表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

207/352

不死鳥

 お久しぶりです、シファニーです。今回は執筆が乗りに乗ったので久しぶりに自分で読んでて気持ちがいい仕上がりです。……いや、やっぱりそこそこです。ハードルは過度にあげないもの。と言うわけで


 第二百七部、間章第七話『不死鳥』です。どうぞ!

「私を導いてください、不死鳥フェニックス!」


 もとよりこの能力は、私に宿った潜在的なものだと学者が言っていた。後天的に得たものではなく、先天的に得た才能の一つである、と。

 私、カレラは武術や文学、礼儀作法など一通りの才能を持ち合わせている、と思われている。しかし、それは真実ではない。ただ、間違っている、と言うことも出来ないだろう。私は一度やったことがある事ならば、大抵の事は苦労をしなくても出来る、が正解だ。

 このある意味での才能を疎んだことは幾度とあった。


 自身にとっての普通を無意識のうちに他人に押し付け、忌み嫌われ嫌煙され、いつしか私は孤高の存在となっていた。決して自分自身の力に溺れていたつもりも、天性の才能を誇っているつもりもなかった。しかし、私から発せられる悪意無き悪意は、私を孤独へと押しやった。

 先人からは確かに認められ、それを称えられることもあっただろう。しかし私が望んだものは、そうではなく、友人と、そして仲間との関係性。大貴族の生まれ、文武両道、品行方正。そんな、賞賛のような軽蔑の言葉の数々は、少しずつ私を蝕んだ。


 そんなとき、彼が現れた。司、と名乗った青年だ。父の一大事を救った、恩人であったらしい。しかし、父の一大事を救った、と言ってもある意味での死からの救出でしかなく、真の意味での救いではなかった。

 出会ったその瞬間、私は彼を恨んだ。どうして父を助けてくれなかったのか、どうしてあなたが父の責を背負わなかったのか、と。しかし彼は、そんな私を許してはくれなかった。


 表面上に張り付けられた私の怒りの感情は、彼にとっては些細なものだったのだろう。すぐに、私の心の奥底にくすぶっていた感情を刺激して、私の重いと思い込んでいた腰を引っ張り上げた。別に、そんな姿勢に焦がれたわけではない。

 ただ、それから体験した彼との奇妙な日々が、奇怪な体験が、そして、彼自身の摩訶不思議さが、私を奮い立たせ湧き上がらせた。そう、私はやっと、彼のおかげで自分自身を体現する術を得た。


 真の意味で、仲間を得たのだ。


「私の中に眠る焔の灯よ、不滅の欠片よ、どうか、私の声に応えて!」


 だから、決めた。この人の、仲間でありたいと。この人の、隣に立ちたいと。

 それがたとえ魔獣であったとしても、人外の生物で、場合によっては敵対種族に成り得る相手だとしても。私は願う、(リル)の隣に、立ち続けることを!


「どうか、お願い!」


 目の前まで迫ったファントムに向ける私の槍は、震えない。私の体に、恐怖はない。ただ、ただ、それを信じて立ち向かう。私の中に眠る、別の誰かに。


 私が危なくなった時、必ず助けてくれる誰かに。どうか、私が、彼の隣に立ち続けられるように、力をください。


《その願い、聞き届けましょう》

「え?」


 不意に、脳内に声が響いた。それは炎のように揺らぐ、柔らかく、温かい声だった。それでいてどこか自分自身の声を聴いているようだった。

 思わず零れた驚きが隙となり、ファントムはその羽を私へと振るった。


 でも大丈夫。私には今、同じ願いを抱く、頼もしい仲間がいるのだから。


「『《不死鳥(フェニックス)》ッ!』」


 全身が燃え上がるように熱くなる。全身を覆うように淡い炎が揺らぎ、私の身を守る。私に触れようとしたファントムの羽は、一瞬にして焼け焦げ、灰となって崩れ落ちた。

 力が、湧いてくる。


「《魔術・炎鳥:不滅の永炎(フェニックス)》」


 全身から、そして、私の心から湧き上がる情熱は。私を覆う真っ赤な炎は、一点へと集い、槍の先へと灯った。そして湧き上がる力のそのままに、私はファントムへと駆け出した。


