サキュラ
どうもお久しぶりです、シファニーです。体調不良って怖いですよね、本当に何も出来なくなります。と言うわけで四日ぶりの更新です。
第二百十七部、第七章第八話『サキュラ』です。どうぞ!
「かな、一緒に行かないか?」
「行く」
「そう言うと思ったよ」
どこへ、とも言っていないしどれくらい、とも言っていない。それでもこうやって返してくるのは分かっていたし、ここから俺が何を言っても断りはしないんだろうな。
「ちなみに、今から行くのはサキュラで、帰って来るのはいつになるか分からない」
「ん、分かった。大丈夫」
「そうか。……じゃあ、早速行くか」
俺たちの間の会話は少ない、と言うよりかなが基本的に全肯定するから会話が続かない。それがどこか心地いいような気も、息苦しいような気もするが決して嫌な気はしない。それに、この従順さがかなの純情から来ているのだと分かるからこそ、むげにしようとは思えなかった。
「ってわけだ。リル、後のことは頼んだよ。あと、ソルはなんとしても引き留めてくれ」
「ふっ、荷の重い任だな。しかし、任されてやろう。気を付けるのだぞ」
いつでも気づけば影の中にいるリルは、顔だけ影からのぞかせながらそう言った。こいつもこいつでほとんどの事を一言二言で察してしまうから会話は少なくて済むな。ストレスフリーだと思う。
「じゃ、行ってくるわ」
「ん、行ってきます」
「ああ、行ってこい」
移動方法は簡単だ。有り余る体力を使って全力ダッシュ。たまに気晴らしにレベル50越えの魔獣を倒してみたりしながら三日もすればサキュラには着いていた。街並みは全体的にオレアスやリセリアルと変わらないが、どこか殺風景で乾いた空気が漂っているようだった。
「あれは……入国規制、ってやつか? かなり厳しく取り締まってるみたいだな」
「……倒す?」
「いや、まだ実力行使には早いぞ。目標達成の目途が立っていないのに目立つのは避けたい」
「ん、分かった」
そう言ってかなは大人しく、寝た。別に求めていたわけではないが自分なりに考えて俺の邪魔をしないようにしているのだろう。もしくは、三日間の移動の疲れが出たか。どちらにしても起こす理由はないのでこのままにしておく。
俺たちは今サキュラの最もオレアスに近い都市の検問所を少し離れた、と言うか常人を逸脱した視力で見える一番遠い場所から見ているのだがどうにも正面から入るのは厳しそうだ。検問がそこそこ厳しいようで、きっとかなの正体なんかはすぐにバレてしまう。
だったらかなの言った通り無理やり、と言うのも最悪も場合はありなのだが、どこへ行ったら情報を得られるのかもわかっていない状況で相手を警戒させてもいいことはない。恐らく俺たちが求めているような軍事資料は王都の方にしかないだろうけど、一旦辺境で最低限の情報収集はしておきたい。
何とかして侵入しないとな。
「ま、考えるまでもないけどな。俺たちには転移があるわけだし」
サキュラを覆っているのはかなり高い外壁だ。例えはしごを使って登ろうとしても登り切る前に見つかって降ろされるだろう。ただ、それは物理的な防衛機能しかない。魔法で中に入る分には防げないだろう。
転移を防ぐ魔法ももちろんあるが、魔力感知に引っかかるものはない。少なくとも、かなくらいの精度で魔法を使える者を抑制するのはどうあっても不可能だ。
しかし、寝始めてしまったかなを今起こすのは忍びない。
「たまには、一人でやってみるか。こっちに来てからずっと誰かに頼りっぱなしだった気がするしな」
リリアにかな、ソルをはじめとして俺は今までこっちに来てからのほとんどを誰かと過ごしてきたと思う。重要なことは、大抵誰かを頼っていた。少しは成長したはずだし、誰かに甘えすぎるのも良くない。かなは起きたら念話してくるだろうし、大丈夫だろう。
「よし、行くか」
と言うわけで俺は入国規制のかかった門から伸びる列、を無視して直接外壁へと向かう。俺の魔術・空間でも、これくらい近くまでくれば問題なく壁を越えられる。
「よ、っと」
外壁の上へと転移し、辺りを見渡す。と言っても、分割思考で魔力感知や気配察知を使っているから近くに誰もいないことは分かっている。この分割思考と言うスキルにもだいぶ慣れてきた。そろそろ、本格的に戦闘に活用できるかもしれない。
そんなことを考えながら、外壁の内側に広がる街を見下ろす。
円状にくりぬかれた都市の作りは京都なんかでよく見た碁盤の目みたいな作りになっている。四方に走る通路で区切られた建物たちは石造りで統一されているのか似通った外装をしていた。
「そこそこ広くて、路地なんかも多いな。王都もこんな感じだったら暗躍とかは簡単そう……いや、まあ逃走経路とか考えなくても俺たちは転移で逃げればいいだけなんだが」
そんなことを独りごちってから、街を探索しようかと思ったその時、頭の中にかなの声が響いた。
(司? 何やってるの?)
(ああ、かな。起きたのか? 今から街を見て回ろうと思ったんだが、こっち来るか?)
(……ん。でも、こんなところじゃなくて、早く王都に行こ。早くやること終わらせたい)
(そうか? ……まあ、いいか。確かにまあ、こんなところ見て回っても得られるものは少なそうだしな)
かなからしてみれば、今俺たちがやっているような任務はつまらないものなのだろう。実際、俺からしてみても決して楽しいものではない。俺は使命感でやってるけど、かなは俺がいるから付き合っているだけでこの任務そのものにやる気は感じないのだろう。
俺は街の中へと向けていた足を戻して後ろを向き、転移でかなの下へと戻る。
「それじゃあ、王都に行くか」
「ん、そうしよ」
かなの我が儘も珍しいしな。大きな問題もないし、王都へ直接乗り込んでみるとしよう。
さて、サキュラへとたどり着いた司君たち。次回からはサキュラの王都編です。サキュラと言えば科学技術力、魔術技術術共に優れる先進国で、オレアスに続く二番目の人口を抱える大国の一つです。少し前から亜人の国ミレイヤと不仲が続いていて、ネルなんかも要注意国として見ています。
てなわけでサキュラのご紹介でした。
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