薬草収集
お久しぶりです。バレンタインデーなんて知りません、どうもシファニーです。
この作品を書き始めてから二度目のバレンタインデーを迎えましたが、司君がチョコレートをもらうことはありません。
第百八十一部、第六章第二十話『薬草収集』です。どうぞ!
かなと黒江にプレゼントを贈った翌日、俺たちは二日ぶりに冒険者ギルドを訪れていた。
黒江たちと話し合い、今日は三人だけで何か簡単な依頼を受けようということになったのだ。
感覚的にはアトラクションのようなもので、娯楽感覚で冒険を楽しみたいと言った心境だ。
ちゃんとお金を稼ぐつもりならもっと高難易度のものを受けれることはできるが、今は緊張感ばかりの戦闘は控えたい限りであった。
「それじゃあ、これはどうかな」
「ダンジョン付近に生息している薬草の採集、か。なるほど、聖職者たちが必要としているけど、あそこらへんは魔物が多くて危険だからこうして依頼を出しているってことか」
「うん。これなら魔物を倒す必要はないし、気軽に探索できるんじゃないかな」
ダンジョン付近ということで以前のように魔物に襲われる危険性がないとは言えないが、ダンジョンに直接乗り込むよりかははるかにましだし、それくらいの要素はむしろ面白そうだとも思える。
緊張感はいらない、なんていってもあまりに何もないと詰まらないし、先日行った感覚だとあそこらの魔物は今の俺たちにとっては楽に倒せる相手だからな。
「かなちゃんも、これでいい?」
「ん、森は好き。司と初めて会った場所」
「そっか、良かった。じゃあ受けてくるね」
「おう」
かなが満足そうに首を縦に振ったのを確認すると、黒江はカウンターのほうへと向かって行った。
それからしばらくして黒江が戻ってきてから、俺たちは再びダンジョンへの道のりを進むのだった。
それそれから一時間ほどかけて目的地にたどり着くと、俺たちは事前に聞いていた特徴を頼りに薬草を探し始めた。
「こんなんで少しでも金になるなんて、正直驚きなんだが」
「まあ、必要としている人がいるからね。あ、ここにもあった」
「司ー! 見つけたー!」
行ってみれば驚いたことに薬草はそこら中に生えていた。取り放題といっても過言ではないほどで、価値のある薬草とは到底思えなかった。それでも特徴的に間違いではないだろうし、詳しい事情を知らない俺が色々言っても仕方ないだろう。
「ここらの薬草は魔力をよく取り込んでて、適切に取り込むと体の魔力の循環を良くするんだって。見習いの魔法使いとか、若い子どもがよくなる魔力過剰反応症候群、ってやつに効くんだって」
「この世界でそんな現実的な病名効くとは思わなかった」
と言うか、病名が定められているとは知らなかった。
「まあ、ここらの人は結構なるし、それなりに症状が酷い場合もあって、最悪死んじゃうような病気だからね。感染症とかでもなくて、発症する原因も詳しくはわかってないからこの薬草の価値は結構高いらしいよ。それに、魔力が濃いところじゃないと生息できないから、魔物が多いダンジョン周辺に生えてて、一般人が取ろうとするには危なすぎるんだよね」
「へー、結構大変なんだな。それじゃあ、たくさん取って帰らないとな」
「うん」
「かなも頑張る!」
と言うことで各々手分けして薬草収集を開始した。度々目に見えない魔物に襲われるものの、気配を察知できる俺とかなは楽に倒せるし、黒江も姿が見えなくても一言言ってやれば的確に倒している。近づいたことさえ伝えれば大体の位置を察して攻撃する当たり、スキルでないにしろ鋭い感覚を持っているらしい。
勇者というのは伊達ではないなと、改めて認識した。
「ふう、まあこんなものかな」
「うん、十分だと思う。依頼されていた量より、結構多いけど。まあ、多くて損することはないよね」
「ん、頑張った」
そんなこんなで帰りの支度をしていると、少し離れたところに魔物が集まっている気配を感じた。違和感を覚えて意識を集中させてみると、小柄な人型も確認できた。
「ん? ちょっと待ってくれ。子ども? が魔物に襲われてるかもしれない」
「え? こんなところに? あり得なくない?」
「いやぁ、気配があるし……確認だけしないか?」
「わかった。本当だったら大変だし、急ごうか」
黒江に促されて気配のした方に全力疾走。
ほんの数秒もしないうちに視界に入ったその人型は、確かに人間の子どもであった。そして目には見えないが魔物が確かにその子どもを囲んでいた。
子供はそれに気づいておらず、しゃがんで何かをしているようで――
「ほ、本当に子どもが!?」
「黒は子どもを、俺とかなで魔物は倒す」
「わかった」
「ん、行く」
子どもまでの数十メートルを一瞬で駆け抜け、すぐさま役割を全うするため行動を起こす。
「お兄ちゃん達誰!?」
子どもがこちらに気付いて声を上げるが、構わず黒江は子どもを抱きかかえて一気に踏み込んでこの場から飛び出す。そして子どもを狙っていた魔物たちが標的をこちらに移したところで、かなとともに一掃する。
しばらくしてから黒江が子どもを連れて戻ってくる頃には、十何匹もいた魔物たちはみな倒れされていた。
「お疲れ、お兄ちゃん」
「おう、一件落着、ってな」
「いい運動になった」
一人何が起こったのか理解できていないように首をひねる子どもを置き去って、俺たちは三人でハイタッチした。
バレンタインデーなんて知らない、とは言ったものの周りの雰囲気に合わせてチョコレートでも食べようかな、なんて思ったのですが私はチョコレートは苦手です。なので抹茶チーズケーキを食べてます。
美味しいです。
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