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国王からの依頼

 どうも、またしてもゲームに明け暮れていました、どうもシファニーです。いい加減この挨拶も飽きてきた気もしますが、継続は力なりとかなんとか。続けることできっと真価を発揮します。(そうじゃない)


 第二百十六部、第七章第七話『国王からの依頼』です。どうぞ!

「ネル、ちょっといいか?」

「はい、大丈夫ですよ」


 城の中で寛がせてもらっていた時、俺は帰って来た真の目的を思い出した。リリアが思いっきり甘やかしてくれたおかげですっかり抜けていたが、俺はネルとリリアに戦う準備をすることを提言するために来たんだ。

 廊下で見つけたネルに話しかけると、ネルは優しい笑顔でそう言ってくれ、俺をネルの執務室へと案内してくれた。


 俺はソファを勧められ、ネルは自分の事務机に腰掛けた。


「それで、私に何か言いたいことでも?」

「ああ。一応、俺たちは人間の国の調査、って名目で人間の国に行ってたんだけど、知ってるか?」

「ええ。リリアから聞いていますよ。でも、ここしばらくは妹さんの捜索をしていたんですよね?」

「あ、ああ……いや、それはその」

「いえ、別に責めているわけではないんですよ? それが現地調査に繋がる事にもなりますし」


 仕事さぼってんじゃねえ、って怒られるのかと思ったが、別にそう言う様子ではなさそうだ。


「そ、それならよかった。で、実は旅先で邪神教、って言う集団に会ったんだ」

「邪神教? 数百年以上前に存在した宗教団体の名前と同じですね。その集団が、どうかしたんですか?」

「まあ、紆余曲折あってそいつらのアジトに乗り込んだんだが、邪神に遭遇した。一応ソルとかな、あと、現地で見つけた妹と一緒に討伐した」

「邪神、ですか?」


 俺の言葉を受けて、ネルは右手の甲に顎を乗せて考え込む。悩むように下を向いた視線をそのまま、俺に疑問を投げかけてきた。


「それは、宗教上の概念などではなく、種族としての邪神、と言うことですか?」

「ああ、間違いない。ソルの確認してたし、保証する」

「それは……どうにも言えませんね。しかし、司さんたちに対して邪神を差し向けるような集団ならば、この国そのものと対立することもあり得る、と言うことですか」


 そう言って視線を俺へと戻したネルに、俺は首肯で応える。


「それだけじゃない。この前のサキュラとの戦争の時、勇者が居たよな?」

「ええ。つい先程も、恐らく暗殺を謀ったのであろう勇者が三人ほどこちらに参りました。まあ、隠蔽できていないどころか、子どものかくれんぼよりも程度が低かったですが」

「お、おう……俺たちも、リリアの方で勇者を四人確認した。前回の戦争で三人、今回で七人。普通、一国の軍でここまでの勇者を抱えることは不可能だと、オレアスの王女から聞いた。そこで、邪神教、そしてリセリアルが関わってくる」

「と、言いますと?」

「リセリアルにはここ近年多くの勇者が現れている。そして、それと並行するように行方不明になる勇者が出ているらしいんだ。俺の推測だと、行方不明になった勇者たちはサキュラ側の刺客として使われているんだと思う」


 これに関しては本当にただの憶測だし、それらしい証拠は一つもない。ただ、黒江も言っていた通り勇者が操られていたり、唆されている可能性はかなりある。


「……現時点では何とも言えませんが、もしその話が本当ならば、今後はより多くの勇者が派遣されることになるでしょう。今回の同時襲撃は、恐らく私、そして最前線基地の指揮者、すなわちはリリアと直接狙ったものだったのでしょう。それならば、私たちは個々で十分に対処できます。ただ、もし民を狙われでもしたら、防ぎきるのは難しいでしょうね」


 ネルの言葉はもっともだ。実際、この王城の目の前までは、少なくとも侵入されている。もしそこの街で暴れられていたら、被害は多少では済まないものとなるだろう。幾ら人間寄りの優れた身体能力を持つ亜人たちだとしても、ここら辺に住んでいるのは非戦闘員。勇者相手にまともな戦闘は望めないだろう。

