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戦いの後で

 総合pv92000を超えました、どうもシファニーです。明日から学校何ですけど、これを書きながらアニメを見て、課題を放っておいている私は、果たして何をしているのでしょうか。


 第百九十九部、第六章第三十八話『戦いの後で』です。どうぞ!

 砕け散った世界の外に、俺は投げ出された。その何とも言えない不快感を超えた先に待っていたのは、またしても邪神だった。


「いや、なんでまたいるんだよ!」


 ただ、先程までとは違う点がある。まるで俺を待ち望んでいたかのような笑みを浮かべる、三人がいるという点だ。


「司、やっと来たわね! 待ちくたびれたわよ!」

「まったく、いつもお兄ちゃんは遅刻するんだから!」

「ん、司、お帰り」


 邪神の攻撃など見向きもしない三人に、俺は思わず笑いを零す。


 複製された記憶の中で、俺はずっと孤独だった。俺以外の登場人物はなく、ずっと一人で戦っていた。たぶん、こっちの時間だと大した時間は経っていないのだろうが、俺にしてみればそれなりの時間、一人ぼっちだったわけだ。

 最後の最後に、大切な記憶を、見せられた気がしたが。


「ああ、待たせたな。俺が遅れたから邪神を倒せていないのなら謝るぞ。だがその前に、さっさと片付けちまおうか」

「ええ、いい加減飽き飽きしていたのよ!」

「悪の塊は、許さない!」

「司を危険な目に合わせた、懲らしめる」


 邪神目掛けて飛び掛かった三人の手元に、強い魔力が集まった。


「いっけええええぇ!」


 敵を倒す、と言う行為自体はストレス発散になるが、正直言って俺は見ている派だ。格好いい攻撃とかはやるより見ていたほうが楽しいものだと思う。てなわけで俺は遠くから三人の合体技を眺めていたのだが――


 邪神の体に三人の攻撃が同時に触れると同時、神殿が消え、重苦しい気配が消え、邪神の存在が、消えた。


 ――案の定、迫力と見合わない呆気なさで、戦いは終結したのだった。


 俺たちのいた神殿は消え去り、まるで最初から何もなかったかのように青々とした草原が広がっていた。


「ふう、終わったな」

「うん、お疲れ、お兄ちゃん」

「まったく、待たせ過ぎなのよ」

「悪かったな」


 どこか夢でも見ていたような気持ちだが、俺は確かに一人で神を倒したんだ。色々と不思議なところはあるんだが……今は疑問よりも満足感が勝っていた。そんな俺が遠くを見つめていると、かなが俺の手を掴んで言ってきた。


「よく頑張ったね、司」


 見上げながら言ってくるかなの言葉に、俺は少しばかり泣きそうになった。しんさんによって行われた俺の強化の記憶だが、全部頭の中に入ってきている。行われていた最中には記憶がなかったが、記憶を力に変えるためかフラッシュバックのように入り込んできた。

 その時の衝撃はあまりに大きく、精神力が大きく削られた気がしていた。それを察してか否か、そんな言葉を優しくかけてくれたかなに、俺は感動していた。


 思わず屈んで、かなを抱きしめていた。


「ああ、ありがとうな」

「ん……なでなで、なでなで」

「くすぐったいぞ」


 かなの胸元に顔をやった俺の頭に、軽くて柔らかい手が添えられて、ぐしゃぐしゃとかき混ぜる。思わず笑いが零れるが、嫌な気分しないもんだな。


「ああ! いいなぁ、かなちゃん私も! ぎゅ~」

「く、苦しい、苦しいって!」


 そんな俺を見て楽し気に黒江は俺とかなを外側から抱きしめた。

 黒江の怪力で抱き上げられた俺は悲鳴を上げるのだが、気にした素振りもなく黒江は俺の背中に頬擦りしてきた。


「ちょ、ちょっとあんたたち、子どもじゃないんだから……仕方ないわね」


 そんな呟きが聞こえてきた後、かなのそれとは違う柔らかく、すべすべとした手が頭に添えられた。

 視線を上げて見れば、どうやらソルが俺たちの頭を撫でているらしい。腕が足りないので、かなの頭は尻尾で。


「よく頑張ってくれたわ。邪神、相手は仮にも神だったんだもの。本当なら私たちが倒さなくちゃいけなかったんだけど、あなたたちには本当に助けられたわ。それと、生きていてくれてありがとう」

「「「……」」」


 いまだかつてないほどに神秘的な雰囲気を纏うソルに見惚れた俺たちは、しばらく言葉を発することは出来なかったが、この時間、この空間に、言葉なんて必要なかったようにも思うのだ。今しばらくは、こいつらに甘えていたかった。


 それから日が暮れるころになり、空が藍色に染まり始めた頃。俺たちはリーゲンに帰って来ていた。面倒だったので、転移で。

 リーゲン付近の森の中へと飛んだ俺たちは、そこからリーゲンへ向けて歩き出した。


「でも、結局あれは何だったんだろうな。邪神の固有権能、《司空者》の力なんだろうけど」

「そうね。あの《司空者》って言う固有権能自体かなりレアなものだし、具体的な効果については私も把握していないんだけど……復活直後にしてはかなり強力なものだったわね。ただ、それはそれでも復活直後。同時に作り出せる世界の数と、再構築までの時間にかなり厳密な制限が掛けられていたみたいよ?」

「げっ、あれで制限受けてたって、マジか」


 正直言ってあの時点で充分チートだっただろ。

 俺たちが分断させられたこととか、邪神が何体もいた件についてはすでにソルから聞いていたが、やはり神と名が付くだけあってとんでもない野郎だったようだ。


「あの神殿も、復活が近かった邪神によって生み出されたった空間だったんでしょうね。そして、あの中で失われた命は邪神の養分となり、邪神は復活した、ってところかしら?」

「もしくはもともと復活自体はしていたが、力を回復させるために養分が必要だったか、ってところか」

「だね。でも、あの邪神って、もう復活しないのかな? なんかまだ、すっきりしないんだよね」


 邪神についての考察を語り合う俺たちに、黒江もそう言って割り込んできた。黒江の言う通り、俺も邪神教の連中がこれで終わるとは思えない。

 ちなみに、かなはもううとうとで俺の服の裾を摘まんで何とかついてきている。


「まあ、まだ終わっていないでしょうね。もう千年以上も前から存在しているようだし、一枚岩じゃないはずよ。邪神、って言っても具体的に定義されているわけじゃないし、複数体存在していても、不思議ではないわね」

「それもそうなんだよなぁ……はぁ、今はただでさえサキュラとの戦争が終わったばっかりで急がしってのに、悩みの種は潰えないな」

「ん? サキュラとの戦争、って何?」

「え? ああ……」


 何気なく漏らした文句だったが、黒江はサキュラと亜人国との戦争について詳しくないのか? いや、と言うか俺が亜人国のそこそこの地位にいるって教えてなかったか。


「いや、俺は今亜人国に席があるんだが、サキュラとの戦争があってな。その後処理で、結構忙しいんだ」


 そう呟いたその直後、黒江が何かに思い至ったかのように身を乗り出して言ってきた。


「ちょ、ちょっと待って! もしかして、その戦争に勇者って参加してなかった!?」

 そう言えば、この作品も次で二百部となります。いや、正直自分でもよく続いたなって思ってます。一時期、ちょっと更新頻度が落ち込んだこともありましたけど、ここ最近は毎日更新できているし頑張れていると思います。今後も頑張りますが、応援してもらえると嬉しいです。


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