提案
なぜだかわからないんですが今日のpvが1000を超えていました。本当になんででしょう。
第百四十一部、第五章第二話『提案』です。どうぞ!
「では、早速ですが私から皆さんにご提案です。神に、会ってみる気はありませんか?」
ネルがそんな言葉を発した。次の瞬間には、辺りは凍り付いたかのような静寂に包まれた。みな一様に驚いて、言葉も出ないような。そんな中で、わかっていたかのように目を伏せるソルだけがむしろ異質だった。
やっとのことで口を開いたのはリリアだった。
「神、というのは創造神様のこと、ですか? 会いに行く、と言いましても可能なのですか?」
そんなリリアの当然の疑問に、ネルは表情を動かさずに答える。
「当然です。私だって不可能なことをあたかも可能かのように語る、なんてことはしません。実際、私たちは生みの親である創造神と会うための方法を知っています」
「私たち、と申しますと……まさかソル様も?」
「じゃあ、ルナもか?」
そこで俺も口をはさんだ。ネルは小さくうなづいた。
「原初の七魔獣ならみな。と言っても、始祖竜が死んだ今知りえるのは私とソル、ルナの三人だけ。そして、より強きものを求めるという本能のままに生き続けた始祖竜がいなくなった今。一度死んだことで忘れた神に出会う方法を探し求めていた彼がいなくなった今こそ、私たちが神に拝謁する時なのです」
「と、言いますと?」
ネルの言葉に、リリアが返す。ソルは、相変わらず静かに目を伏せている。
「始祖竜が暴走し始めて、実に千年もの時が過ぎ去りました。その間に世界は様々な方向に変化し、生き物たちは発展するか、もしくは廃れていきました。そんな現状の報告をしなければいけないのが一つ。もう一つは生まれてしまった悪魔、それと邪神について神に問わねばならない、ということ。彼らはそもそもこの世界に存在する生物ではないはず。もし神に何らかの意図があり生まれたものならばそれで良し。もしそうでないならば、勅命を受けて討伐せん、というのが私の考えです」
真剣な表情でネルが語り終えた後、ソルが口を開いた。
「それについては賛成よ。私が眠っている間に色々なことが変わっているようだし、一度会うのも悪くない。世界の選択の分かれ目が、今なのかもしれないと私もそう思うわ」
「ありがとう、ソル。では、協力してくれるということで?」
「もちろんついていくわ。ただ、この子たちを巻き込むのは違うんじゃない?」
ソルは閉じていた瞳を開き、責めるような、鋭い眼差しでネルを見た。
ソルの言うこの子達、というのは俺とリリア、かな、あとはリルのことだろうか。確かにソルの言う通り、ネルの考えを実行するだけならば俺たちが付き添う必要はない。それ以上に、俺たちのような一般生物が神と会うなどと許されることなのだろうか。
そんな俺の疑問に答えるようにネルが言う。
「神への信仰を廃れさせないためにも、何者かが実際に神の力を感じるのは重要なことです。それに、原初の七魔獣が減り、神へ拝見できる者が少なくなったということは天界との橋渡し役が減るということ。私が信頼するリリア。そのリリアが信頼し、あなたが認めたこの子達ならば任せられると思わないですね?」
「……それは、どうでしょうね。あなたの我儘のように聞こえるけれど」
「もちろんそういう面もあります。けれど、確かに必要なことですよ」
ネルの言葉は分からないでもなかった。これは俺の理解力がないのか、それともネルの言っていることがやはりおかしいのか。それは分からないが説得力は感じた。確かに必要なことなのでは? とそう思ってしまったのだ。
「そう……。あなたがそこまで言うのなら、あなたの案には賛成よ。で? あなたたちはどう思うの?」
ソルはこちらを振り返るとそんな問いかけをしてきた。どうやら俺たちにも意見は言わせてもらえるらしい。さてどうしたものか、考えようとして、リリアが即答した。
「私は行きます。ネル様がその資格があるとお認めになってくれるのであれば、是非とも」
「では、リリアは決まりね。あとの三人はどうしますか?」
なんと、と少し驚いたが考えてみれば当然だ。ネルの腹心ともいえるらしいリリアが頼りにされて断るはずないし、確かにリリアには神に合うだけの資格があると思う。強いし、指揮もとれる。長い時を生きているというし。何よりもネルが信頼しているようだから。そういう観点では、俺たちにも資格があるといってもいいのだろうか。
実は言うと神には会ってみたいと思っている。なんだか、俺がこの世界に来たのはその神のやらのせいかもしれないとの話だし、本物の神様に会ってみたいなんて欲求は生きていれば一度は浮かぶものだろう。ネルやソルがいるのなら厄介ごとに巻き込まれることはそうそうないだろうし、断る理由は俺にはない。
ただ――
(――って感じだ。どうする? かな)
(ん~、わかんない)
問題はかなだ。かな自身、恐らく神が云々なんて話を聞いても何もわからないのだと思う。だからこそ、判断があやふやになりかねない。好きにしていい、と言ったら俺についてきそうだし、判断を任せるのは難しい気もする。
そんな相談を、リルにしてみる。
(まあ、かな嬢は常に司殿と一緒に、という信念だろうし。司殿が神と会いたいと願うのならばよいであろう。ちなみに我は賛成だ。是非とも会ってみたいな)
とのことだった。まあ、そういうことならば――
(俺は行くけど、かなはついてきたいか?)
(ん、ついていきたい)
眠そうに眼をこすりながら、かなはそんな内容の念話を飛ばしてきた。じゃあ、決まりだな。
「俺たちもついていくよ、ネル」
この章は神との対話? 続きをお楽しみに。
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