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大切への想い

 お久しぶりの連日更新です、どうもシファニーです。

 あ、総合pv88000越えました! 感謝です!


 第百九十一部、第六章第三十話『大切への想い』です。どうぞ!

「お兄ちゃん? かなちゃん? ソルさんも……ッ!? この、感覚はッ!?」


 それは突然の事だった。ソルさんが現れ、私たちに降り注いだ瓦礫が破壊されたかと思うと同時、神殿が大きく広がり、その姿を変貌させた。そして大量の悪意が目の前を覆う中、漆黒のローブをかぶった人影が見えたかと思った直後、私の周りには誰もいなくなっていた。

 代わりに、目の前に聳えるのは十メートル台の巨人。蜘蛛のように長細い腕を持ち、その体を漆黒のローブで覆っていた。どこか神聖さすら感じる衣服ではあるが、その身に纏うのは神聖さの欠片もない邪悪の塊だった。


 ああ、理解した。こいつが邪神って呼ばれる存在なんだ、って。

 今まで目にした中で最も強い敵なのは言うまでもなく、今まで会った中で最も悪意に溢れた存在でもあった。きっと、何人もの命を、希望を、夢を、正義を奪ってきたに違いない。邪人化し、ここで私たちが倒した人たちも、こいつに取り込まれて行ったのかも。

 ううん、お兄ちゃんが話していたオレアスでの事件も、すべてこいつのために。


 お兄ちゃんは言っていた。たくさんの強そうな気配が同時に現れた、と。そして私も感じていた。目の前のこいつに似た邪悪の化身が、他に四体いたことを。私の周りから誰もいなくなったのなら、普通に考えて五体の邪神たちが私たちを同時に相手取っていることになる。

 きっと最大戦力であるソルさんを孤立させれば私たちは大したことがないと思われているのだろうし、その上で私とお兄ちゃん、かなちゃんも分断させたのなら各個撃破するつもりなのだろう。数の上ではこちらが不利だが、もしお兄ちゃんかかなちゃんに二体の邪神が対峙していたら最悪だ。


 邪悪な存在に強いはずの私ですら自信を失い負ける気すらするのに、あの二人が対抗できるかどうか、微妙なところだ。


 思わず零れた苦笑いは、果たして誰に向けたものだったか。

 震える両手で剣を握り、その手に力を籠めて抑え込む。息を整え、剣先を邪神へと向けた。剣先を向けられた邪神はその手を大きく広げ、頭上に漆黒の魔法陣を浮かべた。あの感覚、魔術・闇かな。


「何が何だか良く分からないけど、やるって言うんなら戦うよ!」


 こんなに強い敵とは戦ったことないし、勝てるかどうかも分からない。経験が少ない私、だけど。


「絶対に負けられない。だってせっかく、お兄ちゃんに会えたんだから!」


 この半年間、確かに仲間は出来たし、それなりに楽しく、充実した日々を送っていた。明るげに振舞っていたつもりだし、悩みを誰かに話したことだってなかった。それはいつもの意地張りだ、子ども心の強がりだ。

 でもそれは、ずっとお兄ちゃんがいたからできたことだった。強がりも、意地張りも。どんな努力も困難も、お兄ちゃんがいたから乗り越えられたんだ。そんな私が半年もの間お兄ちゃんを失ってどれだけ心細く、辛かったか。


 だけど、それはもう終わった。またお兄ちゃんに会えた。かなちゃんにも会えた。楽しい時間を過ごせてるし、今までのノリも覚えてくれてた。だからもう、迷わない。この力は、この想いは。

 全部、私の大切に、注ぐんだ!


 邪神の頭上、細長い腕の先に出来た魔法陣から、極大の漆黒の弾が放たれた。やはり魔術・闇、だけど見たこともないくらい高位の魔法らしい。それでも私は勇者だから、絶対に負けたりしない。

 迫りくる漆黒に、光を帯びた剣を振るう。


「《エクスプロード》」


 軽く横に振るった剣から放たれた光は、迫りくる黒を滅した。


 今の私は、驚くほどに落ち着いていた。お兄ちゃんを、かなちゃんを。テトをリウスを。そしてソルさんやルナさん、カレラさんを想う度。私の大切を想う度、その感情は力になって行く。そんな、気がした。


 剣を握り直し、両足に力を入れる。邪神の顔を見上げながら、叫んだ。


「世界に認められた勇者である私が命ず。栄光の剣よ、我が敵をうち滅ぼせ!」


 私の声が響くと同時、剣は光を増す。勇者が呼びかけ、それに応えることで顕現する最強の剣。如何なる悪をも許さない、正義の剣。断罪を下す、勇者の剣。


 その名を聖鋭の剣(エクスカリバー)。私でもこっちに来る前から知っていた、聖剣、と言うやつだ。

 聖剣はその輝きでもって空間に充満した悪を振り払い、邪神の気配を際立たせる。今まで邪悪な気配が強すぎて把握しきれていなかった色々なことが空気が浄化されたことで分かっていく。もうすでに、ここに悪は一つしか存在しない。

 ううん。私の大切を、私の正義を否定する敵は、一人しかいないのだ。


「邪神さんっ、この私に出会ったこと。そして、この私がお兄ちゃんの妹であることを、あの世で後悔しなさい!」


 大きく踏み込み、空を駆ける。振り上げた力は、飛び上がった体は、光を纏う。極大の、そして純白の。すべての過ちを塗りつぶす白は、翼となり、私の背へと宿る。そして邪神の体躯を上回るほどに巨大化した剣は、振り下ろされる。


「覚悟ッ! 全力全開ッ、聖剣ハイネス・セイクリッドインパクトッーー!!」


 その剣は、まるで虚空を切り裂いたかのような滑らかさで邪神を切り裂き、空間をも、破壊した。

 知られざる妹ちゃんが家庭的になった理由が、これから明かされる(重要そうじゃない)


 

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