表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

184/352

悪意

 どうも、シファニーです。今回も一週間越しの更新ですね。遅れあそばせ。(使い方あってるかな。たぶん違う)

 さて、今回も司君と妹ちゃんのなれ合いをお楽しみあれ。


 第百八十四部、第六章第二十三話『悪意』です。どうぞ!

 黒江に手を引かれて少年の家を離れてしばらく歩いた先で、俺たちは一息ついていた。


「どうしたんだよ、急に。何かあったのか?」

「……ううん、特段何か、あったわけじゃあないんだけど」


 どこか様子のおかしい黒江を心配して声をかけてやると、黒江は立ち止まって頬を掻いた。その隣では、かなも心配そうに黒江を見上げていた。


「まったく、嫌気がさすよ。前の世界でも、あるってのは分かってたしそれについて考えたこともあったけど。意外と対面してみると、想像以上に胸糞悪いよね」

「……何がだ?」

「誰かの純情を理由して、悪事を働く人たちのことだよ」

 

 俯きながら呆けるように苦笑いを浮かべる黒江は、大きくため息を吐いた。


「実はね、こういうの初めてじゃないの。今までも何か証拠があったわけでもないんだけど、悪意が紛れ込んだ善意を見せて誰かをだましたり貶めたりする事件が」

「なるほどな。それで急に」

「うん。今回のも、きっとそう。勇者ってのが何なのか、私には良く分からない。でも、勇者だからか悪意の香りに敏感で。ぱっと見たら善行でも、裏に隠れている暗い感情があったとしたら、それを見逃すことは出来ないの。誰かの小さな嘘も、国が関わる大犯罪も。何もかもが、悪意を纏っている」


 すでに俺からでは黒江の顔は見ない。俯くその顔に映る表情を、果たしてかなならば見えているのだろうか。落ちていく声のトーンに合わせるように、遠くの山に日が隠れて行く。


「でも今回はいつもより大きい悪意が、この周辺を纏ってるの。隠しようもない犯罪に、あの子はあっていたんだよ。纏う悪意が、纏う魔力が、纏う力の在り方が。何もかも、犯罪の色しか感じない。それなのに、それなのに――いつだって私は、何もしてあげられなかった。これだけの力があるのに、何も……私みたいな一般人じゃどうしようもない悪意が、何度も私の目の前で、渦巻いていたの」


 途切れた言葉に続く者はいなくて。

 俺はそんな黒江に対して咄嗟にかける言葉が浮かばなかった。そうして生まれた間を埋めるように、かなが黒江に寄り添った。


「黒……?」

「ごめんね、かなちゃん。難しいことを言っちゃったね」

「ううん……悲しい臭い」


 かなが黒江の体に抱き着いて、頬擦りして。かなの頭を撫でる黒江の声は上擦っていて。その頬を伝う涙など、想像せずとも分かっている。

 黒江はきっと、何度も経験してきたのだろう。俺はもとより支えてやる、なんて言える立場にない。それでも寄り添ってやることも、話を聞いてやることも出来たはず。それでもこの半年近く、黒江を一人にしてしまったことに対する後悔は――


「黒江」

「どうかした? お兄ちゃん」


 かなのおかげが、少し明るくなった声音と表情で応える黒江に、俺は笑みを浮かべて言ってやる。


「悪を逃がさず、困っている人を助ける。そんな勇者になりたいってんなら、俺を頼ってくれよな」

「え? えっと……」

「なんたって俺は、勇者が出てくるゲームをたくさんやり込んできたからな。お兄ちゃんに任せなさい!」

「あの……」


 戸惑い顔の黒江に、俺はさらに畳み掛けるように言葉を続ける。


「憂いなど無し。犯罪者だろうが何だろうが、俺が倒してやる。この世界じゃ、こういうのが許されてるからな」

「そのぉ……」


 言い切ってなお困り顔の黒江に、俺も困り顔を浮かべぬよう頑張っていたのだが、俺が耐え切れなくなる前に黒江は「くすっ」と笑い始めた。


「あははっ、何それ。でも、ありがとお兄ちゃん。うんっ、何とかしようか。お兄ちゃんと私がいれば、きっと大丈夫だよね!」

「かなもっ!」

「うん、そうだね。かなちゃんも一緒に!」


 黒江はぱっと笑顔を取り戻し、かなも嬉しそうに笑いだした。

 それを見て肩の荷が下りた俺も、力なく笑いだす。


「はぁ……なかなかいつものテンションに戻らないから、俺困っちゃったぞ」

「なにそれ。自業自得のくせに、人のせいにしないでよ」

「んだよ、せっかく兄らしく慰めてやったのに」

「こんな頼りないお兄ちゃん、他にいないよ」

「なにを!?」


 まだ完璧じゃないかもしれない。その顔に張り付けられた表情が本物じゃないことは知っている。それでも笑ってくれた黒江の声に、俺も自然と元気づけられる。いつもの俺たちが戻って来た気がした。


「でも、それがお兄ちゃんだし。こんな不器用なお兄ちゃんの方が、私は好きかな」

「黒……」


 可愛らしく片目を閉じて言う黒江は、そこに本当の笑みを浮かべていたように思う。


「それ、馬鹿にしてるだろ」

「バレた?」

「バレたじゃねぇよ!」

「大丈夫だよ司」

「かな……」

「司が馬鹿でも、かなは大丈夫」

「嫌何もよくないし!?」


 話の内容をよく理解できていないらしいかなはフォローになっているのか定かでもないフォローをかけてくる。いや、別にかなにまともなフォローは求めないさ。居るだけで癒しの存在なんだから。


「じゃあさ、気を取り直してやろっか」

「え? 何を?」


 完全にいつもの調子を取り戻し、調子よく立ち上がった黒江は俺の手を取りにこりと笑う。


「犯罪者たち、懲らしめるんでしょ?」

「えっ」

 絶賛『とある科学の超電磁砲』をシーズン1から見ております私ですが、やっぱり凄いですね、あの作品。何十人と言う主人公を、関連性のあるストーリーで描いているんですから。自分も何人もの魅力ある登場人物を主人公にして一つの物語を書いてみたいものですが、まだ私にそんな文章力はないので少しずつ頑張っていきたい次第です。


 ブックマーク登録、いいね、評価、感想等頂けると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