氷の剣士
お久しぶりです。シファニーです。総合pv51000突破ありがとうございます!
第百四十九話、第五章第十話『氷の剣士』です。どうぞ!
最後にネル。まともに戦っているところを見たことはなかったが、圧巻だった。
ソルのようなド派手さやルナのような残虐さは感じない。むしろ、見ているだけでは相手を本当に倒しているのかすらわからない。空から落ちてきた天使が地面に付き、散り散りになって消えるのを見届けるまで攻撃をしたということを理解することもできなかった。
種族:亜人・暗黒虎
名前:ネル:固有能力《器用者:手先を目視出来なくする》
生命力:5701/5701 攻撃力:29102 防御力:8091 魔力:9019/9019
状態:正常
レベル:79
スキル:森羅万象、魔術・空間Ⅹ、魔術・冥府Ⅹ、魔術・自然Ⅲ、魔術・精神Ⅴ、魔術・闇Ⅵ、魔力即時回復Ⅲ、分割思考、物理攻撃耐性Ⅳ、精神攻撃耐性Ⅹ、状態異常耐性Ⅴ、魔法耐性Ⅸ、即死耐性Ⅷ、剣術Ⅴ
権利:基本的生物権、自己防衛の権利、魔術使用の権利、自己回復の権利、世界の書閲覧の権利
称号:亜人の王《亜人の王に与えられる:特に効果無し》
それも当然。ネルの攻撃は基本的に腰に差している剣によるものだが固有能力の器用者の効果で手首より上は見えなくすることができる。あと、ルナの魔術・月光やソルの魔術・陽光のような枠なのだろうか。魔術・冥府というものがある。種族名が暗黒虎って時点で予想はしていたがどうやらネルは冥府属性らしい。冥府というのは地獄と天界と現世のほかに、もう一つだけ存在する世界でいわゆる亜空間らしい。地獄と天国、現世の三つの世界の間に存在する隙間を埋めるように存在しているらしく、真の意味で魂の形をコントロールし世界を循環させているのは冥府なのだとか。
そんな冥府の属性を持つネルからしてみれば、命はおもちゃにすぎないようで。精神攻撃耐性がない、もしくは弱い個体に対しては無類の強さを誇るんだとか。つまり、雑魚狩り特化ということだ。そういうわけで、この天使の大群との戦闘で最も多くの天使を倒したのはネルだった。
「我もそれなりに強いと思っていたが、あの二人を見ていると自信を失うな」
「俺なんてここにいるメンバーの中で一番弱いんだ。元気出せ」
「しかしだな、最近は憑依一体を使用することも多くなっただろう? 我単体の活躍はただでさえ少なくなっているのだ」
「活躍とか気にするんだな……」
そういうのを気にしないからここで一緒に見ているのかと思ったが。
「活躍を気にする、というよりはソル嬢やネル嬢と言った殿上人を前にしている今、実力を示すのは今後のためだと思ってな。しかし、今回はお二方がやる気だったから譲ったまでだ」
「嬢とかつけて呼んだりしている時点で実は尊敬してないだろ」
嬢というのは敬称ではなかった気がするのだがどうだったか。
「さて、そろそろ出番だぞ、司殿」
「ああ、隊長格の上位個体ね。俺たちが相手する必要あるのか?」
「ないだろうな。だが、それこそ出番がなくなってしまう。分割思考、使えるようになったのだろう? 今こそ憑依一体で真の力を引き出して見せようぞ」
「ま、いいけどな」
リルの言う通り、俺はここしばらくで練習して最低限分割思考を使えるようになった。近接戦闘をしながら魔法を使うとか、魔法を何重にも同時に発動するとかもできるようになっているはずだ。本番の戦闘で使った経験はないので何とも言えないが問題ないだろう。そこにリルのスキルや判断力が加われば、ある程度の強さは発揮できるはずだ。
「《クリスタル・クリエイト:アイサファイヤロングソード》」
ここ最近は使っていなかった氷の剣を取り出す。魔法の練度も上がっているためより強力な武器に仕上がっているはずだ。
(感覚は鈍っていないな?)
「もともと鈍るような感覚は持ち合わせていないよ」
(っふ、そう来たか。まあなんだっていい、全力で行くとしよう)
「もちろんだ」
空を見上げ、腰を下ろす。右手で剣を握り、左手を地面に付ける。
この天界には、魔力が満ちている。
(司水者)
「《フリーズロック》」
足元から氷柱が勢いよく飛び出してきた。その勢いに乗って俺の体は空高く飛ばされる。
見据えた先にいたのは天使の隊長格と思われる上位個体。指揮を執っており、ソル達の攻撃範囲を見切って最適な対応を行っている。天使はほぼ無限に湧き出してくるようだが、恐らくそれを止めるすべはあるはずだ。そうでなければこれは試練とは呼べない。観察した感じだと逃げ回っていたこの上位個体を倒せば止まるのではないかと思えた。
それならば雑魚狩りに専念しているみんなの代わりに俺たちが相手をしてやろう、ということだ。
俺たちが最初に目標に定めたのは他の天使と違って羽根が黒色の天使。
種族:精神生命体・堕天使
名前:ルシファー:固有権能《反転術式:魔術における術式を反転させることが可能》
レベル:93
生命力:19208/19208 攻撃力:31931 防御力:29381 魔力:10028/10028
状態:正常
スキル:魔術・神聖Ⅹ、魔術・闇Ⅹ、高速飛翔Ⅹ、自然治癒Ⅹ、魔力自動回復Ⅹ、物理攻撃耐性Ⅹ、魔法耐性Ⅹ、状態異常耐性Ⅹ、精神攻撃耐性Ⅹ、即死無効
権利:基本的生物権、自己防衛の権利、自己回復の権利、魔術使用の権利
種族名を堕天使、個体名がルシファー。俺でも知っているような有名な名前だった。これがもし地球からの流用だったらあの神を著作権法違反で訴えてやろうか。まあ、ここでは法律もくそもないんだろうけど。
そんな堕天使に向かって一直線に飛んでいく俺たちに気付いたのだろう。堕天使は逃げようとする。
「そうはさせないぞ!」
(司水者)
空中に水が合われる。堕天使の四足を拘束した。そしてだんだんと勢いを失っていた俺の足元には氷が。その氷はやがて広がり、俺と堕天使を覆うように形作られ、空中に半円形のドームを作り出す。
「さて、アイスグラウンドの出来上がり、なんてな」
そういった俺は、剣先を天使に向ける。
「それじゃあ俺のステージ、開幕だ」
夏休みがあと一週間で終わるってマジですか? 私は何も満喫出来て……毎日くだくだしてましたね。それで充分です。
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