閑話 主様
本日は趣旨趣向を変えて閑話です。いえ、決して新たなストーリーをかけなくて書き溜めておいた裏話を引きずり出したわけではありません。ありませんとも。
第百七部、第四章第七話『閑話 主様』です。どうぞ!
「なあ、今日は俺の番じゃなかったか?」
「違うよ。今日は火曜日。私の番だから」
「そうだったな。じゃあ、早くしろよ」
「うん」
自分の前にご飯を差し出す二人の兄弟は、いつも仲良しだった。
「お前は可愛いな。大きくなれよ」
「たくさん食べてね」
優しい言葉をかけてくれた二人の臭いを嗅ぐたび、自然と気分が上がっていた。ご飯がもらえるのもそうだったけど、それ以上に二人に会える日々が楽しくて。
「じゃあ、私たちは今日は帰るわね」
「またな」
また、二人は帰ってしまう。でも、また二人は帰ってきてくれるから。自分は見送るだけでいい。また、その顔が見れるはずだから。
「にゃ~」
自分は、お礼を告げた。
とある日の昼下がり。陽気が気持ちいい。神社の軒下で日向ぼっこ。気持ちいい。お昼寝して目が覚めたらご飯が置いてあった。見渡してみたけど誰もいない。でも、二人の臭いがした。今日もありがとう。
「にゃ~」
今日は女の子だけが来た。
「お兄ちゃん今日から別の学校に行くからあんまり来れないって。高校生って大変だね」
「にゃ~?」
どうやら男の子はしばらく来れないらしい。それから数か月もの間、女の子だけがご飯を持ってきてくれた。ちょっと、寂しかった。
今日はお散歩日和。女の子は来てたけど、お昼から神社を出てみる。久しぶりに嗅ぐ匂いがあった。
男の子だ。
「よ、久しぶりだな。ご飯はもらってるか?」
「にゃ~」
自分を助けてくれた、大恩人だ。女の子に知らせよう。神社に戻る。あ、ご飯だ。近寄って、食べる。おいしい。
「げ」
「げ、とはなんだ、げ、とは。何やってるのよ、本当に」
二人はまだまだ仲がよさそうだった。
「帰る」
「おまちっ!」
抱き合っている。やっぱり仲がいい。よかった。今日もまた幸せだ。二人にあえて。眠いな。お休み。
眩しい。あれ? ここどこ? 目を開いてみれば、森の中。草がいっぱい生えている。あれ? 手と足が、変?
みてみれば、人間みたいになっていた。触ってみて、顔も変わっていた。でも、耳と尻尾がある。夢? 知ってる匂いがした、男の子だった。
走ってみると、結構走れた。悪くない。
匂いが近づいて、飛び出してみると男の子だった。
「にゃ~」
男の子は不思議そうな顔をした。多分、自分が人間みたいになったからだ。
「これ、持てるか?」
「にゃ?」
何か言っているけれど、わからない。でも、何かを差し出された。貰っていいのかな?握ったらすぐ、消えちゃった。なんだったんだろう。
「どうだ?」
体の中がほわほわした。フワフワして、びたーっ、ってなって。男の子と繋がった気がした。ううん、男の子じゃなくて、主様。命の恩人で、ご飯をくれて、名前を付けてくれた。ご主人様。
(主、様?)
男の子と繋がれている気がした。多分、間違ってない。
(おう、主様の司だ。よろしくな、かな)
(かなっ! 私の名前!)
(お、覚えてたか)
かな、それが自分の名前。主様がくれた、大切な名前。ずっと大切にしたい、想い。ご飯をくれたお礼が、出来ると良いな。
かな、頑張る!
さて、どうでしたか? これが好評なら別の閑話も! と言っても好評かどうか判断するすべはないのですが。暇さえあればキャラの裏話でも書いてみようと思います。どうもシファニーです。
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