邪神教司祭ヘレン
連続更新しすぎて書くことが無くなりました、どうもシファニーです。最近はネタが豊富だった気がしたんですけど、突然ネタが無くなり前書きに十分くらいかけ、結局こうなりました。落ちはありません。
第百九十五部、第六章第三十四話『邪神教司祭ヘレン』です。どうぞ!
「っと、出てこれたわね」
「あれ、ソルさん。よかったぁ」
「ん、二人ともいた」
世界事あいつをぶち壊してやった後、ちゃんと別世界が崩壊したらしく元の世界軸へと帰って来た。黒江、ってことかなちゃんもいるし、世界の気配で本物かどうかはわかる。ただ問題は、事の原因になったであろう邪神の本体が、どうやら目の前にいること。
それと――
「お兄ちゃん、来ないね」
「ん、遅い」
「……」
司がまだ、別世界を抜け出せていない、と言うこと。二人の様子、そして私が陥っていた現象から推測するに皆邪神と一対一で別世界に隔離されていたのではないだろうか。そうなると、この中で一番弱い司は……
そこまで考えて、頭を静かに振る。そして、目の前に佇む邪神と、その足元に立っている黒フードの存在へと視線を送る。
「おや、おやおや。くっくっく、どうやら四人中三人も闇世界を攻略したようですねぇ。ええ、ええ素晴らしい。それでこそ、邪神様の目覚めの運動相手に、相応しいというもの!」
などと高笑いするその低く人をあざ笑っているかのような男の声は、嫌に耳を刺激し苛立ちを掻き立たせた。しかし男の口ぶりからすると、どうやらこいつは邪神に仕える邪神教の教徒の様だ。
「お前たちは複製された邪神様に勝ち、息まいてるかもしれないが、ここからが本番であるということを、思い知るがいい! くっくっく、わーはっはっはっは!」
「何をバカ丸出しで騒いでるかは知らないけど、耳障りだからやめてくれる?」
「おっと、すまない。私も高ぶっていてね」
不快感を堪え切る自信を無くした私は睨むような視線を向けて男へ言うが、へらへらとした態度を崩すことなく男は言う。
「私の名はヘレン。この邪神様にお仕えする邪神教司祭である。此度は貴様らが邪人とかした我が同志たちの命を奪ってくれたおかげで邪神様の復活が叶ったこと、深く感謝するぞ!」
「……何ですって?」
「なんだ、気付いてなかったのか? 貴様らは私たちが邪神様の復活のための贄を用意してくれたのではないのか?」
煽るような口調で、余裕を持った声音で言うヘレンとか言うやつに、ますます怒りが沸き上がる。一瞬殺してしまおうとも思ったが、司はこいつの事を恨んでいるようだったし、私だってこいつらを生んでしまった要因である可能性がある。話くらい聞いておこうと踏みとどまった。
そんな私の横で、不快感をあらわにした凛とした表情で黒江が問うた。
「なぜわざわざ私たちに差し向け、殺させたの? あなたたちなら自ら命を捧げそうなものを」
「いえ、それではなりません。邪神様の贄となるには悪感情を抱くままに死んでいただかないと。くっくっく、出ないと、邪神様が美味しく魂を頂けないでしょう?」
「ッ!?」
一瞬黒江から、カッ、と怒りが沸き上がるのを感じた。しかし黒江はその怒りを出すことなく一瞬視線を落とし、鋭い視線でヘレンを睨みつける。
「流石にさ、私だって許せないものくらいあるから。分かってくれるよね?」
「ほう、何を言い出すのかと思えば。懺悔の言葉ならお伺いしますが、どのような内容で?」
さらに怒りを掻き立てるかのようにそう口にしたヘレンに、私もいい加減我慢の限界だった。
自分の部下を生贄にするために私たちに差し向け、殺させた? 言動のすべてが最低だ。かつて大虐殺を引き起こした私が言うのもなんだけど、こいつは生かしておいていい存在じゃない。誰が許そうと、私は許さない。
邪神とか、もううんざりだし。
「殺す」
「手伝うよ」
怒りのままに漏らした言葉を、黒江はしっかり拾ってそう述べる。かなちゃんもいつになくやる気で、毛を逆立たせていた。と言うか、あれ? なんだか急に強くなっている気がする。すでに黒虎人の域を超えているような、何か。でも解析鑑定で見ても変化は無い。
良く分からないけど、彼女も成長してるらしい。
「くっくっく、復活なされた邪神様に、あなた方が勝てるとでも? まあその前に、私がここを通させはしませんが――」
ヘレンが私の行く手を遮る様に転移し、邪神の前へと躍り出る。しかし何をしているのやら。こいつは何か勘違いをしているらしい。
種族:人類・天人
名前:ヘレン
レベル:35
生命力:1092/1092 攻撃力:2034 防御力:1829 魔力:2394/2394
スキル:魔術・闇Ⅴ、魔術・空間Ⅲ、物理攻撃耐性Ⅵ、魔法耐性Ⅴ、状態異常耐性Ⅳ、魔力自動回復Ⅷ
権利:基本的生存権、自己回復の権利、自己防衛の権利、魔術使用の権利
称号:邪神教司祭
大して強くない。いや、人間にしては強いほうかもしれない。ただ、あのアリシアって言うお姫様より弱いし。何ならカレラ、って言う赤髪のこと同じくらいなんじゃないかしら。あの子は不死鳥の力を継いでいるみたいだしね。
「あ゛?」
と、言うわけで通りすがりに軽く肩を触ってやればそれで終わりだ。
私が触れると同時に全身が黒焦げになったヘレンは崩れ落ち、悲鳴を上げる間もなく死んだ。まったく、調子に乗るやつを見るのは気分が悪い。
さて、大本命の邪神だが、弱い。ステータス面では別世界にいたそれと何ら変化は無い。それぞれ邪神を倒してきたであろう私たちが三人でかかればすぐにでも消えてしまうような存在だ。だからさっきのヘレンの言葉も勘違いして出ただけのものだと思っていた。
けど、それは違った。
「え!? 攻撃が効いてない!?」
「ん? なんで?」
「これは……」
私が投げた炎の弾も、黒江の斬撃も、かなちゃんの拳も、そのすべてが不思議な力で弾かれた。これは一体……と悩んでいるうちに邪神が攻撃の姿勢を見せてきた。
それ自体は簡単に躱せるし、防ぐことだってできるのだが、どうしたって攻撃が通じない。
「一体、どういうことなの?」
そんなことを悩みながら、私たちは無敵の存在との戦いを始めるのだった。
今日『機動戦士ガンダム 水星の魔女』一期を視聴しました! 二期が来る、と言うことだったので急いでみたんですけど想像以上にヘビーでガンダム的鬱要素が多く、それでいてそれが好きな私は大満足でした。今後の展開が楽しみです。
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