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クロとの再会

 お久しぶりです。本当に一週間に一回の更新ペースで申し訳ございません。一週間以内に新人コンテスト用の新作だします。良かったら読んでください。

 

 第百七十二部、第六章第十一話『クロとの再会』です。どうぞ!

 みんなで日が暮れるまで騒ぎ立てた後、俺は黒江が泊っているという宿に来ていた。隣の部屋を借りて、とりあえず黒江の部屋に向かう。

 他のみんなはカレラに任せて、かなだけ連れてきた。黒江の仲間の二人も別に宿をとっているらしいため、俺は黒江とかなの三人で話が出来るわけだ。


 ノックをして、声をかける。


「黒、入っていいか?」

「あ、お兄ちゃん? どうぞ」


 返事があったので扉を開けて中に入れば、昼間には身に着けていた装備のほとんどを外したラフな状態でベッドの上に座っていた。かなを中に入れ、後ろ手に扉を閉める。


「あ、かなちゃん、こんばんは」

「ん……」

「あー、かなはもう眠いみたいだから、かなとの話は今度でいいか?」

「りょーかい。かなちゃん、ここで横になっていいよ」


 黒江がベッドをぽんぽん、と手で戦きながら言うと、かなは片目を擦りながらベッドに向かい、横になる。丸まって、すぐに寝息を立て始めた。昼間騒ぎ過ぎたのだろうか。


「寝ちゃったな」

「うん……相変わらずかわいいね。でも、あのかなちゃんが擬人化か~、お兄ちゃん、何をしたの?」

「俺が何かしたわけじゃない。一応、俺はなんとなく俺たちがこの世界に来た理由を把握できた。一から説明してやるよ」

「……うん、よろしく」


 黒江はどこか悲しそうな顔を浮かべながら頷いた。やはり、何も知らずに、予兆もなく知らない土地に来たことも、元居た場所を離れたことも辛いものがあったのだろうか。


「じゃあ、早速話すよ。まず、俺たちがこっちの世界に来れた理由だけどな――」


 そんな感じで知っている限りのことを話していく。憎たらしい神のことを非難したり、大雑把な神がいかにふざけているかを身振り手振りで説明してやると、黒江も少しだが笑みを浮かべてくれた。何やってくれてんだ! なんて笑いながら許せるようなことではないが、少しでも面白おかしく言ってやれば、気が紛れるだろうか。


「そんなわけで、俺たちはこっちの世界に来て、それぞれ特殊な力を与えられたみたいだ。そして、かながこうなった理由だけど、これもどうせ神のやろうが適当に決めたことなんだろう。でも、間違いなくかなだよ」

「そっか……うん、何となく理解できた。とりあえず、その、ソトって言う創造神が全部悪いんだね」

「ま、そういうわけだ」


 久しぶりの再会だというのに、どうにも気まずい空気が続いている。昔のノリに戻るには、もう少し時間が必要か。


「なあ、お前はこっちに来てから何してたんだ? 勇者になったらしいけど、たぶんそれも神からもらった力だろう。突然もらった力を、ちゃんと使えてたのか?」


 純粋に気になったのと、話題を広げたい、なんて理由で発した言葉に、黒江は意外と食いついた。


「あ、それね! なんかね、目を開けたら目の前に怪物がいてさ。その怪物と戦ってる人がいてさ! 攻撃されてて、何かしなきゃ! って思ったら急に目の前に剣が現れてよくわからなかったけど適当に振ったら光の斬撃が飛び出して、その怪物を真っ二つにしたんだよね!」


 よくある俺つえーな気がするが、自分でやったのなら興奮もするだろう。黒江はかながベッドで寝てるのも忘れてベッドを揺らしながら嬉しそうに話した。


「その時助けたのが、テトだったんだよね。でも、驚いちゃった。テトは凄い大怪我を負ってたのに、それを一瞬で治しちゃんだから。聞いたら、治癒の勇者だって言うから、勇者って何? って聞いたら、不思議そうな顔されてさ。その時はまだ別の世界に来たんだ、って実感がなくて、だんだんその時のことを把握していってたら、頭痛くなっちゃってさ。頭押さえてうずくまってたら、その痛みすらテトは治してくれてね! ――」


 黒江はその後も、楽しそうに今まであったことを話してくれた。

 その後、テトと共に街に向かい、冒険者になったこと。冒険者として活動するうちに、自分の力が特別なものだと気づいたこと。様々な依頼を熟したり、強いモンスターと戦ったりと言う思い出や、たくさんの出会い。そんな中で出会ったリウスのことも。

 そのリウスが探知の勇者を名乗ったことで、改めて理解した勇者について。そして、黒江自身が勇者クロと呼ばれるようになった出来事についても、楽しそうに。


 それを見て、俺は心底安心できた。こっちに来て、不安だらけで押しつぶされたりしていなかったか、心配だったから。でも、こうやって楽しそうに話を出来るってことは、きっと、そうではなかったということだろう。

 俺より苦しんでたり、悲しんでたり、悩んでたりしてないか考えていたが聞いてる限りだと杞憂だろう。まあ、初めて出会ったのが人だったというだけで、俺よりは幾分かましだろう。俺はしょっぱなから鬼人とやらに誘拐されたからな。


「あ、そうだ! お兄ちゃんのことも教えてよ! なんか、色々と面白そうだし!」

「人の苦労を、面白そうで片付けられても敵わないが……ああ、もちろんだ。俺の武勇伝を聞くがいい!」

「よ! お兄ちゃん!」


 ほんの少しだけ、俺たち兄弟のノリが戻った気がした。


 その日は夜通し二人で笑いあった。黒江も勇者になったことで睡眠時間が限りなく少なくても生きていける体になったらしい。一晩中続いた談笑は静かな夜を彩った。

 もうしばらくローペース更新が続きますが、ご了承ください。


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