けてしまっているかもしれません。ただ、本格的に読書を始めてから三年、執筆関係の活動を始めてから二年が経つ私でも小説一巻で構想に大きな影響を与える、と言うのは面白いですよね。やはり、世に出回るような、新人賞を受賞なさるような作品は格が違うと改めて感じさせられました。

 私も、自分の作品を紙の媒体として世に送り出すのが一つの夢です。これからも頑張っていきたいと思います。


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