 そうなるとより警戒を強くし、備えて行くしかないが、今のところサキュラが保有している勇者の数が分からない。防衛するにも相手の戦力が分からないのでは戦力が足りなかったり、過剰になってしまう可能性がある。


「ちなみに、以前同盟を結ぶことを約束したオレアスは問題ないのですか? サキュラ、もしくはリセリアルからの襲撃を受ける可能性は?」

「その可能性はあるが、あっちにも優秀な戦力がたくさんいる。なんてったって、数百年人間国最強の軍事国家って肩書を守ってきたような国だ。まあ、余裕がなくなるようだったら最悪俺が何とかする。同盟の提案も俺の責任だ、自分でけじめはつけるさ」

「……そうですか。なるほど、頼もしいですね。ですが、それは無しです」

「え?」


 それなりの覚悟を持っての俺の発言は、しかし優しい笑顔のネルによって否定される。


「オレアスにはこちらから軍を派遣しましょう。どちらにしても、あちら側の状況は常に把握しておきたいので。代わりに、司さんには別の仕事を依頼します」

「仕事を、依頼? 構わないけど……」

「では。司さん、あなたにはサキュラに出向き、情報を収集する、と言う任をお任せします。ただ、こちらとしても戦力を割きすぎるのは好ましいことではありません。出来れば、あなたと、かなさんだけでお願いします」

「俺と、かなだけで?」


 ネルが言っていることは分かる。俺は一応今までに人間の国を二つ回ったんだ。それに、種族的には人間の範疇、と言ってもいいはず。少なくとも、外見的特徴は人間と相違ない。そう言う理由も込みで情報収集を俺に任すのは分かるのだが、俺とかなだけ、か。

 まあ確かに、ソルとルナはもとよりネルの友人だ。あの気まぐれ二人がネルを素直に手伝うかは分からないが、少なくとも自分のテリトリーを守るくらいはするだろう。特にソルなんてのはそう言うのに敏感だ。ネルからしてみれば何かと利用価値があるのだろう。


 リリアは言うまでもない。最前線基地の指揮官で、そもそも後方支援や支援が得意分野。こういうのには向かない。リルも軍事的なことは得意なはずだ。前の戦争でもリリアの協力をしていたみたいだし、うってつけだろう。


 ま、確かに戦争で役に立たなそうなのは俺とかなだけ、ってことだな。


「かなに聞いてみないと分からないが……かなはたぶん、良いって言うな。まあ、最悪、その任務は俺一人でも熟そう。これがこの国の、そしてリリアや、妹のためになると思うからな」

「そうですか。ありがとうございます。こちらは正式な依頼ですので、報酬はご用意しますよ?」

「今更だろ、そんなの。俺はリリアのためになるならそれでいい。それに、体を動かしてるほうが楽しいからな」

「うふふ、リリアは慕われていますね。そう言うことなら、分かりました。それでは、お願いします」

「ああ、承った。早速向かうよ」


 俺はそう言ってソファを立ち、かなを探そうと部屋を出かけたところで、静止がかかった。


「あ、待ってください。最後に一つ、言って置かねばならないことがあります」

「え? なんだ?」


 立ち上がり、こちらに伸ばしていた右手を引き戻したネルは、咳ばらいを挟んでから真剣な顔で言った。


「死んではなりませんよ。あなたはもう、独りじゃありません。ですから、自分の命を軽く見てはいけません。悲しむ者が、沢山いますからね。無事に、帰って来てくださいね」

「……おう」


 ネルの言葉に一瞬唖然とした俺だが、その言葉を理解すると同時、自然とそう返していた。


 そして俺は、かなを探すために部屋を出た。

 と言うわけで再び人間の国へ。おかしいですね。亜人国についてまったく触れません。何なら、まだもう一つ、主要国があるはずです。八章で完結を予定していたこの作品、話数が溢れてそれだけじゃ終わらない可能性が出てきたことを、今ここにご報告いたします。まあ、長く楽しめてお得ってことで。


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