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昔話

 明日遂に部活をやめます。これで執筆時間が増えますね。私はどうしてあんな無駄な時間を過ごしてしまったのだろうか。

 第百二十三部、第四章第二十三話『昔話』です。どうぞ!

(え、これ司君が作ったの? やるわね)

(ありがとよ……もっと作ってくるべきだったかな) 

 

 バスケットの中を覗いてみれば、食べ始めて十分しか経っていないというのに空だ。かなとソルの食欲を舐めていた。ルナも大食いだってけど、強い魔獣はよく食べるのか?


 ソルを引き連れて草原まで来た俺たちは、早速弁当を広げて食べていた。陽気が心地よく、草がなびく程度のそよ風が頬を撫でる。出来ればもう少し暖かい風の方が心地よかったけれど、季節が季節なので仕方がない。また、春にでも来るか。


(そう言えば司君、君の自力って実際どれくらいなの? かなちゃんもそうなんだけど、二人とも強いっぽいけどどれくらいかわからなのよね。最初にあった時に調べた感じじゃあのリルっていう影狼が一番強そうだったけど)

(どれくらい、か。そうだな、基準で言うと、確かにリルより俺は弱いと思う。あいつ、絶対に何か隠してるし、影狼特有の能力を戦闘で使っているところをほとんど見てない。ただ、かなとリルの力量差はないと思ってもいいと思うぞ。かなは精霊との適性が高いし、詠唱魔法も使える。一対一で戦ったら、それこそ場合によってはどっちが勝ってもおかしくないだろうな)


 すでに俺の胡坐の上で昼寝にいそしんでいるかなの頭を軽くなでながら、ソルに念話を飛ばす。

 かなの頭を撫でてやれば、心地よさそうに微笑んで喉を鳴らした。笑みを浮かべた寝顔が本当に可愛らしくて、俺も思わず頬が緩んだ。


(へぇ、詠唱魔法ね。魔術・精霊のってこと? それは確かに強力そうね。そんな可愛らしい女の子にそれだけの力あるだなんて)

(鏡見てみろ)

(え? 顔に何かついてた?)

(そういうことじゃねぇ……)


 思わず突っ込みを入れたが、今のってソルを可愛いって言ったようなもんだよな。……追及されても黙っていよう。


(それはそうと、ソルはこれからどうするんだ? 最近目覚めたっていうけど、何かやりたいことはあるのか?)

(そうね、今のうちは君の料理を食べていたいわ。あんまり、美味しいものは食べたことがなかったの)


 ……よくもまあ、こっ恥ずかしいことを堂々と。


(そ、そうか……。じゃ、じゃあ逆にどうして寝てたんだ? 何か理由があるのか?)

(ん? ああ、その話? 長くなるけどいいの?)

(ああ、聞いてみたい)

(そうね、じゃあ、さっき言った私やルナよりも強いやつについて、まずは話そうかしら)


 ソルは空を見上げ、遠い目をしながら語り始めた。いつの間にか、頬を撫でる秋風はやんでいた。空は、晴れ渡っていた。


(それはもう何千年も前の話、この世界が生まれて、最初の七体の魔獣が生まれた頃のお話――)


 そうしてソルによって紡がれたその話は、壮大で、俺ではとてもじゃないが付いていけないような内容だった。始祖竜が何だとか以前に、数日でこの森を横断したこととかも驚きだった。さすがは原初の七魔獣たち、と言ったところだろうか。そして、気になるラストだが。


(私たちは一旦分かれて、それぞれ魔力を抑えたり放ったりを繰り返して始祖竜を混乱させて、時間を稼いだうえでネルと合流した。そこに初代エルフの女王のクイーンエルフがいたのは驚きだったけど、まあ問題はなかった。事前に決めていた通り私の金陽とルナの銀月で時間を稼いで、世界樹から追い出した後で、世界樹をぶっ倒しちゃったり大量殺戮しちゃったりしたけど、なんとか始祖竜を眠りにつかせたわけ。その時の反動で私も眠りについたんだけど)

(最後適当になったな……)

(当時の記憶がしっかりとは残っていないのよ。大量殺戮したって事実は分かるけど、自分がどんな状態だったのかが思い出せないの。多分、強い感情に心を支配されていたんだと思う。だから、私の口から言えるのはここまで。当時のことが詳しく知りたいのならルナかネルにでも聞くと良いわ)

(まあ、それでもいいけど……大変だったんだな)

(別に、生き残るためだもの、大変も何もないわよ)


 そう言ってソルはため息を漏らすとその場に立ち上がった。腕を大きく上にあげ、声を漏らしながら伸びをする。腕を大きく開きながら下ろした後は、服に着いた砂を手で払った。


(さて、長話はこれくらいにして帰りましょう。今日は誘ってくれてありがとね)

(いや、別にいいさ。俺も、友達は多いほうがいいからな)

(……私相手に友達って、あなた、ずいぶん傲慢ね)

(そ、それもそうだな……)


 確かに相手の方が明らかに位が上なのに友達は出しゃばりすぎだよな……。

 なんて考えていたらソルがクスリと笑った。


(冗談よ、司。あなたがそういうならあばたはもう私の友達。これからもよろしくね、司)


 にこりと微笑んだソルが手を差し出してきた。俺は一瞬呆けた後、呆れから出たため息を吐きだしつつ、差し出された手を握った。


(ああ、よろしくな)

 明かされる過去と、わからない過去が交差して、今物語が紡がれる――。というわけでどうもシファニーです。これからもこの作品をよろしくお願いします!

 

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