ロイヤルクリスタル
お久しぶりの更新です。ネット活動の一番の障害ってほとんどの場合家族ですよね。どうもシファニーです。
第百五十三部、第五章第十四話『ロイヤルクリスタル』です。どうぞ!
天から降り注ぐは大いなる拳。巨人の名を関するその存在は世界はこう呼ぶ。巨神アトラス、と。
再び天の雲が裂け、光が注いできたかと思えばあたりは影に覆われた。そして感じた。その強大な魔力を。見た。強靭な肉体を。
全体的に盛り上がった胸板をあらわにし、腰巻をつけている以外は碌な装備を身に着けていない。顔はまさに鬼の形相。とても人のそれとは思えない。悪魔と言われても違和感はないだろう。しかしその真髄は神である。
種族:中位神・巨神
名前:アトラス:固有権能《天を支える者:あらゆる圧力に対して強い耐性を持つ》
レベル:98
生命力:90192/90192 攻撃力:83911 防御力:110298 魔力:72841/72841
状態:正常
スキル:自然治癒Ⅹ、魔力自動回復Ⅹ、物理攻撃耐性Ⅹ、魔法耐性Ⅹ、状態異常耐性Ⅹ、精神攻撃耐性Ⅹ
権利:基本的生物権、自己防衛の権利、自己回復の権利
簡潔で完璧。まさに俺が考えた最強の生物、とでも言ったところだろうか。圧倒的な魔力を放ち、威圧しながら降りてくる。俺たちは思わずその場を離れ、遠くで降臨を見守る。そして巨人がゆっくりと降り立ち、足をつけた時。地面が揺れた。はっきりと言おう、あいつは格が違う。ソルやルナ、ネルとかエルダードラゴンとか悪魔とか。そんな次元の話ではない。ありとあらゆる面で、最強と言えるだろう。
全長二十メートルを超える巨体。鍛えられた肉体を見れば、捕まった時点で握りつぶされるとわかるだろう。魔力を乗せた拳を放てば、コンクリートで固められた城ですら一撃で粉砕されるだろう。そう、何のスキルを使わずとも。
それに加え固有能力だ。天を支える者。
《圧力を自在に緩和できる。これによる空中浮遊なども可能》
圧力をより高めたりすることはできないようだが重力を弱くして浮いたりもちろん攻撃を弱めたりもできる。あれだけ体が多きれば受ける重力もとんでもないのだと思ったが、これがあれば話は別だろう。だって、受ける重力をゼロにすることも可能なのだから。そして、あらゆる物理攻撃は圧力を失いダメージがゼロになる。その体質を何とか無効化して攻撃したとして、物理攻撃耐性Ⅹと自然治癒Ⅹがあり、なおかつ生命力が90000もあるアトラスには効果がないだろう。
一人で完結する破壊神。ありとあらゆるものを破壊し、すべて攻撃を無力化する。魔法であろうとも耐性がある以上総合的に回復量が勝つだろう。一目見て思った、こいつは強い。だが――
「勝てる」
俺は、確信した。
その時、アトラスが息を大きく吸った。それだけで大気は震え、並の生物ならば風圧にやられ死んでいただろう。そして、そんな吸い込まれた空気が吐き出される。
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」
リリアが起こす竜巻ですら生温い。ここが大陸の上であれば地面のすべてが抉り取れそうな勢いで咆哮があげられる。雲を吹き飛ばし、あたりに太陽の光が降り注ぐ。足元の雲も、一部は散り散りになった。天界がすぐに再生しなかったら、うっかり地獄に落ちかねない。あいつの行動は、たとえ攻撃でなくとも殺傷能力が高すぎる。
俺はというと、かなのエレメンタルフォース・アークプリズムで守られていた。ソル、ネル、リリアもまた個人で結界を張って防いだため無傷だ。みな一様に、笑みを浮かべていた。かなも隣で、少しだけ嬉しそうに笑っている。
「さて、誰が一番最初に行く?」
「ふふっ、久しぶりに全力が出せそうです」
「先代から受け継いだ魔法の技術も、相手がいなければ腐っていたかな? 全力を出しちゃうぞぉっ!」
「ん、本気出す」
横並びになった俺たちはアトラスを見据え、口々にそう言った。それを聞いた俺は、大きく息を吸い込んで叫ぶ。
「神殺しの称号は、俺がいただきだあぁぁっ!」
そして、飛び出した。もちろん、それを見たほかのみんなも駆けだす。
「全力・百重詠唱」
魔術・氷Ⅹ、最上級魔法。凄まじい量の魔力と脳神経が焼き切れるかのような集中力を要して発動されるその魔法を、分割思考を百個犠牲にし、空気中の魔力を司水者で操ることで消費魔力を押さえ、俺は空を覆うほどの魔法陣を浮かび上がらせた。
刹那、天界にいるすべての生き物の意識が止まる。空気が凍え、ダイヤモンドダストが起こる。司を中心にした半径約一キロ。その範囲にあるすべての空気に漂う水が凍った。そして氷は、放たれる。
全長二メートルを超える青く輝くクリスタル。触れるだけで体温が下げられ血液が凍り、内側から肉体を破壊される。そんな凶悪な氷が今、雨のように巨神に降り注ぐ。
何気に夏休み終わって初めての更新かも? これからはもっと頑張っていきたい……。
ブックマーク登録、いいね、評価、感想等頂けると幸いです!




