ダンジョンマスター
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第二百四部、間章第四話『ダンジョンマスター』です。どうぞ!
大量のファントムを攻略した後、さらに奥へと進んで行くとそこには天井まで覆う巨大な扉があった。金属質のそれは人ひとりで動かせるようには見えず、何人たりとも侵入を許さない、そんな気迫すら感じた。
「こ、これって……」
「どうやら、ダンジョンマスターの間まで来てしまったようだな」
正直言って、まさか、と思った。このダンジョンはずっと攻略されてこなかった最高難易度クエストの対象だ。そこまで危ない場面も無かったし、こんなことでたどり着けるような場所ではない、と思っていたのだが……。
「しかし、そう言うことか。我も、段々とダンジョンとやらの本質を理解してきたかもしれない」
「本質、ですか?」
「ああ。ダンジョンとは、世界各地に存在する試練の場だ。各地、ダンジョンマスターが存在し、それらが従える眷属がいる。これは知っているな?」
「はい」
目の前の扉を見上げながら言うリルさんの言葉に、耳を傾ける。
「つまり、実際のところダンジョンとは他人を寄せ付けない要塞ではなく、弱者が己を鍛えるための試練の場なのだ。ダンジョンマスターを討伐することを目指すのではなく、その眷属との戦闘の中でより強くなるための場、と言うことだな」
「なるほど……だから、ここまでの道のりではそこまで強い相手は来なかった、と言うことですか?」
「そうなるな」
少し間を開けてから、リルさんは言った。
「ダンジョンマスターの役割とは、試練の場の管理。本来、この世界の住人が挑むような相手ではないのだ。だからこそその強さは想像を絶するもので、千年以上もの間、その存在が続いているものがほとんどだ。しかし、そんなダンジョンマスターすらも攻略したのなら、それは神に認められる力の持ち主、と言うことになるのだろうな」
「つまり、ダンジョンマスターはダンジョンの攻略に含まれていない、と言うことですかね?」
「ああ、恐らくな。よって、早急にここから立ち去るのが妥当な判断なのだが、どうする?」
そう聞いてきたリルさんの口元は、どこか弧を描いているような気がした。どこか私を納得させるような物言いだと思ったが、最終試練を前にして私を諦めさせる魂胆だったようだ。でも、本人も分かっているのだろう、今更私を止める者はいない、と。
「行きましょう、前へ。私の力はまだ、試せていません」
「そんなことだろうと思っていた。何、安心しろ。もしもの時はこの体を犠牲にしてでも、守ってやろう」
「ありがとうございます」
頼もしい言葉を受け取ってしまった。もう、本当に引くことは出来ない。
もし、私とリルさんがこんなところで死んでしまったら、司さんはどう思うのだろうか。何か思ったとして、どんな行動をするのだろうか。そんな不安も、脳裏をよぎるけれど。今はそれ以上に、自分を試してみたいと思えた。頑張りたいと、思った。
その決意と意思を右手に込めて、私は今、扉を開いた。
「%Q#!&$*'>#%#$”ーー!!」
それと同時、筆舌に尽くし難い咆哮が聞こえると同時に、まるで、この世のすべてを詰め込んだかのような巨大な異形が視界に映りこんできた。それは大まかには蝙蝠のようなシルエットを保っているが、体の隅々にまで凹凸や球、人工物としか思えない瓦礫のようなものや木々の形をした骨格など、尋常ではありえない姿を前面に晒していた。
この異形を前にして、私は真に強敵を目の前にしているのだと認識できた。私はこれから、こいつを倒すのだ、と。
「ほう、これがここのダンジョンマスター、か。このような姿をした生き物は、見たことないな」
「これも妖魔、なんですよね?」
「ああ、この世のすべてを取り込んだ、とでも表現すればいいのか、到底信じられない外見をしているが、それこそが妖魔の真髄だ。すべてを取り込み、自分のものとする。その先に力が、自身の生があると信じて。こいつはまさしく、妖魔、ファントムの王だ」
「やはり、これが……」
もっと威厳があって、威風堂々とした外見を予想していた私としては拍子抜けだが、これはこれで破壊者、と言った感じで威圧感がある。化け物、とひとくくりに出来ないほどの何かを、やはり持っているようだ。
脳がない敵なら何とかなることもある。しかし、目の前のそれはそう簡単にはいかないだろう。
「我が前衛を務める、カレラ嬢は攻撃を受けぬように徹して――」
リルさんが先行し、振り返ってそう言っていた途中、今まで空中に漂っていたファントムが姿を消すと同時にリルさんの目の前に現れ、その薄く大きい羽を振るった。
「後ろ!」
「むっ」
私の呼びかけに応えてか、それとも気付いていたのかリルさんはファントムに向き直るも、その羽に覆われ体を打たれた。
「リルさん! ……って、あれ?」
「ふっ、そう焦るでない。この程度の事ならば、対処は出来る」
と思っていたのだが、ファントムの羽が振り切られた後、リルさんはそこに健在であった。どういう理屈かは分からないが、到底躱せないと思った攻撃を、いとも簡単に躱してしまったらしい。流石はリルさん、と言ったところだろうか。
「しかし、不意打ちとは礼儀がなっていないな。礼儀知らずには、仕置きが必要だ。そうは思わんか? カレラ嬢」
「ええ。行きますよ!」
「ああ」
どこか悪戯っぽい笑みを浮かべながら余裕ありげに言うリルさんに、私も勇気をもらった気がした。槍を構え、ファントムへと鋭い視線を向ける。試練が今、始まった。
間章も四話目と言うことで、この章の意図を説明させていただきます。司君たちと同じ時間軸でカレラさんたちがダンジョンに挑み、その中で成長する過程を描くこの章は今後の物語に関わるかどうかはともかくいくつかの伏線回収を目的にしています。なので、どんな伏線が回収されるのか、そもそも、伏線なんかを張れる作者だったかを考えながら楽しんでくれると嬉しいです。
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