凍える世界
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第百五十六話、第五章第十七部『凍える世界』です。どうぞ!
俺は高らかに手を掲げた。
「氷影よ永遠に。《パーペ・チュアル》ッ!」
影空間は世界に大いなる闇をもたらす。光も、熱も何もかも。闇に覆われればすべてなくなる。それは凍える世界を生み出す。コキュートス・フィールドの名のもとに。時間すらも、凍り付く。
世界が、白く染まった。
「影の性質は絶対の光遮断。氷はそのまま。空気中に漂う魔力のすべてを司水者で水に変換し、凍らせることで熱を持つ魔力も空気もすべてがなくなる。摩擦が消え、時間すらも止まる。分割思考で一週間以上詠唱を続けておいたかいがあったってもんだ」
(逆にどうしてそこまでかかるんだ。我のコキュートス・フィールド自体は一分も詠唱にかからないぞ?)
「それと一緒にするな。お前のはすべてを凍らせることで時間を止めているが俺のはすべてを完璧に冷やした後で凍らせてるんだ。こうすることで絶対に脱出できないようにしているし、維持にかかる魔力を減らしているんだよ」
(効率が悪いな。だが、いいだろう。これならば時間冷凍以外に魔力を割ける)
白く染まった世界の中で動くものはない。時間すらも止まり、俺自身の体も凍結している。しかし分割思考を使っている俺はリルと魔術・精神を使うことで共鳴し、会話をしている。リルはそもそもが精神体なので問題ない。俺は今リルの精神体と疑似的な五感を共有することで辺りを確認し、会話をしている。そして、巨神の体が削られていくその姿を鑑賞している。
ネルやソル、リリアとかなも凍り付き、動かない。もちろん、恐らく事前準備をしていなかっただろうから凍ったことにも気づいていない。魔力感知や気配察知も、魔力のすべてが凍り付き五感を刺激するものの動きも止まったのだから意味をなさない。それでも使用まで一週間はかかる。魔力も毎日全体の半分ずつ持っていかれる。だが、神に会うと聞いて何かあっては困るというのと分割思考に慣れるための訓練として実施しておいてよかった。
白く凍り付いた世界。漂う白い粉はダイヤモンドダスト。魔力を操れるのは俺だけだ。それを巨神の体にぶつけてもダメージはないだろう。だが、毎秒数億という単位で攻撃できる。そのどれかにでも起死回生の効果が働けば、巨神は倒せるというわけだ。しかし、この世界の維持も永遠ではない。僅か五分である。
「コキュートス・フィールドも同じくらいだよな?」
(そうだな。時間は進まなくとも経過する。それだけの時が経てばこの空間は壊れるだろう。凍り付いた魔力は熱を持ち、すべての物質は再び正常に動き出す。その間に、どれだけ攻撃できるかだな)
「ああ、まだ発動した感覚はないけどな」
すでに四分が経過した。攻撃した回数で言えば二百億を超える。それだというのに、巨神は死なない。
「起死回生って確率どれだけ低いんだ……」
(我はなぜそれほどの確率を一発で引いたのだ?)
「正確には一発じゃなかったがな。運が悪かったな」
(それですむものではない……というより、これは無駄骨だったようだな)
リルの言う通り、今まさに五分が経過したところだ。世界は一瞬で光をとり戻す。熱を放ち、再び世界はオレンジに染まる。なんということだろう。巨神は健在だ。
「まったく、思いのほかうまくいかないものだな」
(そのようだ)
リルは淡々と言うが俺的には落胆がひどい。一週間かけた大型魔法だぞ? 何の意味もなかったんじゃあ空しい以外の何物でもないじゃないか。
なんて考えていたところにソルが近寄ってきた。
「司? 何をやったの? 流石に何かがあったってことは分かるわよ?」
「ああ、一応やれるだけやったよ。俺が使える最強の魔法を使ってやったんだ。だけど成果はよろしくないよ」
「そのようね。まあいいわ。まだやり足りない?」
「いいや、こうなったらお前たちの好きにやってくれ。一応、俺たちも手伝うけどな」
「任せなさい。ここから先は、私たちの番よ」
巨神は健在。ぴんぴんしている。ダメージ一つ負っていない。何百億回と攻撃しても意味がない。それでも、まだ諦めるには早い。
「さあて、ここからが本番だな」
「ええ。やってやるわよ」
ソルは頼もしく言って見せた。
やはりどうにも物書きの才能がないようです。これから頑張ります。
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