聖域
更新が遅れたのは環境が悪い。どうもシファニーです。嘘です、環境のせいなんかではありません。私の怠慢です。でもまさか三日も寝込むとは思いませんでした。
第百四十三部、第五章第四話『聖域』です。どうぞ!
ネルに神に会いに行こうと誘われてから一週間が経った。久しぶりにリリアが帰ってきて、これから出発すると伝えてきた。
この一週間は適当に過ごしたわけではなく、ソルやかなとの模擬戦ばかりしていた。肉体が強化されたことで食事も睡眠も、休憩すらも少なくていい現状ならば一日中暴れていてもそこまで支障はない。そんなわけで一週間のうち八割近くは模擬戦に費やしたんじゃないだろうか。その中で新しい感覚をつかんだりしたが、それはいいだろう。
ソルとかなには大してしたいこともなく、俺も同じくといった感じなので早速出かけることにした。リリアの転移魔法でネルのいる亜人国へと向かった。
(そういえば初めて見るな、亜人国の首都)
(そうだったわね。私も始めてみるけどなんて言うか……辺鄙ね)
(せっかく言わないつもりだったのにやめろよ)
亜人国は見た感じ日本の田舎、って感じだ。偏見にはなってしまうが、あたり一面田んぼと畑なのだから仕方ないだろう。というか、リリアがパンをよくふるまってくれていたので主食は小麦系だと思っていたのだが、ジャポニカ米もあるようだ。前線基地でインディカ米は食べたが久しぶりにジャポニカ米を食べたい、なんて思ったが久しぶりすぎて口に合わなくなっていたらどうしよう。
家は木造建築の者が一般的なようで、中には藁でできた屋根の家もある。雨漏りがすごそうだがいいのだろうか。流石に住まいではなく倉庫的な何かだろうがどちらにしても中が大惨事だろう。
なんてことをリリアにいってみたところ――
(ああ、それなら大丈夫。魔法で雨雲をどかせばいいだけだから)
すごいこと言った。今すごいこと言った。何事もないようにさらっと言ったけど天気をコントロールするとかやばい。でも、魔法の余波だけで雲を吹き飛ばしていたリリアが言うと説得力がある。
しかし道はほとんどが砂利道。しかもそれは整備されているほうのようで、よく見てみれば通路のようなのに道には見えない、なんて場所もある。
そんな街の様子を俺たちは亜人国首都、ネリィシア付近の小高い丘の上から見下ろしていた。そしてすでに、今回俺たちを招いたご本人もいる。
(一週間ぶりですね。よろしくお願いします、司君)
(あ、はい。よろしくお願いします……)
優しい微笑みを向けて挨拶をしてくれたネルに、俺はあいまいに笑って答えるしかなかった。あまり親交はないし、実は話したのもほとんど初めてだ。今まで何度か見てきたし、一方的に話を聞いたりはしたがそれだけ。話し方の特徴的に気性は荒くなさそうだが、ソルとルナの同僚だと思うと怪しい。
(ん? 司今私の悪口言ったでしょ)
(いや、言ってないが?)
ソルがすかさずほぼ無表情で突っ込んできた。あの、ルナもそうだったけどなんで思考を呼んでくるんですか? やめていただきたい。
しかし完全に読めているわけではないらしく、そう? とだけ言ってそれ以上は突っかかってこなかった。どうやらごまかせたらしい。
俺がこっそり安心しているところに、ネルがこの場の者たちに向かっていった。
(では、出発しましょうか)
今回のメンツは俺、かな、リル、リリア、ソル、ネルの六人だ。……果たして六人という表現であっているのかは疑問だったがまあいいだろう。向かい先は世界樹にあるという神殿だそうだ。亜人国近くから世界樹に入り、世界樹の中心に向かってしばらく進むとあるらしい。リリアの住み処からでは少し遠回りになってしまうとのことで亜人国から出発した。
転移魔法ではだめなのだろうか、と聞いてみたところ阻害されることが多いから無理、との返答がネルから帰ってきた。俺はソルに聞いたつもりだったんだが、念話を盗み聞きってどうやってるんだ?
でもどうして? と今度こそソルに尋ねるとソル曰く世界樹の中は精霊が大量に住み着いており、魔力の流れが外とは違う。よっぽどなれたものかそれこそ固有の転移魔法を使えるものでないと転移は難しいということだ。そしてネルやソルが自分だけで使う分には問題ないらしいが、この人数いっぺんにとなると制御が難しくなってしまうらしく、だめらしい。
そこで俺はオレアスから転移で帰ろうとして無理だったことを思い出す。その精霊とやらが原因だというのなら納得だ。そしてもう一つあった。リルと初めて会った時、リルの転移魔法で地上に出ようとして空中に投げ出されたのもそれのせいかと思い至る。制御が完璧ではなかったということなのだろう。
そんな感じで雑談しながら険しい森の中を進むこと約三十分。すでに五百キロ程度歩いているが、まだだろうか。なんて考えていたころ、魔力探知に反応があった。しかしそれは魔獣が使うような魔力ではなく、どちらかというとアリシア、勇者が使うような神聖な魔力――
それからさらに少し進んだところに、それはあった。
一言でいえば廃退した教会。長らく手入れをされていないのだろう。全体的に植物に埋もれており、壁も崩れかかっている。石レンガ造りの、ヨーロッパにありそうな作りの神殿でそれなりの敷地がある。廃墟にしか見えないが、どうやらここが目的地らしい。ネルがその場で立ち止まり、振り返っていった。
(ようこそ、天界へと続く神殿。創造神ソトを奉る聖域へ)
そういえば総合pvが46000を超えていました。ありがとうございます!
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