ルナとの再会
この作品の更新が最近遅いのは、新人コンテスト用の作品を書いているから。どうもシファニーです。
第百六十七部、第六章第六話『ルナとの再会』です。どうぞ!
ルナが目覚めた。
突然だったが、あれからソルとしばらく話をしていたらベッドからのっそりと降りてきたのだ。その着物をはだけさせて。
「おいルナ、服」
「別に主に見られたところで減るものもないかの」
「相変わらずの減らず口だなおい」
今、うまいこと言った。
「そんなことないかの」
「なあ、ナチュラルに心読むのやめようって」
「それより、久しぶりかの。元気にしとったかの」
俺の戸惑うような声を半ば無視して、ルナはそんなことを言ってきた。俺は一瞬ペースを掴まれて動揺したが、すぐに持ち直して言葉を返した。
「ああ、おかげさまでな」
「そう。ならよかったかの。妾もそれなりに楽しくやっていたかの」
ルナは片目を閉じてそう言いながら服の縺れをそそくさと直した。流石にいつまでも身だしなみを崩しておくほどお粗末な性格はしていないらしい。
「妾は別にお粗末な性格はしていないかの」
「人の心無暗に呼んでくるだけで十分お粗末だわ」
久しぶりだというのにこのノリに全力で応えられている俺はすごいのではないだろうか。
俺たちのそんな様子を見て驚きの声を上げたのはソルだ。
「あんたたち仲良いわね。いえ、仲が良いとは聞いていたけどここまでとは思わなかったわ」
「まあ、こいつは人懐っこいからな」
「妾をペットみたいに言うんじゃないかの。……まあ、今まで見てきた人間の中では、一番面白い奴、と言うのはその通りかの」
なんだろう、珍しくルナがデレた気がした。
「調子のいいことを考えていると、寝首を搔かれる、と忠告しておくかの」
「おいおい物騒だな」
「そのノリ、私はついて行けないわ」
なんだかんだでお決まりのやり取りをしてやると、ソルが呆れた顔でそう言った。
「そんなことよりルナ、迷惑をかけたらしいな。この国を守ってくれてありがとな」
「お安い御用かの。頼まれたことであると同時に、なんとなく興味もわいてきたし、ちょうどよかったかの」
「興味?」
「そうかの。邪神教、とか言ったその集団、かなりこの国に手を回しているようかの。邪神、という名前から少し気がかりではあった、のだけどどうやらソルのそれとは関係なさそうかの。調べた限り、祭っているのは本当に邪神みたいかの。発足はソルの可能性もある、と付け加えておくかの」
「悪かったわね」
ルナが説明していると、ソルが不機嫌そうに言った。まあ、邪神呼ばわりされるのは良い気がしないだろう。と言うか、本当に話を聞いていたようだが、精神だけ起きているって結局どういうことなんだ?
「妾たちはそもそも魂だけで生活できて、且つ肉体は必要ない。それでもスキルの一部は体に宿るし、あったほうが便利だから肉体を持っている。と言うことかの。つまり、体がおまけだから体が眠っていても気絶していても、魂だけで且つできるわけかの」
「なるほど、ナチュラルに読心術使ってからの解説ありがとな。でも、心を読むのはやめてくれ」
「読みやすい思考をしている主が悪いかの」
「なめてんのか」
舐めた口をきいているルナに一言言ってやったが、どうしてだろう、すっきりしない。ああ、見た目があれだから子どもと口喧嘩してるみたいで興が乗らないのか。
「城ごと消すこともできるかの」
「なあ、物騒過ぎないか? ただの口喧嘩だろ?」
「ねえ、私の分からない次元で面白いことしないでくれない?」
相変わらず独自のコミュニケーションを築く俺とルナの会話に遂にソルが突っ込みを入れてきた。よくやった、これでうやむやに――
「覚えておくかの」
「数千年生きてるくせに下らないこと覚えんじゃねえよ」
「だから、やめてって言ってるでしょ?」
こんな感じのやり取りが、もうしばらく続いた。
「まあいいか。そういうことを調べるためにも、リセリアルに行こうって話になったわけだ。ついてくるか?」
「まあ、あんまり妾たち魔獣が人の街に入るのは良くない……」
と言いかけてかなとソルをルナは見た。特にソルに対しては呆れたような視線を向けた。
「はずだけれど、まあいいかの。妾もここまで付き合ったわけだし、最後まで付き合うかの。ただ、あんまり戦力としては期待してないでほしいかの。妾が人間たち相手に本気を出したら、世界のバランスを壊しかねないかの」
「そこらへんは安心しろ。俺とかなだけでも十分戦える」
「あと、人間との話も……ん? 主たち、喋れるようになっている、かの?」
「いや、気付いてなかったのかよ」
なんでこいつはこんなところでポンコツになるんだ。
「まあいいかの。あと、以前使っていたリルとの合体はやめたほうがいいかの。邪神教のやつらは、様々な魔法を扱うようだし、いつ見破られるかわからないかの」
「そうか。了解だ。だとよ、リル」
「む? なんだ、覚えていたのか」
「いやまあ、隣にいるからな」
とは言いつつも半ば忘れかけていたのは事実だが。俺は隣に座ってじっとしていたリルに言ってからルナへと向き直った。
「それじゃあ、そういうわけだからもうしばらく付き合ってくれ。ちょうど、俺の妹を探してるところだし、会わせてやりたい」
「それは、楽しみにしているかの。主の妹ならばさぞお転婆な娘かの」
「まあ、間違いない」
なんて、少しだけ黒江のことを思い出しながらそう言った。
さて、我らがルナお嬢様が、帰ってきました。たぶん、ここまでまともに読んだ人は、覚えてもない()
ルナちゃんはソルちゃんと同じで原初の七魔獣の一人で、銀髪碧眼の狼娘です。リルの始祖で、上から目線のことが多く、なぜか司の心を読みます。着物姿で、外見は穏やかな感じ、です。
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