カレラの戦い
総合pv93000突破しました、どうもシファニーです。
今回からしばらくはサイドストーリーと言うことで、よろしくお願いします。
第二百一部、間章第一話『カレラの戦い』です。どうぞ!
司たちが薬草採集のクエストに出かけた頃、暇を持て余したカレラがルナの下を訪れていた。
「失礼します」
「ん? 何か用かの?」
「いえ、退屈してしまいまして。ご一緒に、冒険者の依頼をと思いまして。……あれ? ソルさんはどちらに?」
部屋を見渡すも、ソルさんの姿は見当たらなかった。
「出掛けたかの。なんでも、司殿やかな嬢が心配らしい。と言っても、どうせソル自身が司殿の近くにいたいだけかの。どうにも、ソルは司殿を良く気に入ったらしいかの」
「なるほど……それじゃあ、ルナさんはどうですか? あと、リルさんもいる、んですよね?」
「妾は……やめておくかの。妾が出向いては、カレラ嬢の出番が無くなるかの。リルはどうする?」
「む、そうだな」
ルナが問うとルナの影からリルがにょきっと出てきた。
「わぁ!? び、びっくりした……」
「ああ、すまない。驚かせるつもりはなかった。しかし、依頼か。カレラ嬢を一人にしては何かと問題があるだろう。同行させてもらう」
「ありがとうございます」
「何、礼には及ばぬさ。ではルナ、行ってくるぞ」
「分かったかの」
「では」
そう言って背を向けたと同時、背後で気配が一つ減った。そのことを確認してから、私はギルドへ向かった。
「ダンジョン探索、時間がかかりそうですけど、良かったんですか?」
「問題はあるまい。どうせ、司殿は今妹の相手で忙しい」
「そうですね、妹さんと仲良さそうだしたし、再会できて良かったです」
「喜ばしいことに違いはない」
リルさんと並行しながら向かうのは、リーゲンから少し離れた場所にある、以前行ったのとは別のダンジョンだ。ダンジョンマスターも攻略されておらず、モンスターが好き放題に出現しているため滅多なことがなければ冒険者は立ち入らないが、私くらいの実力があれば探索くらいはさせてもらえる。
ギルドとしても情報が欲しいのだろうし、探索で得た戦利品はすべてこちらのものとして、収穫によっては報酬もくれるという。暇つぶし、と言っては何だが遊戯程度の感覚で受けた依頼で思わぬ報酬を得られるかもしれない。そうしたら、司さんたちの助けにもなるかな。
「それより、カレラ嬢こそ大丈夫なのか?」
「え? 私ですか?」
「ああ。これから向かうのは天然のダンジョンだ。攻略難易度は冒険者ギルドで指定されている中で最高だと言う。カレラ嬢の実力がない、と言うわけではない。ただ、ダンジョンはそれ以上の脅威、と言うことだ」
リルさんは、優しいと思う。以前冒険を共にしていた時、司さんの体を借りて私と接していた。その立ち振る舞いや物言い、雰囲気にどこか惹かれたことはあったけど、それとは関係なく、客観的に見て。
彼のすべてを見てきたわけではないし、分かっているつもりもないが、どこか信じていい、って確信が私の中であった。何なんだろう、この感覚は。これが恋だというのなら、それはそれで分かりやすいのだけれど。
「いえ、大丈夫ですよ。何も、ダンジョンマスターに挑もうというわけではありませんし。無理だと思ったら、逃げるくらいは出来ますよ。なんたって、私には不死鳥の力がありますから」
「不死鳥、フェニックスか」
「ええ」
私に宿る不思議な力。死んでしまう、そう自覚した時だけに起こる、その力。
私がはじめてその力に気付いたのはまだ小さい子供の頃。家の用事で出掛けた時、一人はぐれて森へと迷い込んでしまった。魔獣に襲われ、傷だらけになり、もうだめだと思った時、不死鳥は舞い降りた。
私の身は炎に包まれ、魔獣たちを焼き払い、森に少なくない被害を与えてしまったが、おかげで私は生き残り、こうして生活している。森の被害も家の力で何とかしてもらったけど、本当に申し訳ないと思っている。
それからずっと不死鳥が舞い降りることはなかったが、この前の武闘会で、負けそうになった私を救ってくれた。そして改めて理解したのだ。私の持つ、力について。
「この力があれば、簡単には死にません。リルさんもいますし、平気です」
「ふっ、我をあまり頼られても困るのだがな。我自身は到底、ダンジョンマスターに及びはしないのだから。しかし、頼られているからには仕方ない。全力を尽くそう」
「ありがとうございます」
なんだかんだ付き合ってくれるリルさんにも、私と同じような感覚が渦巻いているのだろうか。それとも、司さんの、少なからず関係のある私を放っておけないという責任感なのだろうか。
もしそうだとしたら、少しだけ、嫌だなぁ。
「あ、見えてきましたよ。あれです」
「ほう、こんなところに。モンスターもちらほらと見えるな。準備しておけ」
「はい」
遠くに見えた小高い山のその麓。遺跡のような構造物が小さく見え始めたその周りには、異形の魔物が多数見えた。
確か、名前をファントム。妖魔、と呼ばれる悪魔の一種で、ここの戦闘能力が高いことで有名だ。
「数が多いが、一体一体の力も強い。油断せぬように」
「分かっています。援護、頼みます!」
「任された」
槍を構え、先行する私。
薄紫色の肌を持つ、異形の数々。様々な昆虫の特徴を融合させたような外見は、恐怖心を煽るがその程度ではひるまない。リルさんたちと会わなかったうちに、私も少しは強くなったのだ。
「行きます!」
一歩踏み込んだ私に気付いたファントムたちが向かってくる。戦闘は、始まった。
よくよく調べてみると間章って言葉、造語みたいですね。辞書にも載ってないし、かんしょう、って呼んでますけど分かりますかね。まあ、私らしいのでよしとしますが、違和感を感じた方には謝罪を。今しばらくお許しください。
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