王都への侵入
ゴールデンウイークも終盤へ差し掛かった今日この頃、執筆の手は止まらないのに課題が全く進むことのない私です、どうもシファニーです。おかしいですね、どうしてどっちも手を動かすだけでいいはずなのにこんなにも進度が誓うのでしょうか。
第二百十八部、第七章第九話『王都への侵入』です。どうぞ!
王都に着いた。そりゃもう楽だった。世界樹の中と違って開けた大地しかない都市と都市の間はどこに転移しても危険がなく、極力人目に付かない道をたどりながら転移を繰り返せば十分程度で着いてしまった。
「かな、お疲れ様」
「ん、このくらい、だいじょぶ」
「じゃあさっそく……軍事機密って、どこに保存するんだろうな」
今までが今までなだけあって適当でも何とかなるんじゃないか、って思ってるんだが意外と難しいのかもしれない。よくよく思い出してみればオレアスでの一件は運が良すぎたのだ。簡単に国の機密と言うか国王そのものと対談できたわけだが、普通に考えて早々うまくいくはずがない。
となるとそれなりに考えて行動しないといけないわけだ。それこそ、オレアスを最初に訪れた時にリルが言っていたように、数年単位での調査が必要になる可能性もある。ただ、今回は今にも始まりそうなサキュラとの戦争に先手を打つための策だ。急がなければいけない。
「うーん、かな、どうすればいいと思う?」
「王様を倒したらダメなの?」
「……どうだろうな。王様だけ倒しても戦争は止まらないと思うぞ。それにきっと、今のサキュラには俺たちだけじゃどうしようもない程度の戦力が集まってるんだと思う。だからこそ、ネルは俺たちをここに派遣したんだろうし」
少なくとも、ネルはサキュラの現在の戦力は俺たちが直接協力したり、ネル自身が前線に立ったら最悪どうにかなる、みたいな程度ではないと予測しているのだろう。そうでもなかったらこんなまどろっこしいことはせずに、サキュラ軍と正面から戦えるはずだ。
まあ、その予想も俺の報告を受けてものなんだろうけど。俺の言葉だけでもそこまで重要視しているってことなのだろう。
そのことを考えると、俺たちがここでサキュラを強襲しても勝てるとは限らないということになる。
「じゃ、暗殺」
「かな……どこでそんな言葉覚えたんだよ」
どうせリルだろうけど、危ない言葉をかなに覚えさせないで欲しい。
「いやまぁ、確かに暗殺がうまくいけば相手の戦力なんて気にせずに頭だけを落とせるな。それだけで戦争が終わるとは思えないけど、混乱させられるだろうし、いい案かもな。それでも、警戒はしなくちゃいけないけどな」
なんといっても、相手には勇者がいる可能性があるのだ。黒江と一緒にいた勇者、リウスは探知の勇者だった。あいつの探知力だったらリルの存在すら認知できる様子だった。目に見えない敵や、その敵の種類、強さの程度まで分かってしまっている様子だった。
ついぞ解析鑑定を使えなかったが、ステータス面も並大抵の人間とは比べ物にならないものだったはずだ。そんな存在が、国王を守っている可能性は十二分にあるだろう。
「一旦王城の近くに行って、警備がどんな感じかを確認したいな。もし俺たちの存在がバレたらそのまま突撃。バレなかったら相応の対策をして暗殺だ。それすらもうまくいかなかったら、その時はその時だ。少しでも兵力をそぐか、情報だけ奪取するか」
「ん、分かった」
色々と想像は巡る。どんなことをすればいち早く、そして安全に目的を達成できるのか。戦力は俺とかなだけ。俺は使えるスキルが増えたし、かなは精霊の力を使えば様々ことが出来る。
二人だけ、って言うのは戦闘面では不安が残るがそれ以外の面では意外と何とかなるのが、今の俺とかなのコンビだ。俺はかなの出来ることを把握している。
分割思考によって並行して回転する脳裏の中、数百、数千と言うアイデアが続々と並ぶ。でも、どうしたって不安が残るのは、俺自身、何かを成し遂げた経験があまりにも少ないからなんだと思う。
でも――
「やれることをやる、それだけだな。かな、協力してくれよ」
「ん、もちろん。かなは、いつだって司と一緒」
「ああ、ありがとうな」
ひとまず、気配察知とか魔力探知で探れることは探ってみたい。
最初に行った街と同じ要領で外壁を乗り越え、王都の中へと向かう。街の作りは先程の街と大差ないが、当然街はより広く、建物はより大きくなっている。人口も増えているのだろうし、技術力も結集し、より高度な文明が築かれているのだろう。
ぱっと見戦争の最中にあるようには見えないが別にサキュラとミレイヤとの間では互いの国に乗り込むような戦争は始まっていない。多少のどかなのは当然と言えるのかもしれない。亜人国だって、別に喧騒に包まれている様子はなかった。
「さて、王城は……あれか」
「ん、おっきい」
オレアスとサキュラ、リセリアルでは環境に大きな違いはない。よって建築物などには大差がつきにくい。オレアスのそれと似たような作りをした王城が見えた。ただ、その大きさはこちらの方が上に見える。
やはり、リルが人類一の技術大国と言うだけのことはあるらしい。
早速王城へと向かうが、俺とかなだけでは隠密行動に不安が残る。よって、王城付近までは住民のフリをして近づくことにする。かなはいつも通りのフードをかぶり、俺は外見だけは人間なので身体能力にさえ気を付ければ怪しまれることはない。
と言うわけで、王城の目の前までたどり着いた。
「じゃあかな、さっさと終わらせて帰るぞ」
「ん、頑張る」
リリアやネル、ソル。黒江や、そしてかなのためにも。今回ばかりは俺が頑張って、この戦いをさっさと終わらせないとな。
と言うわけで司君たちは王都へ侵入です。ここからしばらくは作品初期の頃のような司君とかなちゃんとの掛け合いがたくさん見れることでしょう、次回以降もお楽しみに。
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