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交渉という名の脅迫

 シファニーです。はい、こんにちは。

 

 第百六十四部、第六章第三話『交渉という名の脅迫』です。どうぞ!

 さて、かなをどっかへやってレナを黙らさせ、リルにも口出しをしないよう頼んだ後で俺は王様の前へと向かう。


「じゃあ王様、話をしよう。俺のことは覚えているか? 司というんだ。以後よろしく。で、だ。俺を亜人国代表と思ってくれても構わないし、亜人国との仲介役と思ってくれてもいい。ただ、俺への不敬は亜人国トップのエルフ族の長が許さないと覚えておいてくれ」

「わ、わかった。心得よう。司殿、と言ったな。我の言葉は、この国の意思と思ってくれて構わない。よろしいな」

「もちろんだ」


 俺は何とか厳格な態度を保とうとしている王様に軽く返す。出来れば、緊張を解いてくれるといいのだが。あの人、流石にびくつきすぎだと思うんだよな。

 俺だって王族を前にして背筋が凍る感覚ではあるが、国王と王女の隣にアリシアがいるだけである程度それはましになる。それに、始祖竜だとか巨神だとか、それこそ創造神だとかよりは何十倍も楽だ。

 

 俺は話を続ける。王様の前で立ち上がり、腰に手を置きながら言う。


「さっきそこのソルも言ったが俺たちはお前たちの国からの要望を全面的に受け入れる姿勢でいる。これは良いな?」

「あ、ああ……」

「そしてこちらからの要望は一つだ。俺たちの国への不可侵を貫け。お前たちからの詳しい要望については書類にまとめてくれ。後日確認し、それぞれ対応しよう」

「そ、それだけか?」


 俺のあんまりと言えばあんまりな態度に、それでも国王はただ厳格な態度を貫き、しかし不思議そうな表情を浮かべて聞いてきた。

 いやまあ当然だ。俺たちからの要望はあまりに少ないし、亜人国の懐はあまりに深すぎる。


 ただこれは、亜人の優位性がもともとあるからだ。政治的にも戦力的にも、何ならその国力のすべてにおいて亜人国はオレアスを超える。まあ、特に差が開いているのは戦力だが。

 それを有効に使えば亜人国はいくらでもオレアスを脅せる。そうなればオレアスは実質的に亜人国の言いなりだ。


 まあ最近はその国防をルナに頼り切っているし、肝心の最高戦力であるアリシアもルナには叶わない。いや、本来ならば亜人国で最強とされるのはリリアやその同僚たちなのだ。それならばギリギリアリシアでも運さえよければ勝てる程度、とリルは言っていた。

 しかしリルやルナ、一応ソルが亜人国側についたことで戦力は大幅に傾いたし、そもそも亜人国の本当の最高戦力であるネルは存在が公になっていないだけでアリシアより強いしな。


「立場を考えろって言ってるんだ、なんて言わなきゃダメか?」

「……いや。要望は書類にまとめて明日までには渡そう。数日、この国で過ごしてもらえるかな? もちろん、我が国最高級のもてなしをご用意させてもらおう」

「了解だ。……ふぅ、じゃあまじめな話はここまでだ。個人的な話をいいか?」


 俺、かなり頑張ったほうだと思うんだよな。


 高圧的な態度をとったのには理由がある。ソルのような無鉄砲でも手抜きでもない。

 暗に、とは言わないがオレアスには亜人国の傘下に入ってもらうことになるだろう。それを伝えたいのだ。ただ、公言するにはあまりにもリスキーな言葉だし、実質的、という形で済ませたい。先程、リリアから念話で届いた内容だった。


 どうやらソルには任せられないと思ったネルに頼まれたらしい。俺も、あいつには任せるべきじゃないと思う。それに、ソルが高圧的な態度をとったらそれは脅しを超えて拷問だ。

 普通の人間じゃあソルが放ってなくても殺気を纏っているように見えるだろうし。


 そんな大役をやらされた俺は王様に友達のような口調で話しかける。王様の緊張もほぐれてきたのだろう。少し落ち着いた様子で返してくる。


「聞こうか。貴殿には恩があるからな」

「ありがたい。まあ、ちょっとした人探しだ。俺の妹、なんて言ってもわからないだろうけど……そうだな、黒髪黒目で特徴的な力を持つ人間を探してほしい。たぶん、オレアスかリセリアルにいるんじゃないかな。出来そうか?」

「見つけると約束はできないが、手配は約束しよう。ただ、今はサキュラへの軍事支援が尾を引いて人手不足でな。報告は数か月待ってもらうことになるやもしれない。よろしいか?」

「ああ、よろしいよ。見つかり次第教えてくれ。もし見つからなくても、半年で捜索をやめてくれていい。こればかりは本当に個人的な依頼だからな。受けてもらえるだけでありがたいよ」


 俺は言うと静かに目を閉じ、息を吐いてからその場に膝をつく。そのまま王様に対して頭を下げ、言う。


「此度は我々の突然の訪問に対する寛大な対応をしていただき、感謝申し上げる。今後も良き関係を築きたいと思っている。良き返答、そして報告を待っている。それでは、我々は失礼する」

「ああ。アリシア、後を頼む」

「かしこまりました、お父様」


 王様の名を受けて俺の横に立ったアリシア。それを確認した俺は立ち上がり、王様に軽く頭を下げてから背を向け、扉へと歩き出す。途中で静かに待っていたソルを回収し、謁見の間を後にした。

 司君、成長してますかね?


 

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