囚われた二人
どうもシファニーです。前書きのネタが完全に切れた、シファニーです。前書きは出来れば書きたい私ですが、書きたいことがないのに書くのは難しいですよね。どうしましょうか……と悩んでみれば前書きが埋まると知った今日この頃。
第二百二十二部、第七章第十三話『捕らわれた二人』です。どうぞ!
双子と名乗る勇者は、ついに俺の方へと飛び出してきた。杖を持ち、マントを羽織っているという何ともありがちな魔法使いの格好をしているくせに、まさか近接戦闘を仕掛けてくるとは。
ただ、本当にこいつが魔法使いかどうかも定かではないのだ。見た目に騙されて油断するわけにはいかない。
「さあ、行くよ! 《ソード・オブ・メルト》!」
「っ!? 結局魔法かよ!」
なるほど、つまりは魔法で近接戦闘を仕掛けるタイプだったわけだ。
ヘイルは杖の先から青白い炎を収束させたような剣を放ってその手に握った。
《スキル:《ソード・オブ・メルト》は魔術・自然Ⅲで扱える魔法。触れるだけで溶解する熱量を持つ剣を生み出す》
しんさん曰く、そんな魔法らしい。触れるだけで溶解、って言われると恐ろしいものだが逆に言えば当たらなければいいのだろう。ヘイルがそんな剣が出ている杖を握っている時点で近寄る程度では何ともないようだし。
しかし、問題があるとすれば対する俺の握る剣が氷製と言うところだろうか。
「そんな鈍らじゃ一瞬で溶けちゃうよ!」
「鈍らとかの問題じゃない気がするけどな!」
言い合って交えた剣は、案の定アイサファイヤロングソードが一瞬にして溶けて終わった。続くように振りかざされた炎の剣を躱すように身を引き、体勢を立て直す。
どうやら、俺の武器だと打ち合うことさえできないらしい。
「ふふんっ! どうかな? 観念してくれていいんだよ?」
「王城にまで忍び込んで、罪が軽いわけないからな! そう言うわけにもいかない!」
「往生際が悪いね! でも、諦めの悪さも人の良さだよね! まだまだ行くよ!」
まあ、罪の重さに関係なく俺たちは捕まるわけにはいかない。
それに、まだまだこの勇者に関する情報も足りていないのだ。かなが獣人だってことはバレているかもしれないし、中途半端な干渉で終わるとこっちが損する可能性もある。こちらとしても、やり通さなければならないことがあるのだ。
「かな、もうある程度本気出していいぞ」
「いいの?」
「ああ。でも、あんまり暴れすぎるなよ。そいつを倒す必要もない。ひとまずここを離れるだけだ」
「ん」
ここまで来たらこちらもある程度力を見せてもいいだろう。相手がどんな戦法で戦うタイプか、そしてどんな攻撃方法を持っているのかが分かった今、こっちも力を見せてもいいだろう。それに、よくよく考えてみたらかなが獣人って思われたら思われたで亜人国からの刺客とは思われないかもしれない。
「何? そんな余裕があるの?」
「逆に、王城にまで乗り込むような奴がこんなところで余裕無くすとでも?」
「それはそうだ、ねっ!」
そう言って振りかざされた炎の剣は、しかし俺の体に触れたとて何も起こることはなかった。
無崩の幕さえあれば、熱なんてもんは怖くもなんともない。
右腕で受け止めた炎の剣を受け流し、懐に入り込む。確かにこの炎の剣を操る魔法は強力だ。でも、この女自体はやはりただの女としか思えない。体の使い方は下手くそで、踏み込みも甘い。強大な力に持て遊ばれている。
勇者としての力は確かに優秀だけど、どうやらそれに甘んじて己を鍛えることをしていなかったようだ。
流石に幾度となく試練を乗り越えてきた俺に技術と経験で勝てるわけではないらしい。
「ちょっ!? な、何で効かないの!?」
「力の差を、見せつけておこうか」
「きゃっ!?」
懐に入り込み、その体を突き放す。大きく押し飛ばされたその体は宙を舞い、勢いのままに落下する。
「お、落ちるーっ!?」
「ったく」
しかしそんなヘイルの体を、かなとの戦いから抜け出したスーラがキャッチする。ただ、おかげで双子両方の動きを止めることが出来た。
「かな、逃げるぞ」
「ん」
この隙に逃げ出してしまおう、ってのが俺の考えだ。確かにあのスーラとか言う男の動きは早かった。だけど、どうにも持久力はないらしい。スタートダッシュで負けようとも、走り続ければ逃げられるって算段だ。
「に、逃げられないからね! あなたたちはしばらく転移できないし、位置は常に把握してるんだからぁ!!」
と言う何とも恐ろしい捨て台詞を背中に受けながら、俺たちは王都から逃げ出して――
「あれ? 司、この壁……」
「あれだな、邪神教の教会にあったやつと同じだ」
逃げてやろうと思ったのだが外壁を超えようと思った矢先、目の前に、と言うか手の先に目に見えない壁があった。
そしてその壁は目に見えないだけじゃなく、壊してもすぐに復活するらしい。試しにかなに砕いてもらったが、すぐに修復された。目では見えないが魔力感知で存在は感知できるが、どうやらこいつはとんでもない魔力の塊らしい。
「ん、あの壁と一緒。でも……」
「ああ、そうなるとまた邪神か、邪神の力を使えるやつがここにいるってことになるよな」
魔力の塊、壊しても復活。こんな人並外れた神業は、言葉通り神にしか不可能だろう。そう、邪なんてついても神である邪神にしか。
「それに、この壁は普通の人間には通れているみたいなんだよな」
そう言って王都の正門へと目を向けると、人を乗せた馬車たちが続々と門を通り抜けて外へと抜けている。だが、魔力感知で見てみれば確かにそこに壁はあるのだ。要するにこの壁は目に見えないだけではなく条件付きだ。
恐らく、人間以外は通れないー、とか。あと考えられるのは一定以上の強さの存在は通れない、とか。それでいて入ってくることは出来る。
「なるほどよく出来てる。要するに俺たちは罠にかかった、ってわけだ」
「ん。でも、帰らないと」
「だな」
少し面倒になったが、やるべきことは変わらない。どうにかしてここを抜け出さないとな。
さて、後書きも書くことはありません。どうしたものでしょうか。毎回書くのも二百話超えてくると厳しいですよね。良く続いたものだと思います。えっと……落ちはないです。
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