「これが私の、私たちの、力です!」

「%Q#!&$*'>#%#$”ーー!!」

「なっ!?」


 踏み込んだ私の間合いの外に、ファントムは一瞬で逃げ出した。遥か上空へと飛び立ち、ダンジョンの天井部分へと逃げ込んだ。私の槍では到底届かず、魔法で追撃をかけようにも躱される。そして何より、空中に漂うファントム目掛けて飛び跳ねた私は、着地するまで無防備だ。あの俊敏性で背後に回られ、全力の攻撃を放たれたらまた先程の様に防げる保証などない。

 

 自分の詰めの甘さを呪いたくなる。得た力に興奮し、相手の全力を把握しきれていなかったなんて。


 そんな後悔が脳裏を過るよりも先に、私の隣を駆ける者がいた。


「《司水者》」

「あっ!?」

 

 私の纏っていた炎が水へと変わり、私の前へと躍り出たリルさんの体を纏う様に回る。続いてリルさんから無数の影が飛び出して、ファントムの体を拘束する。しかし、脆い。

 一瞬にして弾かれ、ファントムは再び自由に、なったと思われた。


「甘い! 《司水者》ッ!」


 散り散りになった影は水となり、ファントムの体中を突き刺した。


「ふっ、この攻撃は通ると、先程確認したばかりだ! 食らうがいい、これが、狼王の力だ! 行け、大いなる奔流の傀儡よ! 《暗黒海洋・絶封》ッ!」


 リルさんを纏っていた大量の水が束となり、渦となり、囲いとなって、ファントムを覆う。中で一瞬紫色の輝きが止まったと同時に水は散り、そして、ファントムの姿も消えた。


「ファ、ファントムが!?」

「まだだ、下に構えろ!」

「は、はい!」


 リルさんの声に応えて空中で勢いを失い、落下を始めた体を下へと向け、槍を構えなおす。

 それとほぼ同時、紫色の光が光ったかと思った直後、空間が割け、ファントムが飛び出してきた。リルさんの攻撃を掻い潜り、逃げてきたのだろうか。


 私から見ても、先程のリルさんの攻撃は完璧だった。あれでもまだ、倒せないなんて。

 でも、ファントムはリルさんの攻撃の反動だろうか。動きが鈍い、動き出しがまだで、こちらを見てもいない。やるなら、今しかない!


「そこだ! カレラ嬢!」

「はい! はああああぁぁぁぁ!」


 体が落ちる勢いそのまま、私はファントムへと槍を向け、力いっぱいに振り下ろす。その寸前、リルさんの影か何かだろうか。私の背中を、強く押してくれた気がした。

 おかげで、私は――


「くらええええええええぇぇ!」

「@¥(*”>*‘!#%”%)=|=‘!&&(%$ッーーーーーーー!!?」


 最強へと、手が届いた。


 私の突き立てた槍は確かにファントムの背を捉え、勢いそのまま体を割いた。着地と同時に、止めとばかりに槍へと全身全霊の炎を籠めて、振り払った。


 瞬間、ファントムの体は燃え尽きたかのように崩れ落ち、ほんの少し吹いた風によって散った。


『見事……不死の王よ。そして、その仲間たちよ』


 塵となり、消えゆくファントムの結晶に触れた。それは透き通り、何者でも映し出すかのように美しく、儚かった。そんなファントムの心に、触れた気がした。


 ついに、私は認められたんだ。先人に、ではない。


 この世の最強に、最も憧れる存在の、その仲間である、と。その仲間として、相応しいんだ、ってことを。

 そう言えば、ついに『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』を一期、続、完とすべて視聴し終えました! OVA? この後書きを書きながら現在進行形で見てます。今OP。

 まあそんなことはどうでもよく、きっといつみても最高に面白いラブコメなので、いつか自分が書くラブコメの参考に! ……書けるかな?

 と言うわけでまた!


 ブックマーク登録、いいね、評価、感想等頂けると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