強き者の使命
どうも、シファニーです。総合pvが98000を超え、作品合計文字数が60万を超えました。いやー、頑張りましたね。ま、まだまだ完結には程遠いのでこの調子で頑張っていきます!
二百十一部、第七章第二話『強き者の使命』です。どうぞ!
「目覚めたというのなら、目覚めた力を自分なりの正しさに使う、それがいいと思うわよ」
カレラが突如力に覚醒したことをどこか自分事のように嬉しく思っていると、どこかつまらなそうな表情を浮かべたソルが両腕を組んでそう言ってきた。
「私たち原初の魔獣は確かに世界の均衡を守るという天命を持って生まれたわ。でも、それは曖昧過ぎて、それこそ漠然で掴みようがない使命。こんなもの、与えられた役割とは到底言えないものだわ。それでも私やルナ、ネルは自分なりに解釈してやりたいようにしてきたの。たぶん、私含めその選択を後悔なんてしていない。だから、そうね。力を得たのなら得たなりに頑張ってみなさい。自分に合った頑張り方でね」
「まさしく、ソルの言う通りかの。この際、力ないものなんてどうでもいい。力あるものは力に見合うだけの権利を持ち、自分の思うがままに生きてよい。それが宿命であり、使命でもあるかの。力を持て余すこと、そして、力を無碍に扱うことは、この世では愚行としか言えないかの」
「そうね。最初から考えるまでもないの。その力が生まれながらのものにしても、後から得たものだとしても、関係ない。力があるのなら力を使う。それを出来る限り信念を持ち、より大いなる力に阻まれないようにね。それが賢い力の使い方。ま、正しい力の使い方については私の口からは言えないわ。それは、自分で決めることだからね」
ソルはそう言って、俺の顔を覗き込むように前のめりになり、小さく微笑んだ。
「それが私の、目指す道と違えないことを願っているわ」
右目を閉じ、愛らしくウインクをした後で顔を背けて離れて行った。
「まあ、せいぜいもっと考えてみるべきね。ちょうど、同じ境遇の仲間が見つかったんだしね」
「それも、そうだな。ありがとな、二人とも」
「この程度、何でもないわよ。先輩からのアドバイスってやつよ」
「気にすることはないかの。妾は退屈させてもらえない、その礼かの」
そう言って、二人は俺から興味を無くしたように各々に好きなことを始めてしまった。ま、元よりこういうやつだ。
一瞬感動しかけただけに落胆を覚え、小さく肩を落としてから振り返る。そこには、どこか真面目な顔を浮かべているカレラと、床に伏せて目を閉じているリルがいた。
「で? 二人はどうする? 傷だらけだが……とりあえず、カレラは着替えてきたらどうだ? 傷なら、魔法でどうとでもなるけど、服は治せないからな」
「そうですね。それじゃあ、着替えてきます。リルさんも、安静にしていてくださいね。魔力が回復したら、私が魔術・治癒で治療しますからね」
「……む? うむ、待って居よう」
リルは僅かに細目で覗き、力弱くそう言った。どうやら、本当に弱っていたらしい。ま、心配するまでもないだろう。だってこいつ、死んでも死ななかったし。
カレラが部屋を出た後、俺はリルへと声をかける。
「で? どんな無茶やったんだ?」
「ふっ、無茶をしたのは我ではない。カレラ嬢だ。彼女は特別だよ、司殿と同じくらいにはな」
「俺と同じくらい? ……それ、特別なのか?」
「何を言う、それはそうだろう。司殿が特別でないのなら、我は平凡な人間に負けたのか? 神もまた、平凡な人間に負けたというのか? そんなわけがない。我が敗れ、リリア嬢が認め、ルナが、ソルが、ネルが司殿に魅入られたのも、司殿が特別だからだ。だからこそ命を賭け、立ち向かい、成長してきた。先程ルナに聞いていたな? 力あるものが何をするべきかを」
リルは伏せながら目を細めたまま言った。
「ルナとソルは言ったな。力ある者は力を使うべき。それが己の信念に沿うように。それでいて身を滅ぼさぬように。それは真なる強者の賢き選択なのだろう。しかし、我とて所詮は一介の魔獣。これほどの力を得るにはそれなりの時間を要したものだ。だからこそ少なからず司殿の意思を理解できる」
「……それで、何が言いたいんだ?」
「力は使うものでも得るものでもない。試し、己を誇示するものだ。より高め、鍛えるものだ。忘れるな。ルナとソルの言った力の在り方は賢き者のやり方だ。司殿は決して賢くない。だからこそ、賢く生きようとなどしてはいけない。肝に銘じておけよ」
「それ、馬鹿にしてるのか?」
「どちらかと問われたら馬鹿にしているな」
そう言って微かに笑ったリルに、俺は肩を落としてため息をつく。結局、こいつは何を言いたかったんだろうか。何となく理解できたような気がして、理解できていない。こいつは時々訳の分からないことを言う。
これが俺の理解が追い付いていないだけなのかこいつがおかしいのかは分からないが、一つ言えるのはこいつが意味の分からないことを言う時は大体俺のことを本当に案じている時だってことだ。
「しかし、馬鹿であることは悪いことではないぞ。馬鹿であればあるほど、人は特別になれるのだ。なぜならば――」
続いてリルの口から放たれた言葉に、無干渉を貫いていたソルとルナも視線を集めたのを感じた。それは、己の非力を認め、そこから立ち上がって来たものだからこそ言えるのであろう、弱者の一言だったように思う。
そうして俺もまた、この一言でリルの言わんとすることを理解した。
「――賢さは正しさの証明であり、正しさは何かに倣う行為だからだ。それが出来ないからこそ、それをしないからこそ馬鹿は特別となり、賢き者を超えるのだ」
「……要するに、馬鹿にしてるんだな」
「ふっ、ああ、その通りだよ。我は司殿の事を馬鹿にしている」
リルの浮かべた笑みの裏には、確かに俺のことを認めているような意志を感じられた。
本日二度目の更新ですが、まあ、昨日更新できなかったのと今日が休日ってことで暇だったから書いた、って感じです。ま、そんなことはどうでもいいですね。
『推しの子』の興奮が冷めないので、少しだけ。第二話も視聴したんですけど、これからの展開を想像させない、かつ伏線の張り巡らされられた一話でしたね。たぶん、本当なら第一話でやるような布石を、第一話をプロローグにしてしまったために第二話でおいているんだと思いますが、第一話無しでも楽しめる、は言い過ぎですけど第二話だけでも期待値高まりまくること間違いなしで、ネットで騒がれるのも納得です。あ、これ少しじゃ終わらない。
ってわけでまた!
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