記憶の中で
総合pvが89000を超えました、どうもシファニーです。感謝感謝なのです。最近は体の調子もよく毎日執筆に励めていますし、もう一つやっている長編作品に手を出すことも出来そうな予感。良かったらそちらもお願いします。
第百九十四部、第六章第三十三話『記憶の中で』です。どうぞ!
邪神教のものと思われる神殿内部、邪人と化した人共を蹴散らしつつ進むも終わりの見えない一本道を延々と走らされ続けていた。
「ッチ、これは固有権能レベルの能力だろ。引き返してもどうにもならなそうだし、どうしたもんか……って、うざったいな! いい加減にしろよ!」
なんとなくの現状を把握しつつ、迫りくる邪人たちを捌く俺は、どうしたものかと思考を巡らせる。しかし、分割思考も活用して幾ら考えたところで中々妙案は浮かばない。
「クソッ、壁の一枚でも破壊すればどうにかなるか? だけど、この神殿の壁特別製だよな。属性剣なんかじゃ破壊できないぞ?」
試しにアイサファイヤ・ロングソードで切りかかり、砕けることで起こる爆発もぶつけてみたがやはり傷一つできない。まったく、鬱陶しいったらありゃしない。
「ああもう、怠い! ただでさえ見つけるのに長時間かかったのにふざけんじゃねえぞ! ああもうどうでもいい! 殺された恨み晴らしてやる!」
どうやら抜けられない迷宮のような空間に捕らわれながらも、定期的に邪人たちは現れてくる。幾ら殺しても終わりはないっぽいので、ひたすらに切り裂いていくことにする。目の前のこいつらは弱いのにどうしてこんなに苦戦しなくちゃいけないんだ。
本当にムカつく。
……いや、なんで俺はさっきからこんなにいらいらしてるんだ? 自分で言うのもなんだが、俺ってこんなに怒りっぽくはなかった気がするんだが。
「邪人キラーはいただきだ!」
いや、ちょっと待て。俺情緒おかしくないか? 今考えていることと発言がどう考えても真逆だったぞ? と言うかなんか、体が言うこと聞いてない気がする。
なんというか、自分の意志で動いているし、発言しているのだが、その意思自体が何者かに操られているみたいな。とんでもない違和感が俺を襲っていた。
しかしまあやることは変わらない。襲われているのだから対抗しなくてはならない。ここからどうするかは考えても無駄だということが分かったし。
と言うか、そもそもどうしてここにいるんだったか。
なんだろう、色々と不思議な感覚だ。
「クソッ、何体倒せばいいんだよ! もうかれこれ百体以上切ってるぞ!」
途中からは魔力節約のために魔法を使うのをやめ、魔術・氷で作られた剣で邪人たちの相手をしていたのだが、いい加減疲れてきた。
属性剣術は強力だが魔力を大きく消費するし、継戦能力が高いとは言えない。そもそも使ってるのが俺だとそもそもの体力やセンスが足りないのだ。せいぜい剣を握り始めて半年の人間がそこまで慣れることが出来るわけだない。
そんな悪態つきながらも戦わなきゃいけないんだから困ったもんだ。
《報告》
あれ? しんさん? どうしたんだ?
《熟練度が一定に達しました。スキル《属性剣術》から派生、スキル《剣王》を獲得しました》
剣王? なんだそれ?
《剣王:剣術Ⅹの上を行く剣術スキル。より感覚が研ぎ澄まされた熟練の剣術を操れる》
なんだって? 大したことはしていないつもりだが、これも能力使いの力ってことか。俺も固有権能だけはチートレベルだからな。なんだかんだ甘えてきたが、肝心なとこで役に立ってこなかったんだよな~。でも、今回は役に立ちそうだ!
「なんだかわからなんが、強くなった俺を試させてもら――」
《報告:目標スキルの獲得を確認。これより第二目標スキル獲得のため記憶領域の移動を開始します》
ん? しんさん何言って――
そんな思考が一瞬流れた後、俺の意識は黒く染まった。
「ん? ここは……って、始祖竜!?」
気づけば見知らぬ大空の下に立たされていた俺は、目の前まで迫って来ていた濃い紫色の翼を持つ巨大な竜、始祖竜を目の前に剣を握っていた。
「ちょ、なんで!? やめ、こっちくんなって!」
ダメだと分かっていたもそう叫ぶ俺の制止などもちろん聞きもしない始祖竜は俺の手前二十メートルほどで止まると黒い霧のようなブレスを俺目掛けて吹きかけてきた。
「ああ、死んだこれ」
助かる未来が見えなかった俺は目を閉じて死ぬ瞬間を待つのだが、なかなかそれはやってこない。どうしたものかと目を開いてみれば、目の前にはどこか驚いているように見える始祖竜が佇んでいるのみ。
足元を見ればブレスの影響か所々溶け落ちているのだが……何事だ?
《報告:熟練度が一定に達しました。スキル《皮膚剛化Ⅹ》が進化、スキル《無崩の幕》を獲得しました》
《無崩の幕:一定以上の圧力がない攻撃では損傷を受けない》
えっとつまり、無崩の幕のおかげで俺の肌はブレスを受けても腐ることなく耐えている、ってことか。あと、何気に服にまで反映されているの偉い。
と言うか、この一瞬でスキルが進化って、何事だ? もともと皮膚剛化ってスキルを多用していた記憶はないんだが、これも能力使いの力の影響なのだろうか。俺の名前に与えられたこの固有権能は、案外優秀なのかもしれないな。
しかし、ブレスに耐えたところで始祖竜は目の前にいるわけで……
「え、えっと……逃げろ!」
《報告:目標スキルの獲得を確認。これより第三目標スキル獲得のため記憶領域の移動を開始します》
そして走り出した俺の意識は暗転した。
司君がついに強くなる!? そんな展開をどうぞご覧あれ。というかことあるごとに殺されその度強くなる司君は主人公なのかもしれない。主人公だった。
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