募る想い
桜の時期になりましたね、どうもシファニーです。今日は桜を見に行ってきました。とても綺麗でしたが、ただ何となく綺麗としか思えなかった私は綺麗とは何かについてもっと勉強すべきかもしれません。
第百九十七部、第六章第三十六話『募る想い』です。どうぞ!
「ああもう、面倒くさいわね! これってつまり、そう言うことらしいけど!」
邪神の飛ばす黒色の弾を炎で焼き消しながら言い放つ。何度も何度も繰り返すこの行為に、いい加減飽き飽きしてきた。最も、別にこいつの相手に疲れたりしているわけではない。正直言って実力そのものは触れれば消える雑魚だ。
だが、問題はそこではない。
「司、さっさと勝って出てきなさい!」
どうやらこいつ、すべての別世界を攻略しないと攻撃が届かないらしい。まあ、邪であろうとも神だ。それらしい能力を持っていて、逆に安心できたというもの。これ以上の隠し玉は無いということになるのだから。
ただ問題は邪神に司が勝てるかどうかが危うい、と言うところだろう。黒江とかなちゃんなら実力的にも勝てても何もおかしくない。だが、司は変に運がよかったりするだけで決して強くないのだ。リルがいたならともかく、強く見積もっても司は邪神に傷一つ付ける程度が限界だろう。
「お兄ちゃん、大丈夫かな……」
「司、頑張って」
隣で心配する二人も、邪神相手に余裕ありげだ。あのヘレンとか言う司祭の話によればこの邪神は復活したばかり。力がないのも当然と言えるだろう。そんな状態とは言えただの人類にすら下に見られるのはどうかと思うけど。
いや、この二人が強すぎるのね。二人とも司の知り合いと言うか、大切な存在らしいけど。この二人がどうやって強くなったのか分からない。正直言ってただの才能じゃ説明が付かないくらいには強すぎる。だから、司。きっとあなたにも、邪神くらい圧倒してのける力があるはずよ。
「だから、生きて出てきなさい、司!」
こういう時応援以外のことをするために強くなったはずなのに……。ああもう、本当にむず痒い。すべてを助けられる、力が欲しかったな――
《黒江》
ねえ、お兄ちゃん。私はさ、別にお兄ちゃんのことを嫌ってなんてなかったよ。本当にずっと大好きで、一緒に居たいって思ってたよ。だけどお兄ちゃんはいつも、嫌われようとしてたよね。それなのに頼りになってくれるお兄ちゃんが、私は大好きだよ。
「だからお兄ちゃん、無事でいてね」
あの日、あの時、お兄ちゃんは私を迎えてくれた。きっと、ずっと、私はあの時から強くなり始めたんだ。
あの日、お母さんとお父さんを失って、しばらく経ったある日。親から捨てられた私は、思春期真っ盛りの小学生たちにとって、格好の得物だった。罵詈雑言、誹謗中傷。あまたのそれらに虚勢張ったって耐えるのには限界があった。小学六年生如きの私は、所詮誰を頼りにしてもいいかもわからず、自分の身一つ守れない未熟な身。
いじめられることも、そんな未熟な自分自身も私は大っ嫌いだった。そんな中でも、お兄ちゃんだけはずっと、私を慰めてくれた。大切にしてくれた、抱き寄せて、背中をさすってくれた。家の玄関で一人泣き崩れていた私を、いつも、いつも……。
でもある日、その日、また、泣いて帰ったあの日。出迎えたのはいつもの迎える人のいない静かな家ではなかった。温もり溢れる、家族のいる家。それがたった一人でも、ううん、たった一人の大切な家族だったからこそ、だったんだと思う。
たった一人の温もりに、何十、何百って言う心の傷が、不思議と、塞がった気がしたのは。
あの日、小学生の私よりお兄ちゃんが先に帰っているのはおかしいな、って思ってはいた。その程度の、ことだったんだけど。それからずっと、私が泣いて帰る度に、お兄ちゃんは玄関で出迎えてくれた。ううん、毎日、毎日、お帰り、って言ってくれたんだ。
あの日からお兄ちゃんは――
「お兄ちゃんなら、大丈夫。だから、頑張って!」
《かな》
司は、かなの大切な人。かなを大切にしてくれた、命の恩人。理想の、主様。ううん、仲間。お友達。家族。ずっと一緒の、一緒の一緒。忘れない、忘れられない、忘れちゃダメ。頑張れ、だから頑張って。
司は、頑張れる。強い、かなを守ってくれた、助けてくれた。一緒にいてくれた、ご飯をくれた。黒江と会えた、強くなれた。生きていられた、頑張れた。強くて賢くて、優しくていい匂いで……。
司は、疲れてた。頑張りすぎてた。戦うって、辛いんだねって、分かった。だから優しくして上げた。守ってあげようって思った。優しくして上げたかった、守ってあげたかった。出来なかった、どっちも。かなは悪い子。
司は、司は、司は――
かなは、いい子。いい子になって、司を助ける。でも今は、司が頑張らなきゃダメみたい。頑張って、頑張って。そしたら、かなの頭なでなでして、いつもみたいに笑ってほしい。司は出来る子元気な子、誰にも負けない頑張る子。
司、頑張って。司、死なないで。司、帰って来て。またなでなでして、一緒に寝よ。美味しいご飯、一緒に食べよ。今度はかなが、守ってあげるよ。そしたら司は、休めるもんね。ずっと一緒にいて温めてあげるからね。
二年と少し前の夏の日の事。一匹の黒猫が散歩をしていると、ブオン、と大きな音を立てて鉄の塊が向かってきた。初めて見たわけじゃないけど、いつもはもっとゆっくりだから、避けられると思っていた黒猫は、そのあまりの速さに動揺し、動きを止めた。止めてしまった。
ああ、死ぬ。野生の思考ながらも分かる。生命的本能から感じた生命危機はガンガンとかなの脳を揺らしたが、揺れるのは瞳のみ。その体は微動だにせず、その巨体に襲われるのを、待つばかりで――
子猫をすくうその両手に拾われて、軽い浮遊感に襲われる子猫の体は、大きな体にくるまれたまま一周回り、巨体の突撃を免れた。
助かった、なんて子猫が思っている周りで車が止まり、少年の身を案じたり、救急車が呼ばれて大騒ぎになったり。そんな、色々なことがあった。でもそれは、子猫の知ったことじゃなかった。
この人に、助けられたんだ。
その日から子猫は決心した。この人のために、何かをするんだ、と。毎日のようにご飯をくれた。女の子を連れてきた。遊んでくれた。そしてやっと、恩返しの機会を得た。この世界に来て、力を貰ったんだ。
まだ、恩返し出来てないよ。
「司、頑張って」
先日から視聴している『機動戦士ガンダムoo』何ですけど、改めて、私は何が好きでアニメにハマったのかを認識できました。ガンダムに憧れてガンダムに惚れた私は、この作品を永遠に忘れないでしょう。はい、本当にガンダム大好きです。
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