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己の意思

 総合pvが99000を超え、後千で十万pvまで来ました! なろうの作品だとどれくらいの凄さなのかは分かりませんが、自分の中の一つの指標を超えられそうということで大いに楽しみです。次回にまでに突破してくれていると嬉しいな、などと妄想してみたり。

 第二百十二部、第七章第三話『己の意思』です。どうぞ!

「えっと、戻りました……けど、どうしたんですか?」

「ああ、カレラかお帰り。なんでもないから気にするな」


 ノックと共に入室してきたカレラを迎えながら、俺はリルに向けていた笑みをそのまま向けた。


「どうやら、リルは俺のことが嫌いらしくてな」

「む? そんなことはないぞ。我は司殿を好ましく思っている。少なくとも、こうして言葉を交わす程度にはな」

「はいはい、そう言うのいいから。で? カレラはどうだ? 傷の具合」

「えっ、あっ、な、何とか大丈夫です。魔力も戻ってきましたし、リルさんの傷も今治しますね」

「すまない」


 戻って来たカレラはこちらの街で買ったものだろうか、貴族が着るような華やかなものではなく、街で見かける女性が来ているような庶民的な服を着ていた。まあ、それでも似合うのだからカレラの美貌は万能だな。

 そんなカレラの肌の傷は癒えており、確かに元気そうにしている。魔力と生命力もそこそこ回復しているようだし、もう心配することはないだろう。


 カレラは回復した分の魔力を使ってリルの傷を癒して、次に俺へと頭を下げてきた。


「司さん、ありがとうございました」

「え? な、何がだ? 何かしたか?」

「いえ、その。こうして、と言うか、私を連れだしてくれたことを、です。今日、私は前までのように引き籠っていたら体験できなかったであろう貴重な経験をたくさんさせてもらいました。確かにその手助けはリルさんにしてもらいましたが、司さんにもしっかりお礼を伝えておきたいんです。もちろん、ソルさんやルナさん、かなさんにも。……って、あれ? そう言えばかなさんは? 妹さんも、一緒じゃないですか?」


 一通り感謝を述べ、辺りを見渡したカレラはそんな疑問を口にした。が、俺はすぐに答えるのはやめて気配察知に引っかかった姿が扉の前へ着くのを待った。

 そして、扉がノックされた。


「えっと……」

「出てくれるか?」

「分かりました。はい、ただいま……って、かなさんとクロさんでしたか。お帰りなさいませ」

「やっほー、ただいまだよ」

「ん、ただま」

「おう、二人ともお帰り」


 カレラの応答に応えて部屋へと入って来たのは満足顔の黒江とかなだ。これでこの部屋には六人と一匹、流石に手狭に思えてきたな。


「って、みんないるんだ。今日はもう遅いけど、せっかくだしどこかでご飯でも食べる?」

「んー、みんな疲れてるし、また今度にしようぜ。カレラたちも、遠出してきたらしいしな」

「そうなんだ? じゃあ、またにしよっか。お兄ちゃん、私は宿に帰るけど、どうする?」

「俺は少し今後について話し合ってから行きたい。先に行っててもらえるか?」

「分かった、それじゃあ、みんな、また今度ね!」


 黒江はそれだけ言うと部屋を出て行ってしまった。


「うむ、上手く言いくるめたな」

「その言い方辞めろ。俺だってよくさらっとお別れ済ませるなと思ってたんだよ」

「それで、理由を聞いてもいいかしら? 別にあなたたち仲悪かったわけじゃないんだし、普通にお別れしても良かったんじゃない?」


 黒江を見送った後の俺に、リルとソルはそう言って声をかけてきた。

 それは、先程魔術・精神で決めたことについて。黒江が来てから、その顔を見てから咄嗟に考えたことだった。


「司、くろ、置いていくの?」

「置いていくんじゃない。少しだけお留守番してもらうだけさ」

「何が違うのか、妾には分からないかの」

「そりゃそうだ。ただ、あんまり黒江の前で話をしたくない。分かってくれとは言わないが――」


 どこか不安そうな表情を浮かべるかなが俺の服の裾を包み、ルナは目を伏せ我関せず風かと思ったが、そう声をかけてきた。そしてそれに応える俺の言葉を、カレラが遮った。


「――分かります。分かりますよ、もちろん。大切な家族の前で自分でも納得しきれない事をやろうとするって、本当に心苦しいですよね。父を見ていたら、分かります」

「……そうか。ありがとな、カレラ」

「いえ。本当に、司さんの気持ちは理解できますから」


 どこか苦しそうに目を伏せ胸元で手を握るカレラから視線を外し、俺はソルの方へと向いた。


「……何よ」

「また、お前の嫌いな戦争が起こるかもしれない」

「分かってるわよ」

「それで、いいのか?」

「……いいかどうかを決めるのは、私じゃないわ。あくまで私は、司についているだけの他人にすぎない。司は結局ネルの部下ってことになってるんだし、私に聞く必要なんてないわよ」


 いつもの素っ気ない雰囲気ではない。しかしどこか突き放すような口調に俺も申し訳なくなるのだが、ソルの言う通り俺のやるべきことは端から決まっている。


「今回の邪神教の件を受けて、俺たちは真の意味で邪神教と言う人間の集団を敵対組織と考えて対処することを、リリアとネルに提案する。前回のサキュラとの戦争は第三者の介入で有耶無耶になったが、戦敗を公表してないってことはまだ続けるつもりがあるのかもしれない。だからこれは先手を打つための対策だ。この事をアリシアたちとも共有して対応に当たってほしい。それに、オレアスの立地だとリセリアルに残っているだろう邪神教の連中とサキュラとで挟み撃ちになるからな」

「はい、分かっています。この事は、必ず伝えます」

「リル、これでいいと思うか?」

「ま、及第点であろうな」

「……そうか、ならいい」


 確認を終え、再び口を開いた。ただその声は、自分でも思わぬほどにどす黒い声だったように思う。


「こっから始まるのは本気の殺し合いだろうな。気を引き締めてかからないと死ぬのは俺たちだ。ま、どちらにしても黒を傷つけることになるだろうし、せめて言い訳できるように俺なりの信念に従うことにする。賛同する者はついて来てくれ。最悪、俺一人でも全部やるから」


 扉へと足を向け、一歩踏み出した。背後で動き出す気配は、五つ。本当に、俺は仲間に恵まれてるな。


「これ以上生温いこと言うのは無しだ。甘え無くして戦うことにする。だから悪いな、黒。俺は行くぞ。俺を救ってくれたリリアのためにな」


 その時、俺の瞳に映っていたのはリリアの姿だった。そう、それは確かなのだ。ただ、どうしてだろう。俺が魅了されるそれは、どこか俺の知るリリアの姿とは違っていた。


 そんな違和感を抱えながらも俺たちは、俺の発動した転移魔法でその場を後にした。

 どこか不穏な空気を漂わせようとした司君でしたが、どうだったでしょうか。ここから始まるのは本当の戦争、と言うことでバンバン戦闘シーンを! ……書けるかどうかは怪しいけど極力頑張りますので今後とも応援よろしくお願いします!


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