勇者
実はこの六章がこの作品で一番書きたい部分だったりするんですが、新人コンテスト用の作品に苦戦中です。更新ペースは引き続き遅めになると思いますが、お付き合い願えると嬉しいです。
第百七十一部、第六章第十話『勇者』です。どうぞ!
「さて、それじゃあ今度は私の仲間の紹介だね。まず、私は黒江。ここらでは、勇者クロ、って呼ばれる!」
「ん?」
俺たちの自己紹介を終え、黒江たちの番になった。それで黒江が自己紹介を始めたわけだが……今、なんつった? 勇者?
と、そこで俺は思い出す。ここに黒江がいるという情報をアリシアが教えてくれた時に言った言葉を。
『はい。黒髪黒目で、特殊能力、と言うより勇者として活動している方がリセリアルにいるそうです』
と言っていた。それに、俺自身黒江が勇者として活躍してる、と認識していたはずだ。だが、待ってくれ。黒江が、勇者? 今更になって俺はとんでもないことに気付いてしまったような気がした。そのことについて黒江を問いただそうとして、黒江がそれを遮るように隣に座る男を指差した。
「で、こっちがテト。治癒の勇者です」
「テトと言います。よろしくお願いします」
「え?」
「さらに向こうのがリウス。探知の勇者!」
「よろしく」
「は?」
一人目の男は優しそうな顔つきの、白い服を着た聖職者のような印象を持たせる美男子。茶髪で茶目だが、日本人のようには見えない。
もう一人は長身で物静かな印象の青年。年は俺より少し上くらいだろうか。濃い紫色のような髪を持っており、外見は長身なのも合わさってかなり目立ちそうだ。そして、これまたかなりのイケメン。
いや、そんなことはどうでもいい。黒江は今、何と言った?
「これぞ本物の勇者御一行ってね!」
「やかましいわ!」
突然ふざけた調子で言ってきた黒江に思わず突っ込みを入れてしまう。
「おお、相変わらず切れがある突込みだね、お兄ちゃん」
「お前がボケだすと止まらないからな……というか、マジで?」
「うんうん、勇者パーティーだよ。私も、なんだかわかないけど勇者らしいしね」
「……まあいいか。そういう話は、後で聞けるか?」
「うん、もちろん」
どこかぱっとしない笑みを浮かべた黒江に、俺は何かあると察することが出来た。だから、この場では深く追求しないことにする。
「さて、それじゃあお互いの自己紹介が出来たな。なあ、友好の証しとしてパーティでもしないか?」
「いいねぇ! 二人とも、今日は依頼を探すのは無しだよ! 私とお兄ちゃんの再会を祝ってお祝いだ!」
「自分で自分を祝うバカがいるか! でもまあそれもいい! お前らも、好きなもん頼んでいいぞ!」
俺の言葉を聞いて勢い良く立ち上がり、ハイテンションで言ってきた黒江に合わせて俺も立ち上がり、これまたハイテンションで言う。俺の仲間も黒江の仲間も乗りが悪いのでそれ以上立ち上がるやつはいなかったが、不満を抱いているような奴もいなさそうだ。
と言うわけでギルドの酒場で宴が開かれた。
かなとルナが相変わらずの暴食を披露し、カレラが滅多に口にしないらしい庶民料理に戸惑い、俺と黒江の下らない漫才を繰り広げながら楽しい時間が過ぎてゆく。
黒江の仲間のテトとリウスも割といい奴で、黒江が仲間と呼ぶだけあるなと思えた。テトは印象通り積極性はないが話を振れば応えてくれるし、リウスも自分から口を開くことはなく静かではあったが別に冷たいわけではない。料理を取ってくれと頼めば取ってくれるし、話しかければ口数こそ少ないが応えてくれる。もともと寡黙な奴なんだろう。
ちなみに、テトのステータスだけはこっそり覗けたので確認しておく。
種族:人間・勇者
名前:テト:固有権能《万能体質:物理攻撃以外でダメージを受けない》
レベル:59
生命力:9283/9283 攻撃力:4209 防御力:9412 魔力:10293/10293
状態:正常
スキル:魔術・治癒Ⅹ、魔術・神聖Ⅵ、自然治癒Ⅳ、魔力自動回復Ⅳ、魔法無効、精神攻撃無効、状態異常無効、即死無効
権利:基本的生物権、自己防衛の権利、自己回復の権利、魔術使用の権利
称号:治癒の勇者
驚いたことに、平均ステータスではアリシアを超えていた。スキルが攻撃的じゃないだけにそのステータスのすべてを活用できるかと言われたら微妙だが、流石は治癒の勇者。癒すことに関してはエキスパートのようだ。それに、とんでもない固有権能を持っている。
《万能体質:物理攻撃以外でダメージを受けない》
魔法や精神攻撃を受けない、と言うことだろう。もしかしたら毒とか炎とかも効かないかもしれない。治癒魔法はカンストだし、神聖魔法も使える。恐らく、ある程度の攻撃も出来てしまうのであろう。と言うか、スキルにそもそも魔法無効と精神攻撃無効、状態異常無効や即死無効がある。
《否。これらの無効系スキルは《万能体質》によって与えられた付属スキルです》
おっと、しんさん訂正ありがとう。最近声を聴いていなかったが元気してるだろうか。いつもお世話になってます。
さて、てなわけでテトのステータスだが、えげつないことは分かった。黒江のステータスもちらっと見たが、正直頭が痛くなるレベルだったのであとにしよう。
そして、リウスに関してだが。
こいつのステータスは覗かせてもらえそうにない。俺が解析鑑定を使おうとしたとき、殺気のようなものをリウスから感じたからだ。しんさんにもスキルを使ったことを感づかれた可能性があると警告された。連続で仕事してくれてありがとう。
探知の勇者と言っただろうか。その探知の能力で、もしかしたら気付かれたのかもしれない。と言っても何を言われたわけでもないし、何かスキルを使われそうになったと気づいただけで、誰がやったかはわかっていないのかもしれない。放たれた殺意も、俺を明確に指すものではなかったように思う。
それに、そのあとすぐにその殺気は引っ込んだ。これはセーフだろう。
そんなわけで、色々ありながらも俺たちは宴を楽しんだ。
黒江ちゃんと司との絡みを色々と書きたくてうずうずしてます。
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