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冥府の力

 総合pv600000突破ありがとうございます!

 第百五十九部、第五章第二十話『冥府の力』です。どうぞ!

 暗黒虎ネル。原初の七魔獣、いわゆるこの世界の最強に名を連ねる彼女は無限と虚無と司っている。魔力は無尽蔵、攻撃は神出鬼没、防御は絶対。精神攻撃にも優れており思考誘導や金縛り、混乱状態にさせることもお手の物。例えばソルが対大人数が得意な戦車なら、ネルは一対一最強の騎士である。彼女が有する固有能力《器用者》は手先を隠すことができる。これにより剣術の軌道、発動した魔法の種類や手にしているものの特定がほとんど不可能となっている。もし、ネルの目の前にいるのがただ強いだけの相手だったのなら、ネルが負けることはなかっただろう。


 そう、だから。


「今回は相手が悪かった、ですね」


 例えば、そう。巨神がもう少し小さく、ネルの攻撃一発で切断できる弱点を持っていたとしたのなら。巨神は瞬時にネルに殺されていただろう。首、目、心臓。そのどれかが巨神にとっての弱点だったのならよかった。だが、巨神は肉体が大きすぎてそのどれもが決定打とならない。例え大動脈を切ろうとも、それこそ心臓を貫こうとも。恐らく巨神は倒れないだろう。対人戦において最強を誇るネルだが、相手が神だというのなら、例外もあるというわけだ。


「一対一で負けるのは、屈辱的。せめて、爪痕だけは残させていただきましょう」


 ネルの詠唱魔法。それは多重の精神異常を相手に付与する魔法だ。本来であれば精神に異常をきたし、常人であればすぐにでも失神し魔獣であれど死に至る。強力な魔人ならば死ぬことはなくともあまりの苦しさに自分から死を選ぶだろう。もちろんネルとて安易に使うような魔法ではない。その実情のほとんどは理解できていない。ただ、一度だけ行った大量虐殺。亜人の国建設のために築かれた屍の山を作り上げたこの詠唱魔法。広範囲に波紋のように感染していった精神異常。数万を超える生物たちが瞬く間に死んでいった。ネルはそれ以来、詠唱魔法を使っていない。もう、千年近く前の話である。


「腕はなまっていないし、効力だって落ちていない。直接的な殺傷能力がないから、精神も強力な巨神にどの程度の影響があるかはわからない。でも、少しでも巨神を苦しませることができるのなら、抗えたと胸を張れる。ならばこそ、私はこの力を使いましょう」


 巨神の攻撃をいなし、魔法で注意を引きながら空を駆け、さらには詠唱魔法の詠唱をしながら決意を固めるように言うネル。その技術、まさしくこの世界一。最強と呼ばれるものの所以。


「魔術・冥府、秘奥義《虚無双》《幻夢郷》《失限魔》……詠唱魔法ナイトメア・カオス


 魔法陣は三つ。紫色に強く輝く巨大な紋章。束になり、巨神を覆うように巨大化し、弾けて消えた。直後、巨神を光が包み込む。紫、いや黒。違う、それすらも生温い。色などない、漆黒、とも違う。例えば、そう、すべてを飲み込んでしまうようなブラックホール。まるでその光のある空間が丸まる消えてしまったかのように錯覚する光。……光ですらないかもしれない。それ(・・)はしばらくして消失する。

 その光に包まれていた巨神は健在。それはそうだ、あくまで精神攻撃なのだからな。果たして、異変は?


「ぐああああああぁぁぁぁッッッ!!!」


 突如、巨神が両手で頭を抱えて暴れ始めた。四方八方に魔力を放ち、地団太を踏みながら苦しみ、狂う。全身を振り乱し、まるで幽霊でも見てしまったかのような動揺。


「やばッ!?」

「ッ!? 《テレポート》」


 その動揺の傍らで振りまかれる魔力がこちらに飛んできて、俺はとっさに影空間に逃げ込んだ。周りにいたソルとかな、リリアの三人も瞬時に転移魔法を発動。巨神から逃げながら詠唱魔法を発動するという偉業をやってのけたネルもまた想定内だと言わんばかりのスムーズさで巨神から距離を取っていた。


 しばらくすると巨神は膝から崩れ落ち、頭を抱えながらもがき苦しむ。魔力の放出が収まったのを確認し、俺たちはいったん集まることにした。


「やはり、決定打にはなりえませんでしたね。いったん大人しくなってくれたので、無意味というわけではなかったですけれど」


 集まって早々ネルが口にしたのは反省の言葉だった。どこか謝罪じみていたが、何もしてない俺が謝られると罪悪感がわいてくるな。そして、そんなネルに言葉を返したのはソルだ。


「まあ、十分なんじゃないかしら。他の私たちだって大した戦果を得られなかったわけだし。そんなことより、これからどうするかよね。こうなってくると、結局司が最初に言っていた作戦に頼るしかなくなるのかしら」

「うーん、どうなんだろうか」


 ソルが言っているのは俺の起死回生のことだろう。確かにあれは自分よりもはるかに強い相手に勝つことができる手段にはなりえる。しかしそれはあくまで途轍もない確率を潜り抜けた先の話だ。これに頼りきりの作戦はそれすなわち運頼みだ。宝くじで一等を何百回連続で当てればいいんだ、という確率でしか発動しないっぽいこのスキルを本当に頼っていいのだろうか。


「というより、最初からそうするべきだったのよ」

「え? どういうことだ?」

「だって考えてみなさいよ。そんな神のやつがお遊びで作ったようなスキルで、あいつご自慢の守護神を倒せるのよ? 爽快だと思わない?」

(まったくその通りだ)

「うおっ!? 急に声を出すなよ……」


 ソルの意見に賛成だったらしいリルが突然声を発してきた。まあ、確かに神が遊びで作ったようなスキルで殺された張本人からしてみれば、他のやつにもその屈辱を味合わせてやりたいと思うのは仕方がないのかもしれないけれど。


「まあ、みんながそれでいいならいいけど」

「私は大丈夫よ」

「かな、もう眠くなってきた。早く帰ろ?」


 リリアは軽い調子で言い、かなは目を擦りながらあくびをかみ殺していった。いや、みんな一応神と戦ってるんだよね? リリアはともかくかなは元ただの猫なのだが、肝が据わりすぎじゃないだろうか。本当にこの子俺が育ててた子猫だよな?


「しかし、どっちにしてもそれしか方法がないみたいだし、もう少し試してみるか」

 最近やることが多すぎてアニメを見る時間がありません。誰か助けてください。


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