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生きようとする権利

 ブックマーク登録者100人になってたら嬉しいなぁ、と眺めたその欄には101と言う数字が。

 どうも、ブックマーク登録者100人の瞬間を見逃したのが少し悔しいです、どうもシファニーです。おかげさまで総合pも350を達成しました。切りいい数字ってみていてなんだか嬉しいですよね。

 

第百九十三部、第六章第三十二話『生きようとする権利』です。どうぞ!

「はぁ……はぁ……まあ、よくやった方かな」


 割と、頑張ったと思う。とてもじゃないが打ち消せない攻撃を連発され、当たったら即死だと思い逃げ惑い、全力で走り回ったと思う。


「起死回生は、使ったばっかだ。望みがあまりにも薄すぎるし、トライし続ける体力はもうない、か」


 すでに棒と化した足の膝を両手で支えて堪えているような状態で、俺は諦めたようにそう呟く。色々試したが魔力はほぼ枯渇。俺のスキルじゃあ通用する有効打はなく、近づこうとしたら近づく前に魔法を連発されるし、離れても以下同文。

 どうすることも出来ず一方的に好き勝手されること数十分……は経ったと思う。いや、数分かもしれない。広いとはいえ壁に囲まれたこの空間では逃げ切る、と言う概念が存在せず攻撃を防ぐことも叶わないのだ。どうしようもない。


 まあ、それでも全力で時間稼ぎしたし、生き延びたと思う。正直、もういいかな。


 邪神が広げた両手の上に、数多の魔法陣が浮かび上がる。そこから放たれた無数の黒い弾が降り注ぐ中、俺は自嘲気味に呟いた。


「ああ、もっと強くなって、生きていたかったな……」


 その後の刹那、黒く染まった視界のままに俺の意識は途切れた。


《報告:精神帯の大幅な欠損を確認。修復を実行――失敗。魂の保護への移行を実行――成功しました》

《報告:名前:司の固有権能:《能力使い》による能力開花速度上昇効果を受け、称号:《冷徹者》の権能開花、及びスキル:《冷徹者》の進化。権能開花によるスキル追加:《取捨選択》。《取捨選択》:自身にとって有用であるもの、そうでないものの判別を自動化し、瞬時に判断する。スキル:《冷徹者》の権能進化。《冷徹者》:思考加速、制限解放、痛覚無効、五感強化》

《報告:精神帯を失ったことより、種族が変化。種族名:《精魔人》より、種族名:無、へと変化します》

《報告:一時的な精神保護により精神帯の修復が可能となりました。これより、再構築を試みます――失敗。再度試行――失敗。再度試行――失敗》

《報告:精神帯の修復過程において記憶の修復に一部成功。これより、魂修復のためのありとあらゆる可能性を試行――》


 世界の書。それはこの世界のありとあらゆる知識を蓄える存在。森羅万象、と言うスキルを持つ者のみが閲覧できるそれは特別且つ希少なスキルだ。それこそ世界トップレベルの強者の中の更に一握りしか持たぬはずのスキル。

 しかしそれは本来所有者の意識外で活動するはずがない。あくまで森羅万象の管理者は所有者へ知恵を恵む存在でしかなく、自主的に行動することはあり得ない。ただ、司に宿るたった一つの権利が、森羅万象の自主行動を行わせていた。


 《生きようとする権利》。その権利の本当の権能は、世界の書に記されているそれとだいぶ違っていた。当然、と言うよりはそう仕組まれた、と言うのが正しいか。

 本来誰にも与えるつもりのなかった権利をルーレットに入れ、それを引いてしまったから急いで世界の書を書き換えた神が存在しなければ、本来生まれるはずのなかった特権。


《生きようとする権利》:本人の意思と関係なく、世界の書の管理者の意向に従って生存するための方法を忠実に実行する。付属スキル《森羅万象》


 そう、これは、この権利は。

 この世に存在するありとあらゆる手段を、生きるためなら使ってもよい、と言う権利なのだった。基本的生存権のようなただ漠然と生きることを許すようなそれとは違う、神曰く、最高に当たりな権利、である。


《報告:記憶の断片の修復に成功。精神帯への移行を試行――成功。名前:司の意識覚醒を実行――成功》

《報告:続いて、肉体修復を可能とするスキルの取得を試行――失敗。方法を検討し、再度実行――


 何やら、頭の中が騒がしい。報告、報告と何かが反響しているような気がする。

 体が、動かない。いや、感覚がない。死に損なったか? いや、そもそも俺は何をして……と言うより、俺? 俺、って誰だ? 俺は、誰なんだ?


 何か、何か思い出せ。俺が何者で、何をしているのか。どうして、今こうしているのかを。


《報告:スキル取得条件を達するための方法を発見。実行します》


 ん? なんだ? 何か、頭の中で声が。これは、幻聴、か?


《報告:記憶の一部の改変を試行――成功。続いて意識への記憶の反映を試行――》


 何、言ってんだ? 意味が分からない。と言うか、これは本当に声なのか? 何か信号じみた、言語でない何か。感覚的に捉えることが出来る、暗号の類? ダメだ、何も分からない。何も、思い出せない。


《――失敗。再度試行――失敗》


 失敗? 一体何を、失敗したんだ?


《報告:方法を再度検討、その後、再度実行を試みます》


 一体、何の話を、してるんだ?


 ここはどこだ? これはなんだ? 頭の中で反響する声のような何かは、一体何なんだ? 俺は、誰なんだ? 思い出せ、思い出すんだ。いや、そもそも、俺に何か思い出すようなことはあるのか? そもそも、思い出す、ってなんだ?


 考えて、何になるんだ?


《報告:記憶の更なる修復に成功。再度意識の反映を試行――成功しました。これより、名前:司の記憶を意識へと反映します》


 意識……反映? 記憶の領域? いや……名前、司? 


 そうか、俺は司。俺の名前は、司なんだ。それが俺の名前。俺であり、司である俺の名は司。ああ、そうか。思い出した、思い出してきたぞ。

 俺は司。この世界で強敵を相手取る、人間だ。


《報告:記憶の反映、成功》

《報告:これより、新たなスキル獲得のため疑似現実世界を記憶の改変を行い構築。反映し、スキル取得条件を満たすためのプランを構築――成功。改変した記憶の反映を試行――成功しました》


 どんどんと思い出せる。ああ、思い出せるぞ。この世界で、どんなことをしてきたのかを!


《報告:記憶修復、及び精神帯への移行に成功。種族名:無、より――


 これから始まるのは、この世界きっての最大の奇跡。一人の少年を救うために解放されたこの世界の森羅万象を活用して行われる、大実験。

 自己進化による、蘇生であった。


――種族名:種、へと進化します》

 約二百話越しの伏線回収、自分でもよく粘ったと思います。『生きようとする権利』についての具体的な説明はずっとしておらず、今回が初めて、で合っている、はず。

 伏線は張ったらすぐ回収しないと回収し忘れてしまいそうでビビっちゃう私ですが、何とかこの五十数万文字堪えることが出来ました。これは微々たる成長と言えるのではないかと、自画自賛しておきます。


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