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リルの変化

 どうもシファニーです。やっぱり不定期更新なのは親が悪い、というわけで言い訳を並べつつ、新たにブックマーク登録をしてくれた方々に感謝を。ここ最近は総合pvもどんどん増えていて、本当に嬉しいです。ありがとうございます!

 第百二十九部、第四章第二十九話『リルの変化』です。どうぞ!

「伝達! 右翼に突如勇者三名が確認されたし! 応援要求とのこと」

「なに?」


 開戦から八日。続々集まってきた情報をリリア嬢とともに整理していたところに定期報告以外の報告が届いた。大変な慌てぶりでテントへと入ってきた亜人が放った言葉は、テント内にいた諜報員や参謀たちに動揺を走らせた。


 我はまず今ある情報を整理すべく報告をした亜人に問うた。


「その情報は確かか? 現在の右翼の戦況は?」

「情報は確たるものにございます。戦況は押され気味で、残っていた戦力の一割がすでに死亡。勇者が現れたのは約一時間前ですが、このままでは押し返されるのも時間の問題かと」

「情報伝達に一時間、か。なるほど、すぐにこちらで手を打つ。リリア嬢、ここは任せていいか?」


 我と亜人との会話を見守っていたリリア嬢に問うと、リリア嬢は目を閉じて考え込んだ。しばらく間をおいてから、静かに口を開いた。


「これが誘導って可能性も捨てきれないし、リルさんに出てもらうのも正直申し訳ない。ただ、元々数になかったあなたがここで対処してくれるのなら、こちらは余裕をもってほかの場面の対処を行える。もしよかったら、頼んでもいいかしら」


 あくまで協力の要求ということらしい。まあ、我を信用しすぎることも頼りすぎることもリリア嬢の崩壊を招きかねないのは事実だろう。むしろ、これくらい賢明な指揮官であるリリア嬢に賞賛を送るべきだ。

 そして、リリア嬢の頼みに対する答えは我が主の御心のままに、決まっている。


「任せてもらおうか。人間の勇者程度、片手間に片づけてやろう」

「ええ、頼りにしているわ」


 真面目な表情を緩めたリリア嬢は、笑顔でほほ笑んだ。

 相も変わらず笑顔の似合う美女だ。これは、司殿が心酔するのも頷ける。色々な意味で、ここらで手柄を上げておかねばな。


「では行ってこよう。すぐに戻る」

「無理はしないでね。あなたを失って司君が悲しむのは、あなたの本望でもないでしょう?」

「もちろんだ。では」 


 そう言ってテントを一歩出れば、日の下で今か今かと出番を待ち続けている兵士や救護兵が並んでいる。……ここにいるやつらは皆決死の覚悟で戦争に挑んでいるのだろうな。そう考えると、駒としか扱っていない自分に少しばかり疑問を覚える。少しばかり、部下たちへの配慮をした方がいいのだろうか。


 狼の配下たちは皆我の魔力から生まれた、それこそ我が命を与えた存在達だった。だからこそ、いくら死のうと、殺されようと悲しむことはなかったし死にに行けという命令もしていたし、従わせていた。

 少し前、オレアスの都市オリィでデモンパレードの対処をするときも、人間の兵士たちを駒のように扱ったように思う。司殿も一応賛成していたが、それは恐らく冷徹者の影響だ。きっと、心のどこかでは擦り切れていたのだろう。考えてみれば、いくら死ぬ覚悟で挑んでるとは言えど死ぬことはその生物の生命の終わりを意味する。

 我自身は一度死んで生き返った。知り合いには、殺しても死なない奴もいた。かなり、死に対する認識が甘かったのかもしれないな、なんて思う。


 司殿が死んだとき。生き返らせる方法があることは知っていた。何ならアリシア姫に勝てるわけもなしと思っていたので、死ぬこともまた、計算のうちのつもりだった。それなのに、どうしてだろう。生き返らなかったら、このまま死んでしまったら。

 そんなことが脳裏をよぎり、我を心配させていた。今までならば、ありえない感情だっただろう。司殿が、主だったからだろうか。あいつ(・・・)が死んだときでさえ、一ミリも感情が揺れなかったというのに。自分でも不思議だったが、きっと必然だったのだ。

 言葉の通り一つになって共に戦い、意見を交わし、命を預けた、そんな仲。実力は確かになかったかもしれないが、信用を置ける、仲間、という存在に司殿はなっていた。


 自嘲気味に笑い、亜人たちから目をそらす。早く、勇者とやらを懲らしめてやろう。


 魔術・空間を発動し、右翼の戦場となっている座標の近くに跳ぶ。小高い岩の上に着いたらしく、あたりを見渡せた。

 すぐ右手に世界樹の森を望めるこの戦場にも、数々の屍が横たわっている。人間のものも、亜人のものも。少し昔までの我であったら、この光景を見ても何も思わなかったのだろう。しかし今では、少しだけ怒っている、とでもいうのだろうか。リリア嬢の大切な部下をよくも手にかけてくれたな、という復讐心に先走らされそうになる。

 やはりまた、笑みが零れる。自身の変化を楽しむのもまた、生の面白さよな。


 改めて戦場を見据えれば、多くの兵士たちがぶつかり合っている狭間のうちの三か所に、明らかに亜人たちが押されている場所があった。遠くから見た限りだと、確かに亜人の一等兵たちでは敵わないような強さを持つ個体たちだった。

 それこそ、勇者と呼ばれる存在なのだと言われて納得できるほどには強者のようだ。が、我にはか敵わないだろう。


 目利きには自信がある。と言っても、司殿やかな嬢に負けたあたりから少しばかり鈍りを感じたが。まあ、こんなところで死ぬような我でもなかろう。戦場に向けて、一つの宣戦布告の意味合いを込めて言葉を放つ。


「この戦場の真の強者が誰なのか、知らしめてやろうじゃないか」

 さあ、そろそろ自分の文章力のなさに気づき始めてきた私ですが(遅い)、今更この形式をやめるつもりはございません。多くの部分を皆様の想像にお任せすることになりますが、ご了承ください。


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