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心変わり

 どうも、二日休んだシファニーです。なんだかんだ言ってやっぱり連日更新は難しい、と改めて思った次第です。

 第二百六部、間章第六話『心変わり』です。どうぞ!

 駆け抜ける戦場の中、両脇には続々と眷属たちが姿を現していく。意のままに動く駒たちは、我の姿を隠すように縦横無尽に駆け巡る。闇を駆り、表を見せぬ影狼の本髄へと至った今の我を捉えることは、もうできぬ。


「%Q#!&$*'>#%#$”ーー!!」


 響き渡る咆哮。我らすべてを掻き消すようなそれさえも、裏を統べる我からすればむしろ好都合。散り散りになる眷属たちに紛れ、我はファントムの懐へと入り込み、三体の影分身を召喚する。


「《司水者》」


 僅かに浮かぶファントムの下、生み出された三体の影分身体はファントムの視界に映ると同時に水となり、鋭い針を形作ってファントムへと突き刺さる。

 右翼へと突き刺さった三本の水の槍はファントムへと確かなダメージを与え、苦しみの悲鳴を上げさせた。暴れまわり、自身の周りを駆け回る狼たちを振り払うように両翼を振るって払い除ける。眷属たちは触れたそばから取り込まれるように消え去り、触れずとも風圧で壁へと叩きつけられる。


「流石はダンジョンマスター、と言ったところだな。我が眷属たちでは牽制にすらならないか」


 再び影へと入り込み、その姿をくらませ笑う。視界の端に映るカレラ嬢に気を配りつつ、何度も同じようなことを繰り返す。全盛期のような豊富な攻撃手段は持ち合わせず、強化されたはずの物理攻撃もファントム相手には通用しない。

 唯一使える攻撃手段と言えば、魔力を変換することのできる司水者のみ。しかし、この唯一無二且つ強力な能力一つあれば、幾らダンジョンマスターであろうとも相手取ることは可能だ。


 眷属たちの魔法や自身の影分身体を水に変換し、攻撃する。ファントムが強力な魔法を一つでも使ってくれれば反撃できるが、相手にその様子はない。


「相手の方が我より勝り、その上相性でも後れを取っている。しかし、たかがそれだけの事。何、負けはしないさ。今の我は、何も正面から戦うことしか知らぬあの頃とは違う。もう二度と、ダンジョンマスターに後れは取らない。これはすでに、掃討戦だ」


 より攻撃を加速させ、地道に、しかし確かにファントムへとダメージを蓄積させる。

 入り乱れる水の槍はその数を増し、四方八方から攻撃を仕掛ける。眷属たちの数は減らされようともまた召喚しを繰り返し、一定数を保っている。魔力は尽きぬように回復量とを考え消費する。全盛期の力を失い、ダンジョンに引き籠る様になってから使うようになった小賢しくとも堅実な戦法は、影狼となったことでより確かとなった。


「このまま、倒し切れれば楽だが……そう簡単にいくものでもなかろうな」


 これは不安ではなく経験からの確信だ。確かに今は我が押しているように見えるかもしれないが、ダンジョンマスターの真の力はこの程度ではない。ああ、間違いなく。

 

 その瞬間、確かに視線を外すことがなかったからこそ見逃さなかったそれを、眷属の銀狼によって防がせ、自身も現場へと急ぐ。


「きゃっ!?」


 目の前に迫った禍々しい爪型の波動を前に、カレラ嬢は両手を前にし両目を塞ぐ。そしてその斬撃がカレラ嬢を襲う寸前、銀月を発動した銀狼が現れ……その身を犠牲にして攻撃を防いだ。


「ッチ、司水者も効かなかった。魔力を要しない術だとでもいうのか?」


 一瞬固まり、隙が生じたカレラ嬢の襟元を咥えてひとっとぴ。ファントムの体当たりを躱して距離を取り、眷属たちに時間を稼がせる。

 カレラ嬢を床へと放し、ファントムへと視線を向けながら声をかける。


「無事か? 立ち上がれぬなら、無理はせずに……カレラ嬢?」


 反応がなく、気配察知にも動きを感じない。不思議に思って直接確認すると、カレラ嬢の胸元には何やら禍々しい断面をした傷がった。


「うっ、うぅ……」

「なっ!? 先程の攻撃を防ぎきれていなかったのか!? 直撃は免れたように見えたが、あの術が何かも分かっていない。治癒魔法で、どうにかなるとも思えぬが……」


 胸元にある傷は大きな切り傷のようにも見えて血の一滴も垂れていない。その断面も人のそれではなく、ファントムの体を覆うような禍々しい黒の渦巻くようなものになっている。どう見たって特殊攻撃であり、どのような効果があるのか、想像もつかない。


「即死していないだけまし、と言ったところか……ッチ、ここは一旦引き上げて、ルナの下へと――」

「待って、ください……」

「む?」


 背後を警戒しながら決心し、転移をしようとしたその直前、カレラ嬢は僅かに体を動かしながら我へと腕を伸ばし、背中へとおいた。


「おい、無理をするな。どのような状態かもわからぬ、無駄に体力を消耗すれば、命を削るのと同義だぞ!」

「いえ……まだ、戦えます」

「しかし――」

「まだ、戦えるんです。戦わせてください」

「っ!?」


 その瞳には、強い意志があった。死にかけの人間共が今まで浮かべてきたやけくそ染みた戦闘意欲ではなく、はたまた、生存本能に従ったそれでもない。自らの意思の籠った、その瞳。一度だけ、以前に一度だけ、見たことがあった。

 だからこそわかる。カレラ嬢はまだ本気で戦うつもりでいるのだ。それだけではない。勝つつもりでいるのだ、ファントムに。


 その体を震え上がらせるようにしてゆっくりと起こすカレラ嬢の表情は苦しそうに見えて、闘志に溢れているようにも見えた。ふらつきつつ、何とか立ち上がるその過程を、我はただ見守ることしかできなかった。


「もう、見ているだけなんてことはしません。私が……いえ、一緒に、あいつを倒しましょう」

「……ああ」


 強い決意と覚悟、真意に向き合った顔つきで言うカレラ嬢に我は可能性を見出していた。彼女なら、カレラ嬢ならば、本当に――


 かつての旧友のような情熱を、今の主のような奇跡を、体現してくれるかもしれない、と。

 

 ここ数日は不思議と小説に真摯に向き合う気力が湧かず、こんなモチベーションで書いても碌なものにならないと思い、お休みさせてもらいました。今までもこんな感覚になったことはあり、それでも無理やり投稿していた時期もありました。ただ、そう言った時に更新しても碌なことにならないと分かった私は、しっかりを休養を取る様になりましたとさ。落ちはありません。


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