現世への帰還
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第百六十二部、第六章第一話『現世への帰還』です。どうぞ!
「えっと、じゃあもう帰っていいよ」
「雑か?」
ソトの言葉に俺は思わず素で返した。
「いやいやいや、だって僕の性格は分かっているだろう? 別に神々しくなんてないし中身は普通の人間とそこまで変わらないんだよ。神聖さなんてきっと人間の司祭とかのほうが持ってるね」
「神としてそれでいいのか?」
こいつ、本当に神か? 偽物じゃないだろうな。なんて今更だな。ここにいて、そしてあの巨神を操って見せただけで神だって証明には十分すぎる。俺はそこまで馬鹿じゃない。
「よし、帰るか」
「君こそ軽すぎじゃない?」
「うっせぇ。かながおねむなんだ、ネル、どうやって帰るんだ?」
隣で眠そうに目を擦るかなの頭を撫でながらネルに聞く。ネルは面白そうに小さな笑みを浮かべてから言った。
「では、帰りましょうか」
そのネルの言葉の直後、俺の視界は暗転した。
直後、俺たちはネルの城の謁見の間へと移動していた。
「虚空の門と呼ばれるあらゆる次元を通過して目的の場所へと移動できる私の魔法ですが、どうでしょうか」
「テレポートとは本当の意味で次元が違うってことか……。流石だな」
こんなところでもネルの優秀さを体感できるとはな。ネルは嬉しそうにほほ笑んでから謁見の間の王座へと向かった。そこに腰掛け、俺たちを見下ろした。
「今回、私の依頼に応じて神への謁見を手伝ってくれたこと、心より感謝します。すでにお礼は準備していますが、今回の活躍は想像以上でした。何か欲しいものがありましたら、私の力を尽くして探し出しましょう」
優しい笑みで、それでも威厳を持って言って見せたネルに俺たちはそろって口元を緩めて言った。
「いらないよなぁ?」
「ええ、貰う意味がないわね」
「そのお言葉だけで、私は満たされております」
「んあふぁ」
誰もネルに物申す者はいない。決して誰も褒美目当てに付き合ったわけではない。リリアは忠誠心から、かなとソルは好奇心から。俺もほんの少しの好奇心と神に聞いてみたいことがあったから。リルは俺の付き添い。ネルが頼んでこなくとも、意地でもついて行くメンツだっただろう。
「そうですよね。どうせそうだろうと思いました。私とソル、そしてルナの使命であったはずですが、リリアや司殿、リル殿、かなさんが助けてくれたこと、心より感謝します。私は、この恩を生涯忘れないでしょう。何か困ったことがありましたら、お手伝いしますからね」
ネルはそう締めくくり、この場をお開きとした。
「また会いましょう、司殿、リル殿、かなさん」
「ああ、またな」
眠そうなかなといまだ俺と一体化しているリルの代わりに俺が挨拶を交わし、事後処理のために残るというリリアを置いて俺たちは謁見の間を出た。
「司、あんたはどうする?」
「と言ってもなぁ。俺はリリアの従者という立場だし、リリアがいないんじゃやることもなぁ……」
(司殿、ルナ嬢を忘れているのではないか?)
「ああ、ルナ! そういえば俺たちはリリアを連れに帰って来たんだったな」
先ほどまで口を噤んでいたリルの言葉で俺はソルとの遭遇や始祖竜との対峙、神との訪問でうやむやになっていた本来の目的を思い出した。いや、これだけの出来事があって瞬時に思い出せたリルのほうがおかしいのではなかろうか。
「え? どうしてリリアを連れて行くの?」
「いや、人間の国と交渉ができそうでな。ルナは、まあいわば交渉をしに行きますから、という約束代わりに置いてきてな。早めに迎えに行ってやらないといけないんだ」
「……あんたたちがこっちに来てからそろそろ一か月が経つけど?」
「…………気にするな。人間に興味があると言って置いていかれてもいいと言ったのはルナだ」
しかし、待たせ過ぎという言葉にも賛成だな。だけど、リリアはまたしばらく動けなさそうだし……。
そんなことを考えてるとソルがため息をついてから言った。
「ネルと私は念話が長距離でも通じるし、私が代わりに交渉だかを交わしてあげましょう。どうせネルかリリアが行くことになるなら私が行っても同じでしょ?」
「いや、それはそうだが……お前、別にここの出身でもないだろ?」
「ネルとは姉妹みたいなもんだし大丈夫よ。移動中にネルとの話は付けるわ。ルナを待ちぼうけさせるのも可哀想だし、早速向かいましょうか」
「えっと、かな、大丈夫そうか?」
隣で俺の服の袖を掴んでうとうとしているかなに聞く。するとかなは突然跳ね起きるように目を見開いてこちらを見た。
「司、喋ってる?」
「え? いや、そうだけど?」
そんなに不思議なことか?
(司殿、自分が今まで抱えてきた負担を忘れたか?)
「それってどういう……って、あああぁ!? 本当だ、喋れてる!」
ついさっきまで天界で普通に喋っていたから意識になかったが、俺、普通に喋れるようになってる! ということは……。
「かなも喋れてるのか!」
「司! かな、お喋りできてる! 司、司、司!」
嬉しそうに俺の名前を連呼してキャッキャっと跳ねるかなは飛びっきりの笑顔を浮かべていた。こっちの世界に来てからかなり経ったが、俺はやっとの思いでまともな意思疎通を出来るようになった。
本当にやっとの思いでここまで物語を運びました。ここまでの展開はしっかり頭の中で描いていましたし、あらすじというか簡単な説明では完璧にできていました。それでもストリーやキャラがうまく書けず、自分の文章力のなさに悩まされたこともありましたが、何とかたどり着きました。さて、後半戦のスタートです!
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